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  • 快適マンションパートナーズ 石田

「音がうるさい」クレーム寄せる隣人への対処術



 2021年5月8日の東洋経済オンラインに、建築音響の権威であられる日本大学名誉教授の井上勝夫先生の記事がありましたので紹介させていただきます。


他の住戸からクレームが来たらどうする?

 まずいちばん大切なことをお伝えします。マンションに住んでいれば、いつなんどき他の住戸からクレームを言われないとも限りません。人が生活している以上、生活音はつきものなので、誰でも音の加害者になる可能性はあるのです。

 クレームがきたとき、最初にするのは音源の特定です。クレームはたいてい「お宅の音がうるさいんですけど」といったあいまいな表現でくるケースが多いでしょう。ですから最初にはっきりさせるのは、

  • どんな音?(「カン」とか「ボン」とか「ブーン」といった音の種類)

  • いつごろ?(朝か、昼か、夜か、何時ごろか)

  • どこから?(リビングか、廊下か、お風呂場か、寝室か)

などの項目について、どのように聞こえるのか、できるだけ具体的に聞いてください。具体的であればあるほど、自身の生活パターンと照らし合わせて、音源の特定がしやすくなります。クレームがきたら、「まずは相手の言い分を誠意を持って受け止める → 次に音の出どころをつきとめる」という順番になると思います。

 冷蔵庫のコンプレッサーや洗濯機の稼働音などの低周波の音、ドアやふすま、カーテンの開け閉めのクレームも多いのですが、とくにやっかいなのは上階から下階に響く「床衝撃音」に対する苦情です。マンションでもっともトラブルになりやすく解決が長引くのも、この「床衝撃音」が多いのです。


 私が関わっている(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターの電話相談でも、いちばん多い苦情の原因は子どもの足音などの「重量床衝撃音」です。

 「床衝撃音」の中でも、硬くて軽いものを床に落とす「軽量床衝撃音」のほうは、比較的軽減しやすいでしょう。衝撃がコンクリートまで響くほどの大きな衝撃ではないので、表面の床材によって音のエネルギーを吸収できるからです。

 衝撃が加わる箇所にカーペットや部分敷きマットを敷いたり、衝撃をやわらげる効果のある床材に替えると、音の発生が軽減されます。フローリングにするときは、床材の遮音性能が「LL-40」か「LL-45」と示されているものを選ぶようにしましょう。


「重量床衝撃音」対策のポイント

 一方「重量床衝撃音」は、重く柔らかいものが落ちるので、床材だけではエネルギーが吸収できません。ふとんやマットのような厚みのあるものを敷けば、衝撃はかなり吸収できますが、部屋中にマットを敷くのは現実的ではありません。

 少し難しい話をしますと、床材によって音を防ぎたいのなら、床材自体が「衝撃音」を出す「音源」より柔らかい材料にする必要があります。人の歩行や飛び跳ねが「音源」となると、人の足より柔らかな材料が必要なのです。

 また子どもが飛び跳ねたりすると、体重の10倍以上の力が発生しますので、それによってつぶされない柔らかさを維持できる床材が必要です。しかし、そんな床材はほとんどありません。ですから、「重量床衝撃音」に対する対策を床材で行うのはかなり難しいことになります。

 古くから利用されている「畳」は「軽量床衝撃音」に対しては、衝撃をやわらげる効果がかなり得られ、優れた床材といえますが、「重量床衝撃音」に対しては、あまり効果が期待できません。とくに近年用いられている発泡材を裏打ちした「スタイロ畳」などはほとんど効果はないとみたほうがいいでしょう。

 「重量床衝撃音」を根本的に解決するには、床材では難しく、どうしても解決したければ、床のコンクリートの厚さ(スラブ厚)を厚くし、振動しにくい床にするしかありません。

 コンクリートが厚ければ厚いほど、床は重くなりますので、その分、衝撃時の振動は少なくなり、下の階に響く音は軽減されます。しかし、現実問題として、すでに建物ができあがっている場合は、躯体に手を加えるのは無理でしょう。


 残された方法は、「うるさい」と言われた音源の発生音を小さくすることです。たとえばドンドンと走り回る音自体を小さくする努力です。「床衝撃音」は、音を出す側の住まい方に左右される場合が少なくありません。「こんなことくらい、ふつう」と思っていることが、共同住宅では意外と“非常識”であることも少なくないのです。

