
2024年9月30日のJB.PLESSの表題の記事を紹介します。
「“値上げの秋”を迎えている。10月1日から様々な価格改定が予定される。なかでも、約30年ぶりの値上げで15~35%の引き上げとなる郵便料金に次いで上昇率が大きいのが火災保険だ。豪雨や強風などによる被害も補償対象となる火災保険は、自然災害の増加を背景に、直近5年間で最大4割も保険料が上昇することになる。筆者も早速その“洗礼”を受けた。
(森田 聡子:フリーライター・編集者)
5年前に比べ100万円以上も値上がり
今年度、自宅マンションで約10年ぶりに理事会の仕事が回ってきた。早速この夏臨時総会が開かれたのだが、そこで取り上げられた議題が管理組合として加入している火災保険の更新に関することだった。
マンションの場合、個々の居住者が専有部分の建物や家財を対象にした保険を契約するほかに、管理組合としても共用部分の事故、例えば、給水管が水漏れを起こしたとか、台風により自転車置き場の屋根が吹き飛んだといったケースに備えて保険をかけている。
こうした「マンション管理組合向け火災保険」は、損害保険会社数社が取り扱っている。
自宅マンションが加入していた火災保険は大手損保のものだったが、保険料(5年分)の見積もりを取ったところ、5年前の更新時と比べて100万円以上も値上がりしていた。
総戸数が20にも満たない小規模マンションなので、5年に1度の出費とはいえ、100万円の負担増は痛い。そこで、ほかの2~3社にも照会して、最終的にはほぼ同じ補償内容で50万円増におさまる別の損保の保険に加入を決めた。
火災保険料率の“引き上げラッシュ”
急激な値上げの背景には、近年の火災保険料率の“引き上げラッシュ”がある。
住宅や家財を対象にした個人向け火災保険料の目安となる「参考純率(料率算出団体が算出した純保険料率。保険会社はこれを基に算出した自社の純保険料率に必要経費などの付加保険料率を加えて保険料率を決めている)」は、2018年から2022年にかけて3回改定されている(2018年△5.5%、2019年△4.9%、2022年△10.9%)。
これを受けて、大手損保の火災保険料も2019年10月に全国平均6~9%、2021年1月に同6~8%、2022年10月に同11~13%引き上げられた。
2023年には過去最大級となる参考純率の13.0%の引き上げが発表された。そして、この10月1日からは大手損保4社で全国平均1割程度の値上げが実施される予定だ。

大手損保の10月からの火災保険料引き上げ幅(図表:共同通信社)
2019年以降のトータルでは最大4割近い上昇となる。
水災補償は「リスク細分型」に
筆者の自宅マンションの場合、たまたま9月が更新期限となっていて値上げ前の“駆け込み加入”ができた格好だが、これでひと安心とはならない。この先を考えれば、5年後の更新時の保険料暴騰は必至だからだ。
火災保険では、火事に限らず落雷やガス爆発、強風、台風、ゲリラ豪雨などによる被害も補償の対象となっており(保険によっては特約扱いとなる場合もある)、10月1日からは保険料の値上げと同時に水災補償の保険料が細分化される。
水災補償の保険料は、水災のリスクの高さに応じて市区町村ごとに5段階に分けられることになる。前述した参考純率を基に説明しよう。

図表:共同通信社
M構造(マンション構造)の建物の場合、最大の引き上げ率となるのは豪雨災害が多発する宮崎県で、最もリスクの低い1等地で△20.4%、高い5等地だと△29.9%にもなる。ちなみに東京都は、1等地が△4.3%、5等地が△20.2%だ。
リスク細分型は既に自動車保険などで導入されている方式で、被災リスクが高い人ほど保険料が高くなる。被災住民からすれば、災害で想定外の出費を強いられた上に保険料も跳ね上がって踏んだり蹴ったりではないだろうか。
米国では“火災保険難民”が発生
保険制度の根底にあるのは相互扶助の精神だ。しかし、「地域のリスクは地域でシェアする」方式では、特に人口や世帯数の減少が激しい地方では支え手となる住民の負担が大きくなってしまう。
