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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

「マンション管理組合の理事会」はもう古い? 休日の義務から解放される「第三者管理方式」のメリット

更新日:2023年7月19日



 2022年12月19日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。


「分譲マンションを購入して、とても重要でありながらも多くの人が面倒だと感じているのが、「管理組合活動」ではないでしょうか。とりわけご相談を受けることが多いのは、マンション管理組合の理事長や役員になることについてで、ひとたび就任すると毎月一度程度は土曜日や日曜日に開催される理事会に出席することになります。休日に家庭サービスができず、家族からの反発を受けることも多いので悩ましい問題なのです。


「持ち回りで管理組合の役員に…」から解放される?

 しかし最近では、大手の分譲会社が販売する新築マンションなどで、そのマンションの管理会社がこれまでの管理組合の理事会に代わって、マンションを維持管理するという「第三者管理方式」という新しい形式の管理方法が広がっていることをごぞんじでしょうか? また築年数の経過した古いマンションなどでも、管理組合の役員のなり手がいないことで、「第三者管理方式」を導入しているマンションもここ最近増えています。

 では、その「三者管理者方式」とはどのような制度なのでしょうか?

 それは、管理組合の運営を「管理会社」や「マンション管理士」などの第三者に委ね、理事長あるいは役員として就任してもらうことで、役員の不足を補ったり専門家を外部から調達するという方式のことです。要するに、「マンションの管理会社が理事長も兼ねてしまう」というイメージです。

 この「第三者管理方式」、明確なメリットが存在する考え方ですので、もし定着すると、マンションからこれまでの「管理組合」や「理事会」という言葉が消えてしまい、それらは近い将来誰も知らない死語になってしまうということも起こるかもしれないのです。


ご近所付き合いが苦手だからマンションを選んだのに

 戸建住宅は一般的に町内会等のご近所付き合いもあるので、共働きのご家庭や会話がおっくうな方は、先々の暮らしを考えて近所付き合いが面倒な戸建住宅ではなくマンションを選んだ人も多いのではないかと思います。

 しかし、マンションは戸建住宅にはない、面倒なルールが数多くあるのも事実です。まず年2回の消防設備点検では点検作業員を住戸内に入れて、各部屋の火災報知器やスプリンクラー等の法律で定められた消防設備点検のために協力しなければなりません。

 また、多くのマンションでは年に1回、雑排水管清掃を実施していますので、排水管の高圧洗浄作業員を住戸内に入れて風呂場、洗面所、洗濯機置き場など配管清掃に在宅して立ち会うわなければなりません。

 その他にも定期総会、自衛消防訓練、各種イベントなどの出席もあります。もしかしたら戸建て住宅のご近所付き合いよりも面倒かもしれません。そして消防設備点検、雑排水管清掃は年に数回で10分から20分在宅すれば済みますが、さらに面倒なのが、理事会活動なのです。

 もし理事会の理事や監事に選任されると毎月、又は2ヵ月に1回程度開催される理事会に出席しなければなりません。理事会は、多くのマンションでは、土日に行う場合が多いので、週末をのんびり過ごしたい人や家族と一緒に出掛けたい人にとっては負担は大きいものになります。加えて理事長に選任されれば、管理会社から電話、メールなどの連絡も頻繁にあります。


第三者管理者方式のメリット

 マンションの区分所有者にとっては、管理会社が理事会に代わってマンションを維持管理する「第三者管理方式」を導入することで、理事会そのものがなくなるので、組合員やその家族が順番に理事や監事になる義務から解放されるというメリットがあります。今まで通り休日は、家族とゆっくり過ごすことができるようになるわけですから、魅力的な話でしょう。

 一方で管理会社の物件担当者(フロント社員)は、通常、管理組合の理事会を設置しているマンションでは管理委託業務契約に基づいて、理事会支援業務として毎回「総会の会場の設営」を行い、「理事会議案と資料の作成」という作業をして事前に配布し、理事会に陪席して会計報告、点検報告、組合員からの苦情や意見書があればその回答案も作成したりなどの多くの業務を行っています。

 しかし理事会がなくなれば、フロント社員の業務も一部減ることになりますし、さらにそれまで管理組合の理事長や役員になっていた住人の方たちもその煩わしい業務から解放されるわけです。

 管理会社にとっては、一般的に、理事会出席や資料作成の対応業務がなくなりますので、フロント社員の可能な仕事量が1人当たり8~20物件くらいだったとすると、「第三者管理方式」で理事会がなくなれば、その倍の16~40物件くらいのマンションを担当することが可能になると考えられ、管理会社の効率化、人手不足解消にもなります。

 このように、「第三者管理方式」は、住人(区分所有者)、管理会社のフロント社員、管理会社の3者にとってメリットがある方法であると考えられるのです。さらに、上記のように1マンションあたりのフロント社員の業務量も減ることで、結果的に人件費が削減できることになり、管理委託費用が少し安価になるということも聞き及んでいます。


「第三者管理者方式」と法律との関係

 「第三者管理方式」を導入するにあたって、管理会社が管理組合の理事長に就任することになりますが、それは法的に問題ないのか? というご相談は多くあります。

 そこで区分所有法第二十五条では、「区分所有者は、規約に別段の定めない限り集会の決議によって管理者を選任し、又は解任することができる」と規定されています。  ですから、管理者(理事長)が総会で選任されれば区分所有者でない者でも誰でもが管理者になることができるのです。

 国土交通省が公表しているマンションの標準管理規約では管理組合は、建物・敷地などの管理を行うために区分所有者全員で構成される団体であることを踏まえ、役員要件をそのマンション区分所有者であることとしていますが、区分所有法ではそれを要件としていません。

 ですから、そのマンション管理委託契約を結んでいる管理会社やその社員が管理者になることもできます。また、マンション管理士や弁護士、建築士などで専門的知見を有する者が管理者を業務として就任することもできますが、別途業務費用が発生するので管理会社の社員や管理会社が管理者なることでその費用が掛からないことや割安になるようです。

 さらに、理事会は標準管理規約第51条の規定で区分所有法には理事会についての規定がないので、理事会を設置しなくても法的には問題ないといわれています。


第三者管理方式が広がっている理由は?

