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「ぼろぼろ」のマンション、20年後には…市が管理に「お墨つき」

執筆者の写真: 快適マンションパートナーズ 石田快適マンションパートナーズ 石田


 2024年6月22日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


「5月下旬、神奈川県平塚市。

 JR平塚駅からほど近い喫茶店に、分譲マンション「オクトピア明石町」管理組合の役員たちが集まった。

 「今日は、大きな議題はないのですが」

 管理組合は、東京のマンション管理のコンサルタント会社と顧問契約を結ぶ。担当のマンション管理士、中文太(あやた)さん(51)が進行を務め、理事会が始まった。

 「西側の隣地で工事が始まりました」「エレベーターの回路に不具合があり、部品を交換するので、少しだけ止まる日があります」

 中さんが、一つずつ報告し、説明する。

 1983年完成のオクトピア明石町は、地上9階建て、25戸。平塚駅から歩いて10分ほどの立地だが、築40年が経ち、建物の老朽化も、住民の高齢化も進んでいる。

 それでも、この日の理事会で大きな課題が持ち上がることはなく、和やかな雰囲気のままで終わった。

 2023年6月、このマンションは、平塚市で初めて管理計画の「認定」を受けた。マンション管理適正化法に基づき、一定の基準を満たしたマンションを、適切な管理がされていると自治体が認めるもので、マンションが約1万6千戸(2018年)あるとされる平塚市で認定を受けたのは、まだここだけだ。

 認定を受けることで、

 共用部分のリフォームなどで住宅金融支援機構の融資を受ける際に、金利が優遇される▽長寿命化につながる大規模修繕工事を実施した際に固定資産税が減額される、などのメリットもある。国土交通省は、市場で高く評価されることも期待できる、としている。

 認定は中さん側からの提案で、申請から数日で手続きが完了した。「個人的には、まだ具体的なメリットは感じませんが、付加価値がついた、ということでしょうか」。管理組合の理事長を務める佐藤光男さん(72)はそう話す。


 管理が適切だと市に認められたマンション。しかし、佐藤さんによると、自身が入居した2000年ごろは「ぼろぼろだった」という。

 もともとの管理会社が倒産して交代したこともあり、管理費の滞納があっても督促されずに放置され、未収金が積み上がっていた。

 収入が足りないため、共用部の鉄の部分はさびが目立ち、塗装のやり直しもせず放置されていた。漏水などもあって壁紙がはがれた部屋もあったが、防水や外壁の工事もせず、排水管の掃除もされていなかったという。

 「管理会社からは特に対策の提案もなかった。住民たちもこんなものだと思っていた」と佐藤さんは振り返る。

 2003年、ついに、管理会社が解約を通知してきた。問題が多すぎ、規定の委託料では管理を続けられない、という理由だった。途方にくれた管理組合は、エレベーターの管理会社を通して、コンサルタント会社「マンション管理総研」(当時は辰巳商事、東京都大田区)に相談した。


 同社代表の瀬下義浩さん(62)は、マンションの問題に詳しい弁護士事務所と新たに顧問契約を結ぶことをすすめ、まずは滞納の解消をめざした。当時、年間の管理費会計は収入約450万円のところ、滞納金は修繕積立金もあわせて500万円を超えていた。ときには法的措置を含めて滞納者を説得し、メンテナンス業者の見直しによる経費削減も進め、少しずつ会計を正常化した。

 滞納への対応が進むのにあわせ、排水管の清掃や、共用部の鉄部塗装、屋上の防水工事などを一つずつ実施。外壁の改修は、マンションの会計状況を見た金融機関に、費用の借り入れを一度は断られたが、滞納の解消に向けた取り組みを説明して理解を得たという。

 また、清掃員がエントランス周辺をモップがけするのみだった掃除を、住民の美意識を高める狙いでほかの共用部にも広げ、高圧洗浄機による定期的な掃除も導入した。


 作られていなかった長期修繕計画は2013年に作成。その後も見直しを重ねている。もともとなかったオートロックや、宅配ボックスも追加で設置した。


 同社への顧問料は、会計業務の委託費もあわせて、税込み月7万7千円だ。

 「こうなっていなければ、もうここを出ていたかもしれない。『マンションは管理を買え』というのは本当ですね」。佐藤さんはそう話した。

 管理計画認定制度は、2022年4月に始まった。総会の開催状況、管理規約の内容、長期修繕計画や修繕積立金の状況などが、国が定めた主な認定基準だ。

 制度導入の背景には、全国で進むマンションの老朽化と、管理不全への懸念がある。

 国交省によると、2022年末時点で分譲マンションは全国に約694万戸。同時点で築40年以上のマンションは約126万戸にのぼり、2032年末には約261万戸、2042年末には約445万戸と急増していく見込みだ。

 築年数が経つほど、管理や建物をめぐるさまざまな問題も生じがちになる。

 2018年の同省の調査では、築年数が古いマンションほど、漏水や雨漏り、外壁などの剝落(はくらく)、外壁や共用廊下のひび割れなどの問題や不具合が発生している傾向があった。専有部分の修繕や共用廊下などへの私物の放置といった問題をめぐってトラブルが発生しているという回答も多くなっていた。

 また、管理費や修繕積立金の3カ月以上の滞納が「ある」と答えた管理組合は全体で約25%だったが、完成が「1969年以前」や「1970~1974年」のマンションでは4割を超えていた。一方、25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金を設定していると答えた管理組合は全体でも約54%にとどまったが、古いマンションでは2~3割と、さらに低かった。

 マンション住民の「永住志向」は約63%に達し、特に年代が高いほど高くなる。しかし、管理不全が放置されたり、積立金不足で適切な修繕ができなくなったりすれば、住み続けるのは難しい。このため、自治体が管理に「お墨付き」を与える仕組みを導入することで、住民の管理への意識を高め、自治体も実態を把握しやすくなることが期待されている。

 ただ、認定を受けたマンションは6月21日時点で約900件にとどまる。東京都や神奈川県などエリアも一部に偏っている。国交省の自治体へのアンケートでは、認定制度が「あまり・まったく認知されていない」とする回答が7割を超え、認定を得ることのメリットが少ないという指摘もある。

 国交省は、制度の周知を進めるとともに、今後さらなるメリットについても検討を進める。あわせて、認定基準についてもマンションの防災対策なども新たに盛り込むかどうか検討していく考えだ。」


 滞納金も多く管理不全に陥っていたマンションが管理士の介入によって見事に立ち直った事例です。まずは、管理組合の会計を立て直すことが出来れば、適切な工事の実施によってマンションは良くなっていきます。この記事には参考になる点が多々あります。


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