2024年4月4日のダイアモンドオンラインの表題の記事を紹介します。
「60歳以降の寿命を縮める「ダメージが大きい家」の特徴
2022年の日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳となる(厚生労働省「簡易生命表」)。人間が60歳までに死ぬ確率はいたって低いだけに、以降の20~30年の寿命に強い影響を与えているものとして、自宅が挙げられる。
最も在留時間が長い場所でありながら快適性に劣ると、年老いた体にとってそのダメージは計り知れない。どんな家が寿命を縮めてしまうのか、なぜそうなるのか。それが国勢調査から判明したので紹介したい。
国勢調査では5歳おきに住んでいる家を特定している。持家か賃貸か、戸建かマンションかなどの区分である。高齢者は引っ越しをほとんどしない。住宅ローンは80歳完済なので、年金暮らしになってから家を買ったりする確率は少なく、賃貸から持家への移動はほぼない。
賃貸で引っ越したくてもオーナーの審査が通らないことも多い。部屋で亡くなられ、発見が遅れると異臭で貸せなくなったりすることを嫌うからだ。高齢者に最も多い移動は老人ホームと想定されるが、その割合はわずかで、ほとんどの人は同じ家に住み続けている確率が圧倒的に高い。
70歳の人は5年後75歳になっているので、この間で生きていた人の割合を生残率として計算しよう。この生残率は年齢が進むにつれて下がるが、住んでいる家の違いで大きな差が出ることが、今回判明している。60代前半から計算を始めているので、平均余命はわずか20年強に過ぎず、数年の差でも大事になる。
まずは、持家と賃貸ではどうだろう。ここでの賃貸は民間の物件から、UR(都市整備機構)や公営住宅や社宅を含んでおり、持家以外すべてを指す。持家の平均余命が25.1年で平均寿命が87.1歳に対して、賃貸は21.8年の83.8歳となり、賃貸は3.3年寿命が短くなる。つまり、賃貸だと13%短命になるのだ。
「寒さ」は寿命に影響大日本の居間はとにかく寒い
寿命に影響している一因として、家の寒さがある。「冷えは万病のもと」と言われるように、人間は寒さに弱い。日本では、冬場(12月~2月)に亡くなる確率はそれ以外の季節の118%にもなる。冬の死亡率を他の季節並みにすれば、84歳の寿命が6年延びる計算になる。
厚生労働省の調べで、ヒートショックによる死亡者数は年間1.9万人に及ぶと推計されている。その当時の死亡者数の約1.5%に相当し、冬場の風呂場で高齢者が発症し、帰らぬ人になることが多い。
発症のメカニズムは、他の部屋よりかなり寒い風呂場で裸になり、熱いお風呂に入ることで、血圧が急変し、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすというものだ。予防法としては、脱衣所や風呂場と他の部屋との気温差を小さく保つことだ。このヒートショックをなくすだけでも、高齢者は寿命を3年ほど延ばすことができる計算になる。
WHO(世界保健機関)は2018年に、冬場の室温を18度以上に保つことを強く勧告している。冬場の室温が健康と寿命に影響するからだ。イギリスでは、冬の健康的な室温は21度で、最低基準は18度と定められている。先進国では、おおむねこの基準が室内最低推奨室温となっている。
しかし調べてみると、日本の居間の室温はかなり低い。ヒートショックの発生率が最も高い香川県(東京都健康長寿医療センター研究所)では、平均13.1度(スマートウェルネス住宅等推進調査委員会)で冬場の死亡率が高くなる割合は122.9%(人口動態統計)と、47都道府県でワースト3位となっている。
これは、断熱されていない部屋が寒くなってしまうことが一因と考えられ、二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓が採用されている住宅の割合は21.1%(住宅・土地統計調査)で、低い方から11番目となっている。
ヒートショック死者数が香川県で多く北海道で少ない意外