 分譲マンションの賃貸化や区分所有者の高齢化で理事の選任が困難になり『役員のなり手不足』から一部の組合員に負担がかかりそれが大きな社会問題になっています。比較的新しいマンションでも、仕事が忙しい、子供が小さい等の理由で役員に就任できない人も多くいます。

 実際、管理組合の役員でも、義務といわれて仕方がなく就任している人がほとんどで、それが証明するように、一生懸命に職務をこなしていた理事が、任期が終わって普通の区分所有者に戻ると、定期総会にも一度も出席しないケースが多くみられます。

 管理会社においては、人件費の高騰から管理委託費用の値上げ交渉を行っていますが、管理組合からの抵抗があり思うように値上げできないということも、第三者管理方式が進んでいる要因のひとつです。

 加えて、理事会役員から管理委託契約業務に含まれない理不尽な要求や、深夜・休日に及ぶ理事会役員や居住者からの頻繁な電話への対応、総会・理事会における罵声・怒声による威圧など理事会役員のパワハラなどで、精神的健康被害を受けたり退職者が増えたりすることが多くなりました。

 そのために、社員に長く働いてもらえるように第三者管理方式を提案する管理会社も増えてきました。第三者管理者方式の導入は区分所有者、管理組合、管理会社にとって好都合だということです。もっと早く、第三者管理者方式に変えたかったのですが、なかなかきっかけが作れなかったのです。

 しかし、コロナ禍の影響で毎月開催していた理事会が開けなくなり、決算理事会だけの年に1回の理事会でも管理組合運営にさほど影響がなかったので組合の意識に変化が訪れたのです。毎月理事会を開催しても、役員は管理会社の言いなりで、事実上管理会社が理事長と同じなので、理事会は必要ないのではないかとある管理組合の理事は、言っていました。


管理会社が管理者になると

 では、第三者管理者方式は管理組合にとってどうなのでしょうか。区分所有法第四十三では、管理者は、「毎年一回一定の時期にその事務に関する報告をしなければならない」という規定があるので、理事会がなくなっても、毎年開催される総会(集会)はなくなりません。

 それでも、委任状や議決権行使書で賛否を伝えることができるので総会に実際に出席しなくても区分所有者として責任は果たすことができるのです。

 管理者は、その集会で収支報告、事業報告を行い、管理者の選任、管理会社の契約更新などを議決します。そして、来期の予算案、事業計画を承認することになります。

 管理者である管理会社が自らの会社の管理委託契約更新を総会に上程し、自らを管理者候補者として総会に上程することは、管理会社と管理組合との契約は双方代理となり利益相反にならないのかいうご相談は多く寄せられています。

 これについては、管理会社を管理者とする承認及び管理者業務の委託契約締結承認が、総会において適切になされていれば基本的には問題ないという回答が出ています。(国土交通省平成24年1月マンションの新たな管理方式の検討 第三者管理者方式に関する主な相談事例5から)


マンション管理を取り巻く意識の時代の変化

 昭和の時代は、マンションは高級住宅でそこに住むというのはまだ珍しくステータスだったので、管理組合活動が活発でした。

 総会を開催すれば、90%以上が議場に出席するのは当たり前で、理事会の役員を公募すると定数以上の立候補者があり、管理組合で選挙管理委員会を設置して選挙運動が行われて、組合員が投票して当選者を総会に上程し、決議されて理事会役員に就任するということも珍しくありませんでした。

 時が流れ、平成になると都会ではマンションに住むということがごく当たり前になりました。国土交通省の平成30年度のマンション総合調査では委任状、議決権行使書を除く実出席率は32.9%と低く、総戸数規模別では、総戸数規模が大きくなるほど実出席率が低くなっていることが報告されています。

 令和の時代になり、管理組合活動より自分達生活を大切にする無関心な区分所有者は多くなり、マンション管理に関心が高かった区分所有者は高齢になり、理事会は管理会社の言いなりに・・・それなら、いっそのこと理事会をなくして管理会社に全部お任せというのが、令和の実状に即したマンション管理なのかもしれません。」


 この記事にもあるように、最近第三者管理方式のマンションが増えています。特に、東京の新築タワーマンションでは、新築入居時から第三者管理方式により管理されており、入居者の満足度も高いという記事もありました。当初は高経年マンションで理事の成り手不足対策として想定されていた第三者管理方式ですが、管理会社の業務量削減を目的に採用例が増えているようです。

 ただし、第三者管理方式の採用にあたっては、管理会社は営利企業であり、組合とは利益相反の関係にあります。年1回の監査や、マンション管理士等の専門家を組合顧問として別途採用することで、管理会社の好き勝手にさせないことが重要だと思います。


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