2022年1月22日のbizSPAフレッシュの表題の記事を紹介します。
「衰えを知らぬタワマンブームの最中、住民の間で頭痛の種になっているのが修繕費の問題だ。資材や人件費が高騰するなか、数々の問題が噴出しているという。いったい、どういうことなのか。
今年は都内のタワマンが一斉に大規模修繕に!
マンション価格の高騰が止まらない。不動産経済研究所によると、昨年10月に首都圏で発売された新築マンションの平均価格は過去最高の6750万円に達し、前年同期比で10%以上の値上がりとなった。なかでもタワーマンションでは「億超え」も増え、庶民にとっては高嶺の花となっている。しかし、幸運にもすでに購入した者にとっても、そこは安住の地になるとは限らない。2022年は、タワマンの大規模修繕ラッシュとなるからだ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が話す。 「1997年の建築基準法の改正でタワマンが建築しやすくなり、ブームが本格化し始めたのが2000年頃。特に首都圏では2003~2009年まで、年間50棟以上のタワマンが竣工した。タワマンなど大型マンションは15~18年の周期で大規模修繕を行うのが一般的なので、首都圏では今年、多くのタワマンで行われることが予想されます」
修繕積立金の不足が複数の物件で明らかに
大規模修繕は快適に住み続けるためにも、また資産価値を保つためにも不可欠だ。ところが今、その費用として住民が拠出している修繕積立金の不足が、複数の物件で明らかになっているのだ。神奈川県内のタワマンに住む40代の会社員は明かす。「ウチのマンションでも大規模修繕に入る予定でした。ところがコロナ直前に、管理組合が公表した修繕費の見積もりでは、積立予定金額を2割以上も上回るものだった。組合では、各戸約30万~42万円の一時金を支払うか、修繕を延期するかでもめていますが、結論は出ていない。貯金も少なく、ボーナスは2期連続で2割も減ったので、一時金を支払う余裕なんてないですよ……」
3割超のマンションが積立金不足に
さらに「終のすみか」として都内のタワマンを購入した70代の男性は、管理組合が決断した積立金の値上げで計画が狂った。 「2年ほど前、それまで2万2000円だった修繕積立金が、突然5万円に値上げされました。月20万円ほどの年金収入しかない老夫婦にとってかなりの負担増です。貯金をはたいての一括購入だったのでローンはありませんが、手元に現金がない状態が続いています。管理費と修繕積立金、固定資産税などを合わせ、毎月7万円は払っており、妻からは『処分して都営住宅に引っ越したほうが気が楽』と言われました」 ちなみに国交省の2018年度調査では、1688件のうち、34.8%のマンションが修繕積立金不足に陥っていることが明らかになっている。「週刊SPA!」が入手した、築6年の都内の某タワマンの修繕積立金の資料によると、12年後に控える大規模修繕時に一戸あたり220万円を負担しなければ、修繕費を賄えないと記されていた。
積立金不足の最大の要因は…
さらに『日本経済新聞』(2021年12月9日付)によると、横浜市にあるザ・パークハウス東戸塚レジデンスでは、各住民が負担する毎月の積立金を3.5倍とする決議が、管理組合総会で採択された。同マンションは、2018年に新築分譲されたが、わずか3年で、大幅値上げされたことになる。積立金不足の最大の要因は、修繕費の高騰だ。さくら事務所のマンション管理コンサルタント・土屋輝之氏(@mansyon_kanri)は言う。「2000年初頭にタワマン建設が本格化して以降、大規模修繕のコストは段階的に上がってきている。アベノミクスの公共投資への期待感に沸いた2013年の夏頃と、消費増税に伴う駆け込み需要が起きた翌年。さらに2011年の震災後の復興特需や五輪特需で、現在と15年前を比較すると、大規模修繕にかかるコストは2割以上増えている。にもかかわらず、積立金の増額の話はなかなか進まない」
修繕工事に必要な足場コストの上昇
