令和5年1月10日の国土交通省から表題の広報がありました。
「国土交通省の広報によると、令和3年度に定期検査報告が行われた約74万台のうち、32%にあたる約24万台のエレベーターで戸開走行保護装置が設置されていました。これは下記事故をきっかけにエレベーターの安全基準が強化されたものです。
「2006年6月3日夜、東京都港区の23階建て公共住宅の12階で、この階に住む都立高校2年の男子生徒(当時16)が自転車にまたがってエレベーターから降りようとしたところ、突然上昇を始めたエレベーターの床と12階の天井に挟まれ、窒息死した。エレベーターの製造元は、スイスに本部を置く「シンドラーホールディング」の日本法人「シンドラーエレベータ」(東京都江東区)で、警視庁は7日、業務上過失致死容疑で同社などを家宅捜索した。この公共住宅では、エレベーターが正しい位置に止まらなかったり、乗った人が閉じこめられたりするトラブルが頻発していた。死亡事故の前後にも、各地で同社製のエレベーターをめぐるトラブルが起きていることが判明。国土交通省が全国調査したところ、7月7日にまとめた中間状況で、都道府県から報告のあった3525基のうち29基が、建築基準法に基づく関係自治体の審査で「否」と判定された。定員オーバーでもブザーが鳴らなかったり、停電時に最寄りの階までかごを動かす装置がうまく作動しない、などだった。
(緒方健二 朝日新聞記者 / 2007年)」
上記事故を受け、国土交通省は エレベーターの戸が開いたままかごが昇降し、利用者が乗場の戸の枠とかごの間に挟まれる事故を防ぐため、新設されるエレベーターには、戸開走行保護装置の設置が義務づけを行いました。 一方、平成21年9月28日より前に設置されたエレベーターは、全面的な撤去・新設を行うまでは戸開走行保護装置の設置義務はありませんが、安全性確保のため、建物の所有者・管理者向けのリーフレット等により、設置を促進するとともに、定期的に設置状況の調査を行っているところです。
エレベーターの安全装置は、時代とともに①地震時管制運転装置の設置②戸開走行保護装置が設置③扉の排煙性能等、強化されています。ところがエレベーターの耐用年数は30年程度であり、新しいエレベーターに交換しない場合には、上記のような安全装置のないエレベーターが存在していることになります。これらの古いエレベーターは既存不適格と呼ばれ、ただちに違法という訳ではないですが、当分交換の予定がないのであれば、上記安全装置の追加を検討する必要があります。
国土交通省では、既存エレベーターの改修工事について950万円を上限に23%を補助する事業(エレベーターの防災対策改修事業)を行っています。
エレベーターを交換するのではなく、既存のエレベーターを改修する予定のある管理組合はこの補助事業の活用を検討すればいかがでしょうか。
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