• 快適マンションパートナーズ 石田

「まるで廃墟」な築50年マンションに住み続ける「ヤバすぎる住人たち」

更新日:10月27日



 2022年6月13日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。


「人生において一番大きい買い物と言われる住宅。戸建てと異なり「分譲マンションは面倒なご近所づきあいから解放されている」と思われがちですが、油断は禁物です。

 分譲マンションを区分所有している以上、実際に居住しているかどうかにかかわらず管理組合のメンバーとなり、コミュニティの一員として法的な義務が発生してしまいます。それゆえに面倒ごとに巻き込まれ、場合によっては「本業の仕事よりもマンションの理事会の方が気を遣う…」なんて事態にもなりうるのです。

 そのなかでも、時折「ヤバい管理組合」に出会うことがあります。一部の理事が管理費を使い込んでいたり管理会社の言いなりで機能不全に陥っていたり、“症例”は千差万別。ここからは、マンション管理士である筆者が県主催の無料相談会などで実際に相談を受けたマンションでのトラブル事例を取り上げつつ、対策などを考えていきましょう。


築50年「ゴーストマンション」の恐怖

「マンション内で管理組合をつくりたいのですが、どうすればいいかわかりません。やり方を教えていただけないでしょうか?」

 相談会に持ち込まれる問題の大半は、いわゆる「住人トラブル」と呼ばれる類のもの。その中で、三浦雛子さん(63歳・仮名、以下同)の相談は突出して印象的でした。三浦さんが住んでいるのは築約50年という超高齢マンション。にもかかわらず「管理組合がない」という時点で、かなりヤバそうな雰囲気が感じられます。

「これまでずっと、管理組合が存在しないのが当たり前でした。でもどこのマンションにもあるみたいだし、設備が壊れても修理できなくて困っていたので、うちでもつくりたいと思って」という一言は、マンション管理に携わる人間としてかなり新鮮だったことを覚えています。

 とりあえずその場では管理組合の設立総会を開催するまでの手順と、事前に必要な“根回し”について説明しました。同時に私が住むマンションの管理規約を見せながら、標準的な規約の作り方もレクチャー。さらにマンションの自主管理がいかに難しいかもお伝えしました。

 その場では納得した様子で帰っていった三浦さんでしたが、後日相談会の主催者を通して、「管理組合の設立をサポートしてほしい」という依頼がありました。住人が集まって話し合いを持つので、その場に立ち会ってほしいとのことです。

 三浦さんが住むマンションに赴いたときの衝撃は今でも忘れられません。駅からほど近く周辺環境も素晴らしい最高のロケーションでしたが、建物を見て愕然。約50年もの間なんの管理もメンテナンスも施されていない、廃墟と見紛うばかりの「機能不全ゴーストマンション」だったのです。エレベーターすら壊れていて、5階の会場まで階段で登りながら不安が募っていきます。

 会場に集まっていたのは10人ほどでした。ただしそのうち約半数は物件のみ所有している非居住者とのこと。そのような場で、三浦さんたちを中心に管理組合設立に向けた話し合いがスタートしたのです。

 このように最初の一歩を踏み出した三浦さん。しかしここまで特徴的なマンションに長年住み続けているだけあって、住人は個性的な人ばかりで会議はなかなか前に進みません。老朽化した設備を放置しておくと怪我につながる危険性もあり、“タイムリミット”は少しずつ近づいていきます。三浦さんが住むマンションは「廃墟」と見紛うばかりのゴーストマンションで設備もかなり老朽化しています。修繕のタイムリミットが迫るなか、筆者立ち合いの下でほかの区分所有者との話し合いがスタートしました。


「会議は踊る、されど進まず」

 最初は三浦さんをはじめ組合設立に前向きな住人たちが、私が相談会で説明した通り管理規約のつくり方について説明していました。しかし途中から、次第に一部の出席者が勝手に話し始めます。

「理事なんて面倒な仕事、絶対にやらないからな」

「管理費を払わなきゃいけないなら、組合には入らない」

「俺が一番の古株なんだから、意見が尊重されてしかるべきだ!」

などなど、いちいち話を中断して自己中心的な主張を繰り返すばかり。マンションの自主管理どころか、理性的な話し合いすらままならない状態でした。これまで管理組合がなかった理由も、なんとなく察せられる気がします。