香川県と言えば、瀬戸内海の温暖な気候を想像するが、それが過信と装備不足を招いているのかもしれない。なぜなら、北海道はヒートショックの死者数が沖縄に次いで2番目に少ないからだ。居間の室温が平均19.8度と高く、断熱性能の高いサッシ・ガラスも81.6%と最も高いため、冬場の死亡率が高くなる割合は111.9%と5番目に低くなっている。寒冷地は入念な寒さ対策が必須要件だけに、それが奏功してヒートショックが少なくなっていると考えられる。
賃貸が持家よりも短命なのは、賃貸が持家に比して安普請に造られているからであることは間違いないと思われる。大家が自分の家以上の仕様で賃貸住宅を造ったりしないことは、不動産業界では常識だ。実際、最も熱が逃げてしまう窓・サッシにおいて、二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓がついている確率は、持家の38%に対して賃貸は15%しかない(住宅・土地統計調査)。賃貸は持家ほど断熱にお金をかけたりはしない。
賃貸の中でも最も寿命が短いのは、賃貸アパートとなる。平均余命は20.7年、平均寿命は82.7歳となる。賃貸マンションの平均余命は24.7年なので、アパートとマンションで4年の差となる。
賃貸の中でも、UR(都市再生機構)のマンションの平均余命は23.0年とやや短くなる。これらも、居間の室温と風呂場の室温が関係している可能性がある。アパートやURでは、風呂場が換気のために外気に近い場所にあることが多いのに対して、賃貸マンションでは外壁に面しない風呂場が相対的に多いものだ。
寿命だけではなく、家は健康をも大きく左右することがわかっている。近畿大学の岩前篤教授が長年調査した結果によると、引っ越し先の断熱性能のレベルで持病の改善率が大きく違うことがわかっている。それらはアレルギー性鼻炎、手足の冷え、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などだ。これは室内の断熱だけでなく、空気環境(温度・湿度・汚れ)を良好にすることの効果でもある。
国土交通省はスマートウェルネス住宅等推進調査委員会を立ち上げ、断熱改修前後の居住者の健康への影響を検証している。その結果、室温が18度以上と12度未満で比較すると、12度未満のときは高血圧、コレステロール値の上昇、心電図異常、夜間頻尿、睡眠障害が引き起こされている。この他、室温と湿度を適度に保つことで、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、中耳炎を抑制できることも分かっている。
これは私も実感がある。夜の寒いリビングで鼻をかむ回数が格段に多く、なぜその場所でだけアレルギー性鼻炎が悪化するのか、不思議に思っていた。これを知って以来、室温を上げて快適に過ごせるようになった。
賃貸で長生きはほぼ不可能 断熱性能の高い持家購入を
断熱された家で冬場の室温を高く保つことで、健康的な生活を送り、寿命を延ばせる可能性は高い。それを実現する住居は賃貸ではほぼ不可能で、日本には実在しないに等しい。自宅である持家を取得する際に、断熱性能を上げておくしかない。
中古マンションは十分な断熱性能を持ち合わせていないが、断熱リフォームを120万円ほどでできる。これについては、補助金と減税を最大に組み合わせれば8割以上キャッシュが戻ってきて、残りは光熱費の削減で数年のうちに回収できる見通しだ。そのやり方はやや複雑なので、別の機会に詳しく説明しよう。それだけ、国や自治体も室内環境の改善を後押ししているということだ。
戸建を建てるなら、注文住宅で断熱性能が高いものを依頼すると、快適な家を手に入れることができる。そうすれば、健康と寿命というプライスレスな価値を手に入れられる確率が上がるので、この際、家の選び方を変えることをお勧めしたい。」
香川県のヒートショック発生率は日本一とはショックなデータです。もともと温暖な環境が、家の断熱性を軽視した家造りになっているのかもしれません。
分譲マンションは戸建て住宅や賃貸マンションに比べると断熱性が高く、またお風呂や洗面所は窓のない室内に設置されているケースも多く、健康寿命が伸ばせる可能性が高い住まいです。あとは、居室のサッシをペアガラスや内窓サッシに変更できれば、より省エネで長生きが出来る住まいに変えることが出来ると思います。
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