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  • 快適マンションパートナーズ 石田

「大規模修繕」を予算内に抑える方法



 2021年3月19日の東洋経済オンラインに、不動産コンサルタント沖有人さんの表題の記事がありました。


大規模修繕計画を予算不足で実施できないマンションが増えている。築古のマンションストックはこれから急増していく。これに対して日本人の人口はすでに減り始めていて今後急速に減っていくことは決まっている。また、築古マンションの居住者ほど、高齢化しており、働いている現役世代は少なく、追加費用には対応しにくい。そんな中、必要な修繕箇所を確認したうえで、解決策を提示していかないと意味がない。


大規模修繕積立金が足りなくなる理由

 大規模修繕のための資金の集め方は、新築時に大規模修繕積立基金という一時金と、入居後の毎月の修繕積立金の2つの合計になる。これは当初は低めに見積もられる。なぜなら、新築販売時にこの金額が大きいと販売不振の一因になりかねないからだ。しかし、入居後数年経つと、このまま行くと積立金が足りなくなりますという話にすり替えられる。このため、毎月の積立金を増やすか、まとまった一時金を徴収するかという話になる。ここで、入居者で構成する管理組合ではひと悶着することになる。

 それだけではない。タワーマンションの大規模修繕費用が高騰しているのは事実で、これは元請けとなるゼネコンの建築単価が高騰したことに比例している。ここ10年で、震災復興や公共工事の復活や東京オリンピック開催が決まり、建築コストは大幅に上がった。その余波だが、当面の間はこれが下がる理由がなく、この問題が軽減されることはないと思われる。

 費用不足問題に対して、総戸数分の世帯の意見をまとめてお金の話を工面するのは多大な労力が必要になるので、これを避ける方法を私は考えていた。それは大規模修繕前に引っ越してしまうことだった。私の初の著書「マンションは10年で買い替えなさい」では、10年で住み替える理由の1つに大規模修繕を回避すると書いている。一般的に、築12年目頃に最初の大規模修繕が実施されるが、新築から10年間住むのであれば、その前に転居できる。こう書いたのも、新たな費用負担を免れる有効な手段を知らなかったからだ。


大規模修繕「前後」で売買価格は変化しない

 私は以前から大規模修繕って不思議だなと思っていた。なぜなら、大規模修繕は多額の費用が掛かるが、これをやったからと言って資産価値が上がることはないからだ。大規模修繕前後で売買価格が変化することがないということだ。

 ほとんど物件が12年や15年で大きな修繕をしているなら、その時点で価格が上がる傾向が見えるはずだが、これまで一度もそんな事例を見たことがない。そもそも大規模修繕は共用部の修繕であって、売買される専有部の資産価値には反映されない。

 例えば、集合住宅ではなく、一戸建てであれば資産価値に影響しない投資をするかと言うとはなはだ疑問になるし、外見は壊れてないなら、室内の専有部の居住性を上げることにお金をかけるだろう。なぜ集合住宅だけそれをやれと言うのだろう。

 言うまでもなく、周辺の通行人を巻き込むことがあるので、道路を管轄する地方自治体と情報連携して危険を未然に防ぐ必要はある。実際、神奈川県逗子市で2020年2月、市道に面するマンション敷地内の斜面が崩落し、歩いていた女子高校生が死亡する事故があった。女子高校生の遺族が、このマンションの区分所有者と管理会社、管理人に対し、安全対策を怠っていたとして、損害賠償を求めただけでなく、マンション管理会社の代表を業務上過失致死の疑いで、マンションの区分所有者を過失致死の疑いで神奈川県に刑事告訴している。

 また、マンションに限った話ではないが、外壁タイルなど部材の落下による事故による被害者は、2019年度10人(うち死亡1人)となっており(国土交通省『建築物事故の概要』)、定期的な安全性の検査は欠かせない。


 一方で、「大規模修繕」を行ったがゆえの事故も起きている。

 東京都港区六本木で、2016年10月、マンションの大規模修繕工事現場で足場の鉄パイプが落下し、歩行者の男性が死亡している。皮肉にも、不測の事故を防ぐための工事で不測の事故を発生させてしまったのだ。

 また、厚生労働省の『労働災害統計』によると、2019年度の鉄骨・鉄筋家屋の建築工事における「飛来・落下」の事故は232件あった。これらの数字から単純にどちらが危険かといえる話ではないが、大規模修繕を「適時適切に」やる必要性は高まっている。


「適切」をいかに見出すかが重要

 そもそも何のために大規模修繕をやっているかと言うと、共用部の劣化防止ということになる。防水や防錆などはやっておかないと快適な生活が脅かされる可能性がある。

 過去の最高裁での判決では「外壁が剥落して通行人の上に落下」して通行人等が死傷した場合、落下した建物の所有者等が全面的に賠償責任を負うという判決が下った。つまり、建物の外壁落下は所有者の責任で絶対に防ぐことが社会の要請となっている。

 こうした事例を持ち出して、リスクを必要以上に声高に言い多額の支払いを決断させようとする修繕請負業者も存在する。しかし、あくまでも必要性に応じて、適切に管理することが重要なので、「適切」をどのように見出すかが最大のポイントとなる。


 建築基準法12条点検という建物や設備の定期点検義務がある。これは法律で定められているので順守する必要があり、地方自治体への報告義務がある。また、国土交通省は「長期修繕計画作成ガイドライン」で長期修繕計画の「標準例」を示している。

 とはいえ、ガイドラインにもあるように、マンションにはさまざまな形態・形状・仕様等があるうえ、立地条件も異なっているため、一律で行う必要性などない。そもそも大規模修繕の12年という周期も、政府が縛りをつけているわけではなく、「12年以上でもガイドライン違反ではない」(国土交通省 住宅局市街地建築課マンション政策室)という。


信頼できる第三者を探そう

 要するに必要性・緊急性で優先順位を決めて、その順番で進めていけばいい。その見極めが重要なので、まずは調査をし、専門家の第三者にチェックをしてもらってから進める対応を実施したほうがいい。管理会社、ゼネコン、コンサルなど立ち位置によって意見も異なるので、信用できる第三者を探そう。

 コスト下げるなら、中小の下請けに直発注するなどの方法はある。瑕疵保険に入っていれば、たとえ問題が合っても大丈夫なので大手である必要はない。こうした動きに積極的な提案をする管理会社も出てきている。耐久性のある共用設備に変えることで交換頻度を下げたりする提案は長期的なコスト削減につながっている。こうした提案能力の高い管理会社選びも必要な時代といえるだろう。


 建築費の高騰により、大規模修繕工事費も上昇傾向にあります。都会の管理組合では価格競争力の働く設計監理方式を採用するケースが増えてきていますが、悪徳コンサルという問題もあり、コンサルタントの選定に苦労しているケースも多いようです。かくいう私も、あらぬ疑いをかけられ、入居者の心無い言葉に傷つけられた経験もあります。いかに信頼のおけるコンサルタントを見つけられるか?大規模修繕工事の成否は、この一事にかかっているのかもしれません。


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