 まさに「会議は踊る、されど進まず」状態で予定時間を大幅に過ぎて予定が押していたため、「話し合いが進展したら、次回また呼んでください」と言い残して退出しました。


 「この先も引き受けたら、絶対ハードな仕事になるだろうな…」と予想していた反面、あまりにも珍しいゴーストマンションと個性的な住人を目の当たりにして、この先どうなるのか気になっている自分がいたのも事実です。しかしその後、三浦さんから再度連絡が来ることはありませんでした。

 このマンションは管理費や修繕積立金の残高も皆無で、エレベーターを修理しようにも工事代金すら支払えない状態でした。住人の中には80歳を超えた高齢者も多く、老朽化した設備だと怪我するリスクもあり、最悪の場合は死に至る可能性も考えられるでしょう。

 立地は最高なので更地にして売却するのがベストとも思うのですが、高齢の住人が多いとそれも難しいです。その後どうなったのかはわからないものの、かなり「手詰まり感」が強いマンションでした。


一部の理事がマンションを私物化

「管理組合の一部の役員が暴走して、マンションを完全に私物化しています。彼らを止める方法はないのでしょうか?」

 困りに困って相談会にやってきた茂木俊明さん(68歳)は、会社経営者の男性でした。現在のマンションは築35年、20戸ほどしかない小規模なもので、長年住んでいる人が多く、住人同士もほとんどが顔見知りです。32年にわたって住んでいる茂木さんは管理組合の理事を務めていますが、最近では理事長を含む一部役員の行いに閉口していると話します。

「住人全体の利益を考えて行動すべき管理組合が、一部の役員によって私物化されてしまったんです。あまりに露骨な“利益誘導”で、あきれてものも言えません」

 茂木さんが住んでいるマンションは、管理業務の一部を業者に委託しているものの「自主管理」の趣が強いところでした。住み慣れた住人が多く、10年以上も理事会のメンバーをやってくれている人もいます。もちろん大半は善意ゆえでしょうが、中には良からぬことを企んでいる理事もいたようでした。

「建設会社を経営している理事の一人が、マンションの大規模修繕工事を自分の会社に発注していました。本人は『しっかりと費用を比較した結果だ』と話していましたが、見積もりを取ったのかも怪しいですし、そもそも利益誘導じゃないですか? ほかにも委託している管理会社を懇意の企業と交代しようとする理事もいて、組合はもう滅茶苦茶です」

 だが、彼らの行いは組合内部にとどまりません。

「駐車場を居住していない人に貸し出したり、出入り禁止と決まっていたはずの屋上に自分たちだけ上がってバーベキューを始めたり、やりたい放題でひどいものです。ここを終の棲家と思っている高齢の住人も多いのに、このままだとマンション自体が“崩壊”してしまいますよ」

 そう感じた茂木さんは、筆者が参加する相談会に足を運んだのでした。

 過去には「マンションの理事会決議によって理事(長)を解任することは可能」という判決が下った裁判例もあります(その後、令和3年に改正されたマンション標準管理規約にも盛り込まれました)。

もし管理規約にその旨が記載されていなければ、まず茂木さんたち「反理事長派」が結束して規約改正を目指すべきでしょう。そのうえで理事会にて発議し可決できれば、理事も理事長も解任可能です。ただし管理規約を改正する際には、後々一部の人に悪用されないように徹底した慎重さが求められます。場合によっては、プロの手を借りることも必要でしょう。

 ほかの会議と同じく、マンションの理事会でも声が大きく厚かましい人の意見が通りやすい傾向にあります。その中で茂木さんのような「正論」を貫く愚直な人は、ほかのメンバーから疎んじられるケースも多いでしょう。

 話を聞いていて、建設会社出身の作家・鬼島紘一氏の『妻恋坂マンション』(徳間文庫)を思い出しました。こちらは小説ということになっていますが、著者自身の実体験に基づいた「ノンフィクション」と言えそうなほどリアルな物語です。大手マンション管理会社と古参理事が結託し、無関心な住人がプールしていた膨大な管理費と修繕積立金が流用されていきます。そのことに気づき憤慨した主人公が、孤立無援な状態から決起して、大きな不正を暴いていくというストーリー。まさに、今回の茂木さんと重なる部分も多く、立ち去る背中に思わずエールを送ってしまいました。