 たとえば「帰宅が遅くなったんだから、深夜にお風呂に入ってもかまわないだろう」「子どもなんだから、これくらい走り回るのは当然」「食事をするのに椅子を引くのは当たり前。その音をとやかく言われても」といった思い込みが、騒音の問題を引き起こしていることが多々あります。

 他の住戸からクレームがきたときは、いま一度、自分の住まい方をふり返り、「もしかしたらわが家の常識はマンション生活から見ると非常識かも」と反省してみることです。子どもが平気で走り回ったり、飛び跳ねたり、下の階に配慮せず、がんがん椅子を引くなど、マンションにふさわしくない住まい方をしているかもしれません。

 もし家具や椅子を引く音がうるさいのなら、まずは脚に防音のクッションをはかせてみましょう。以前私が出演したテレビ番組では、椅子の脚に、切り込みを入れたテニスボールをはかせたり、椅子用の靴下をはかせて、音を軽減させていました。


子どもの音がうるさい場合の対処法

 また子どもが行動する音がうるさい場合は、必要以上にバタバタ走り回ったり、椅子から飛び下りるのをやめさせるとか、深夜は努めて静かにするなど、こちらもできる限りの努力をすることが大切です。

 あるお宅では、2段ベッドの上から子どもがいつも飛び下りるので、飛び下りる場所にふとんを敷いて、衝撃を吸収したという話を聞いたことがあります。

 このように、音を出す側、すなわち音源側でいろいろ努力することは、万一、訴訟問題に発展してしまったときも、重要になります。加害者側がどれだけ工夫・対策をしたかが、勝敗をわける大きな要因のひとつになるからです。


 「床衝撃音」を防ぐ方法のひとつとして、上下階を仕切るコンクリートにもうひとつ床をつくる二重床をすすめられることがあります。もともとあるコンクリート(スラブといいます)から脚を立ち上げ、その上に合板などを敷いて床材を貼り、床を二重にするやり方です。

「二重床」にすれば、躯体であるコンクリート=下の階の天井に、直接衝撃を伝えないので、「軽量床衝撃音」には効果があります。

 同じ理屈で「重量床衝撃音」にも一定程度の効果はあるのですが、必ずしも救世主になるわけではありません。というのも、床材とコンクリートの間の脚部や空間で音が共振し、太鼓のように響いてしまうことがあるからです。

 この場合は、わりと低音(周波数が低い)で発生することが多いのですが、そうすると、もともと低音が問題となっている「重量床衝撃音」に、さらに低音が加わって、逆に、大きくなってしまうことが多いのです。

 床材の構造や材料によって性能が異なりますので、一概にはいえませんが、二重床は多くの製品でこの傾向がみられます。


もし二重床にするなら

 この問題はかなり専門的になりますので、ここでは省きますが、もし二重床にするのなら、JIS規格で表示された製品を選ぶことをおすすめします。

 JISは日本産業規格といい、床材に対しては「JIS A 1440-1,-2」があります。少なくともこれらの規格による測定結果が書かれたカタログを見て、製品を選ぶようにしてください。

 いずれにせよ、二重床は床や脚部などが共振する影響が出るので、お金をかけて二重床にしてみたところで、「重量床衝撃音」に関しては、思ったほど効果は期待できないことが多いと認識しておいてほしいと思います。


 井上先生とは会社員時代に、マンションの上下階の騒音問題について、共同研究を行い、色々とアドバイスをいただきました。

 その折にお聞きした話で、欧米には軽量床衝撃音という定義はあるが、重量床衝撃音という定義はないというお話が印象的でした。軽量床衝撃音はタッピングマシーンという機械を使い、土足で室内を歩く欧米の生活を想定して、コツコツというハイヒールの音等が下階に響かないように対策がされます。

 一方重量床衝撃音とは、バングマシンという機械を使い、子供が椅子から飛び降りる音を再現して、床の遮音性能を定めています。欧米では何故、重量床衝撃音がないのか?とお聞きすると、椅子から飛び降りるような行為は、明らかに住まい方のルール違反であり、古くから上下階で住んでいた欧米では、長年の教育の中で「住まい方のルール」が定着しており、そのような基準を作る必要はなかったというお答えでした。一方、横割り長屋にしか住んだことがなかった日本人は、共同住宅に住まうルールという認識がなく、重量床衝撃音という床の遮音性能を設定したというお話でした。上のブログにもある通リ、重量床衝撃音の対策を建築で行うには無理があります。

 日本にもマンションが普通の住まいとして定着してきた現在、欧米と同じように、「マンションの住まい方」のルールというものを、基準化し、広く世間に公表すべきだと思います。


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