
今回は2021年1月5日の住まいサーフィンに掲載されていた建築&住宅ジャーナリストの細野透さんのコラムを紹介します。
「住戸の間取りの基本
分譲マンションにある各住戸の「間取り(部屋の配置)」は、基本的には「数字+LDK」というような記号で表示されます。例えば「3LDK」と記されていたとしましょう。これは住戸の内部が、「3居室(個室)」および「LDK(居間+食事室+台所)」で構成されていることを示しています。
◆「間取り(部屋の配置)」に使われる記号の一覧
数字──居室(個室)の数 L──リビング(居間) D──ダイニング(食事室) K──キッチン(台所)
DK──ダイニング・キッチン(食事室+台所) LDK──リビング・ダイニング・キッチン(居間+食事室+台所)
M──マルチルーム(多目的室) N──納戸(NはNandのN) S──収納(SはSyunouのS) R──部屋(ルーム)
1R──「ワンルーム住戸」という意味で使う WIC──ウォーク・イン・クローゼット WORKROOM──ワークルーム(仕事部屋)
新型コロナ問題の影響、重要性を増すワークルーム(仕事部屋)
新型コロナ問題の発生以降、多くの企業が「会社のオフィスに出勤しないで、自宅でテレワークを行う」、というスタイルを導入しました。しかし、実際にテレワークを行ってみると、自宅(マンション)には「書斎」あるいは「自分だけの部屋」がない場合が多いため、「会社のオフィスと同じレベルで、仕事に集中するのかは難しい」といった声がよく聞かれます。そのためマンションデベロッパー各社は、分譲マンションに「ワークルーム(仕事部屋)」あるいは「ワークスペース(仕事スペース)」を設けるために、あの手この手を尽くしてきました。例えば・・・。
◆NTT都市開発──「ウエリス浦和美園ノーステラス」 完成済みマンションの各住戸に、「テレワークに対応した1畳の書斎空間」を新設。
◆三菱地所レジデンス 完成済みマンションの各住戸に「箱の間」が設置されていれば、「テレワークが可能なスペース」への変更が可能なことをPR。
◆東京建物 新築中のマンションの共用部に、「テレワークが可能なコワーキングスペース(シェアオフィス)」を用意。
◆東急不動産 工事中の新築分譲マンションの共用部に、「テレワークが可能なワークブース(パーティションで3方から4方を囲った空間)」を新設。
これらは、新型コロナ問題の影響で、ワークルーム(仕事部屋)の重要性が高まった結果です
オープンハウスアーキテクトの視点その1
2020年11月に、住宅設計・建築事業を展開する株式会社「オープンハウス・アーキテクト」(東京都立川市)が、興味深い内容のプレスリリースを公表しました。
◆「アフターコロナの暮らし方改革、テレワークに対応した新住宅構想『LWDK』を提案」
──オープンハウス・アーキテクトは、リモートワークや SOHOの普及に対応すべく、戦後75年間続いた建築概念を変える、新しい住居構想『LWDK』を提案します──。
分譲マンションではこれまで「LDK(リビング・ダイニング・キッチン)」という表示が使われていました。それを、コロナ後の情勢を見据えて、『LWDK』に改めたのが特徴です。
LDK──リビング・ダイニング・キッチン (居間+食事室+台所) LWDK─リビング・ワーク・ダイニング・キッチン (居間+仕事スペース+食事室+台所)
このように比較して見ると、オープンハウス・アーキテクトは、「住宅史に残るようなキャッチコピーを発見した」ようにも思われます。
オープンハウスアーキテクトの視点その2
プレスリリースの説明を続けます。
◆テレワーク環境に対する課題 コロナの影響によってテレワークが一気に普及しました。一方で、急激な環境の変化に戸惑いの声が多いのも実情です。住まいの情報サイト「SUUMO JOURNAL」でのテレワークに関するアンケートでは、仕事環境において「オンオフの切り替えがしづらい」「仕事用スペースがない」などの不満の声があることが発表されました。
また、既婚で6歳以下の子どもと同居する約半数は、「子どもを見つつ仕事可能な環境(部屋・スペース)がない」という悩みを抱えているとされています。これらから、テレワーク環境の悩みは、暮らしや家族構成によって様々であるといえます。
◆理想のワークスペース 求められる理想のワークスペースの形も人それぞれです。当社のお客様を対象とした意識調査で、約4割が書斎などのプライベートワーク空間を求め 、約3割がリビングにワークスペースを用意したいことが分かりました 。
オープンハウスアーキテクトの視点その3
◆ワークスペースが住宅の新基本に ニューノーマルを迎えたいま、ビフォーコロナの常識とは違った働き方が求められるようになり、「衣食住」を基本とする生活スペースだけでなく、「働(く)」機能も必要となりました。そこで、オープンハウス・アー キテクトは戦後75年間も続いた「LDK」の建築概念を変える、新しい住居構想『LWDK』を提案します。
◇タイプ1「オープン」 ダイニングの一角にカウンターデスクを設置。振り向けば、リビング・ダイニング・キッチンそれぞれの様子を簡単に確認できるので、家事・子どもの見守り・ニュースの確認などの「ながらシゴト」がしやすいです。
◇タイプ2「セミオープン」 ビルトイン収納を仕切りに、リビングに隣接した半個室を実現。窓に面するカウンターデスクで仕切っても、空間が広々と感じられます。
◇タイプ3「プライベート」 リビングから入れる、壁で仕切られている書斎。廊下に開く室内窓で開けたい時は開けて、集中したい時は閉めることができるので、使い方を作業内容や気分に合わせられます──。」
在宅勤務が一般化してきた現在では、マンションメーカーにも新しい発想と提案が必要になってきました。かつて会社員時代に商品開発の担当をしていた時にも、プラスワンルームの発想は常にあり、「ミセスコーナー」「書斎」「スタディルーム」「マルチルーム」と名称こそ違え、色々な用途提案をしたことが思い出されます。22坪3LDKから、24坪3LWKに、プラス3帖でもいいので、今の住まいに余裕が欲しいところです。
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