私が会社員時代にマンションの設計をしていた頃には、キッチンの排気は必ずバルコニー側に排気していました。理由は、高級マンションでは、台所の料理の臭いを、隣近所の人が通行する廊下に出さないための配慮です。また、キッチンのレンジ下に立っていると、排気管を通じて、思いの外、外部の音が聞こえてきます。隣近所の人の立ち話等が聞こえないようにという配慮もあったと思います。
ただし、バルコニー側へ排気するためには、リビングに排気管を通すためのスペースが必要になります。パンフレットには下がり天井という名目で、梁型のような部分が出来てしまいます。リビングの解放感を取るか、キッチンの臭いを取るかの2者択一の検討の必要があります。
最近のマンションでは、開放廊下側にキッチンの排気が出されているマンションも見受けられるようになってきました。料理の臭いよりも、リビングの解放感のほうを重視したためだと思います。
かつては、マンションは高級というイメージが強く、設計する上でも、いくつかの「高級マンションとしての基準」があり、それを破ることはタブーとされてきました。
キッチンの排気方向一つとっても、「高級マンション」から「ファミリーマンション」へと、マンションのイメージが変遷しているように思います。
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