ありえない管理会社

「うちのマンションで不正が行われているんです! 何とかして止めさせる方法はないのでしょうか?」

 憤慨しながら相談会にやってきたのは、最近マンションの理事に就任したという広瀬真知子さん(63歳)。委託している管理会社が、管理費用を勝手に使い込んでいると言います。懸案のマンションは築30年ほど、20戸もない小規模なものでした。

 中小の分譲会社が販売していた物件で、その系列の管理会社に管理を委託しているとのこと。これまで特に大きなトラブルが起こることもなく、すべて「管理会社任せ」で理事会も実質的には機能していなかったそうです。

 広瀬さんが怒りを爆発させた発端は、直前の理事会で管理会社が配布した管理組合の予算に関する書類でした。ほかの理事たちはパッと目を通しただけですぐに承認してしまいましたが、過去に経理の仕事をしていた広瀬さんは違和感を覚えたそうです。

「渡されたバランスシートと収支内訳書(キャッシュフロー)の内容が、微妙に一致していないんです! あるはずの積立金がどうしても見つかりませんでした」

 不思議に思った広瀬さんはその場で質問しましたが、管理会社はのらりくらりと回答をかわすばかりで、確たる答えは出てきませんでした。不自然に思った広瀬さんが終わった後にほかの理事たちに聞いてみたところ、薄々グレーであることは周知の事実だったようです。

「管理会社が怪しいことは、ほかの理事たちも気づいていました。自分たちが支払っている管理費が不正に使い込まれているかもしれないのに、億劫がってここまで放置していたなんて信じられません。

しかしもっと理解できないのは、理事会として追及しようとしたら止められたことです。『事を荒立てたくないから、このままでもいいんじゃないか?』『そこまで大きな額でもなさそうだし、少し多めに支払っていると思えば…』などと、暗に目をつぶるように言われました」

 けれども正義感に駆られた広瀬さんは、一人で管理会社を追及し始めたそうです。理事会の場で収納代行機関の残高証明の提出を求めたり、毎月の管理費の使途内訳について質問したり、管理会社に対してアクションを起こしていきました。しかし怪しげな管理会社は何かと理由をつけて説明を回避し、重要な書類を見せようとしません。

 あろうことか、ほかの理事たちも広瀬さんを白い目で見るばかり。困り果てて、筆者が参加する相談会を訪れたというわけです。

 ここまでヤバい事例もなかなか珍しく、ほとんどの管理会社は理事や理事会から要請があれば該当する書類を提示します。その点からして、この会社に管理を委託し続けるのはあまりオススメできないかと思われます。

 しかし広瀬さんの話を聞いただけでは、エビデンスが少なすぎて「管理会社が不正を働いている」とまでは断定できません。そのうえ相手がこれだけ怪しい会社だと、追及しても証拠を提出させるのが難しいかとは思います。

 せめてものアドバイスとして、広瀬さんには残高証明の提出だけでなく、「残高証明を提出しない理由」を回答するよう求めてはどうかと提案しました。そこで何か特別な理由があると言われたのならば、それに代わる別の証拠の提出を求めることもできます。

 その際に重要なのは、口頭ではなく正式な書面で通告することです。後から「言った・言わない」の議論になるのを防ぎ、また相手側にこちらの「本気度」と見せるためにも、フォーマットにはこだわっておいた方がいいでしょう。その後、広瀬さんのマンションと管理会社がどうなったのか定かではないですが、うまく解決していることを願うばかりです。


 以上の事例でも紹介してきたとおり、マンションの管理組合にはトラブルの火種があふれています。ここまで読んだ人の中には、「理事会に参加して面倒ごとに巻き込まれてしまっては大変だ」と思ったかもしれません。しかしほとんどの管理組合は大きな問題に直面することもなく、担うべき仕事を粛々と進めています。マンション管理の精神は“自主管理”。「自分の家は自分で管理する」という基本を忘れず、臆することなく参加してほしいと思います。」


 この記事を読んで、マンションの管理組合は、それぞれ多かれ少なかれ、色々な問題を抱えていることが解ります。管理組合さえないマンションはかなり特殊だと思いますが、小規模で自主管理のマンションや、いいかげんな管理会社が管理しているマンションや、独断専行の理事長がいるマンション等は、香川県内でも聞く話です。各県にはマンション管理士会があります。何か困りごとがあれば、是非相談してみてください。

香川県マンション管理士会でも、毎月第2土曜日に高松市役所1階で無料相談会を実施しています。何かお困りごとがありましたら、気軽にご利用ください。何らかの解決のヒントを与えてくれると思います。


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