タワマンの大規模修繕費が高額になる理由について、修繕を請け負うインクコーポレーション代表の入江尚之氏はこう指摘する。「項目別で見ると、値上がりが特に顕著なのは足場。足場は通常、建設会社がリース業者から借りてくるのですが、絶対数が決まっているので価格変動が著しく、5割以上も上がっています。足場が高くつくタワマンの修繕費は、この15年で30~35%高騰しました」入江氏は、足場コストの上昇は今後ますますひどくなると言う。「厚労省が定める、足場に関する安全基準が年々厳しくなっており、コストを押し上げている。直近では、昨年6月の改正で、これまでより高い手すりの設置が求められるようになった。結果、足場の設置自体により時間がかかるようになり、人件費が上昇しました。加えて、現場作業を担っていた外国人労働者が、コロナで入国できなくなり、人件費はさらに高騰しています」 コロナ禍の影響はほかにもあり、「原油高騰やコンテナ不足で修繕に必要な塗料やタイル、パネルなどの価格も3割増し」(入江氏)になっているとか。
修繕の住民投票をめぐって怪文書も
積立金の不足が引き起こすのは、経済的な問題だけではない。神奈川県内のタワマンに住む、40代の女性によると、不足する修繕積立金に関する議論が活発化した結果、住み心地が悪くなった。「築8年目のウチの物件では今年、修繕費の値上げに関して全戸対象の住民投票を行うことが決まりました。改定案では1㎡単価が1.5倍の約300円になり、とうてい納得できません。反対派と賛成派それぞれの組合理事が、票の取りまとめに動いているのですが、住民同士の立ち話でも、それとなくどっち派なのか探ってくるような人がいたりと、見えない分断を生んでいる。互いの主張を否定する怪文書や匿名のチラシが投函されてたりして、気味が悪いです」果たして解決策はあるのか。土屋氏は言う。「修繕計画の多くは、管理会社が『理想的』に描いた内容。すべてを必ずやらないといけないわけではありません。メリハリをつけた計画にすることで、積立金の残高内に抑えることも可能です」
修繕費を抑えるために修復を怠ると…
実際、最近では危険性のない小さい外装のひび割れは修繕しない物件もあるという。しかし、榊氏からはこんな警告も。「都内の湾岸エリアのタワマンは、強い潮風でパネルの間を埋めているコーキング剤の劣化が早い。修繕費を抑えるために、こうした部分の修復を怠ると、内部に潮水がしみ込み、取り返しのつかない事態になることもあります」負担金の増額を回避できたとしても、どこまで直すかを巡って、住民の分断は回避できそうにない。
「修繕利権」に巣食う管理会社&組合の実態
大規模修繕には陰謀も渦巻く。「都内のあるタワマンの管理組合を長年務めていた理事長は、住民からの信頼も厚かったのに、管理会社の大規模修繕計画に否定的な態度を取っていたところ、緊急動議で解任されてしまった。実はこれには裏があり、不信任案に票を投じた理事は、管理会社の息がかかっていた。管理会社や傘下の工事会社は儲けのチャンスなので、さもありなんです」(前出の榊氏) 管理組合からのキックバックで生活している理事もいるというが、都内のタワマンで3年前まで理事を務めていた男性(40代)も言う。 「ある時、理事一同がイタリアの有名家具ブランドから、イタリア料理のフルコースに招待された。のこのこ出かけていったら『共用部のロビーやラウンジの家具を、すべてウチで新調して』という商談でした。見積もりは2000万円超で到底予算に合わず断りましたがよくある話のようです」管理組合に丸投げでは搾取されるばかりである。」
最近、修繕積立金値上げの話題が良く出てきます。確かに大規模修繕工事の戸当たり単価も高くなっており、15年前は戸当たり80万円程度だったのが、戸あたり100万円が普通となり、最近は戸当たり120~130万円が相場となっています。修繕積立金もかつては専有床㎡あたり160円あれば十分とされていたのに、今は最低でも200円以上必要というのが常識になってきました。今春から始まる管理計画認定制度では、修繕積立金の平均は335円、まだまだ値上げが必要な状況です。
ここの記事にもあるように、中には月々5~6万円の修繕積立金を徴収する管理組合もあるようです。ローンの返済がなくても管理費と駐車場を含めて月々10万円程度の費用が必要になってきます。
修繕積立金は組合員の資産とは言え、あまり高額な設定にすると、維持費が高くなり、中古売買時にマンションが売れにくくなります。また年金生活者が増えてくると、高額な管理費や修繕積立金が払えず、滞納者が増えてくるおそれもあります。管理組合運営はますます難しくなりそうです。
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