米国では2010年代以降、被害総額が10億ドルを超える「ビリオンダラー・ディザスター」が増え、住宅向け保険事業の収支悪化による撤退が相次いでいる。その結果、“火災保険難民”が出てきているというから、リスク細分化程度で済んでいる日本はまだマシだという見方もできる。
とはいえ、今のペースで火災保険料の値上げが続いていくと、地域によっては経済的負担が大きすぎて加入できない、補償範囲を限定せざるを得ない、というケースも出来しそうだ。
このままでは「火災保険など入る必要がない」という声も
例えば、火災保険に付帯する地震保険の場合、前述したマンション管理組合向け火災保険での付帯率は全国で5割にも届いていない。実は筆者の自宅マンションも未付帯で、総会では「ただでさえ運営費不足なのに、地震保険など付ける余裕はない」と出席者全員一致であっさり見送られた。
よくよく調べてみると、自宅マンションのマンション管理組合向け火災保険に20数年加入していて、火災保険から保険金が下りたのは強風で窓ガラスが破損した1例のみだった。このまま保険料が上がっていくと、いつかは費用対効果からみて「火災保険など入る必要がない」との意見が出てくるのではないかという懸念もある。
火災保険は「実損払い」が基本で、実際に生じた損害額しか補償されない。建築資材価格の上昇により住宅の再建費用が高騰する中で、これから火災保険の更新を迎える人は自治体の「ハザードマップ(被害予想地図)」を参考に補償内容を吟味して保険料を抑える工夫が必要になりそうだ。
まず補償の重複を避けるのは基本中の基本と言えるだろう。
よく見受けられるのが個人賠償責任補償特約のダブりだ。自動車保険や傷害保険、共済のほか、クレジットカードなどにも付帯が可能となっており、これらで既に加入済みでないか確認したい。
保険料の一括払い、免責金額の設定なども
ただし、マンション管理組合向け火災保険の場合、個人賠償責任補償を確保していない居住者や所有者がいる可能性もあり、保険料を節約するために外す場合は慎重な対応が求められる。もし、専有部分で水漏れなどが起きて他の居住者宅に被害を与えた場合、加害者の住民が個人賠償責任補償保険に加入しておらず、巨額の損害賠償金を払えないといった事態が起こり得るからだ。
保険料のまとめ払いも検討事項になりそうだ。保険期間を最長の5年にして保険料を一括払いすれば、毎年更新の毎月払いよりも1カ月当たりの保険料は安くなる。
また、契約時に「免責金額」を設定すると保険料負担を軽減できる。免責金額とは、損害発生時に加入者が自己負担する金額を指し、損害額がこれを上回った場合のみ、上回った分の保険金が支払われることになる。
被災経験のある方には釈迦に説法になってしまうが、いざ自分が渦中の人となったとき、一部の富裕層を除けば一生かかっても払い切れないような金額が必要になるリスクがあるのが自然災害や事故の怖いところだ。
補償内容を正しく理解し、過不足なく加入して、不可抗力への備えとしたい。」
私が住むマンションでも火災保険の更新時期がきており、現在見直し中です。まず、保証内容の条件設定を行っており、ポイントは、①付保割合(建物価値の何パーセントの割合の保険に入るか?)②付帯サービス(ハザードマップではないと言われている水害の保証をつけるか?)③免責金額の設定(現在は免責金額が0円だが、免責金額を設定して保険金を下げるか?)④地震保険加入の可否(新耐震マンションであれば、過去の事例から全壊はなく、保険金が下りても一部損の5%しか下りない。)
上記条件を設定し、数社から見積もりを取得する予定です。保険会社の中には、日本マンション管理士連合会のマンション管理適正化診断を受信し、管理に優れているマンションと認定されれば、保険金が安くなる商品もあります。
火災保険の更新を控えているマンションの理事会の皆さんも、期間に余裕を持って、事前に十分な検討をおこない、保険更新を行うことをお勧めします。
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