
2024年12月11日のAERAdot.の表題の記事を紹介します。

憧れのタワーマンション。選ぶ際に気を付けるべきは…(写真はイメージ/gettyimages)
憧れの住居のシンボルであるタワーマンション。しかし、数十年後には修繕積立金が不足して、多くのタワマンが「廃墟化する」と予見する専門家は少なくない。この説にはどのくらい信憑性があるのか。
タワマン修繕積立金不足「3つのワケ」とは
なぜ、タワマンの維持費は懸念されるのか。株式会社さくら事務所のマンション管理コンサルタント、土屋輝之さんに話を聞いた。
土屋さんは、「設備のメンテナンス費用が通常のマンションよりかかる」と指摘する。たとえば、エレベーターの取り換え費用だ。
「20階建てぐらいまでのエレベーターの取り換え費用は、1台あたりせいぜい2500万円程度です。でも、40階、50階建てのマンションになると、1台につき1億円と一気に跳ね上がるのです」(土屋さん、以下同)
タワマン独自の設備もある。災害時の救助で使用される非常用電源付きエレベーターは、高さ31mを超える建物に設置が義務づけられており、多くのタワマンに備えられている。交換費用は1台1億5000万円程度になることもある。
そのほか、火災時の救助に使用する屋上のヘリポートや高層階へ水を運ぶための給水ポンプなど、タワマンには特殊な設備が多く、メンテナンス費用が高額になりやすい。
コンシェルジュが24時間体制で勤務していたり、共用部分の施設ににジムやサウナなどの施設があったりするケースも多く、管理費もかさむ。
必要な水準より低く設定
2つ目の理由は、所有者が毎月積み立てる修繕積立金の設定額が、本来必要な水準より安く設定されているケースが多い点だ。土屋さんによれば、近年は改善傾向にあるが、以前は「分譲開始時に月々5000円程度に設定しているマンションも少なくなかった」という。
「一例として、500戸ある超高層マンションの場合、竣工後60年間で必要な修繕積立金の総額はおよそ110億円。1戸あたり月々5000円程度の支払いでは到底足りないので、いつかは大幅に値上げしなければ、大規模修繕を含めた維持管理が実施できなくなります」
3つ目に、この十数年、アベノミクス、消費税増税、東京オリンピックなどを経て、建築物価自体の高騰が続いていることも要因に挙げられる。長期修繕計画を立案した当時は万全の設定だったとしても、物価上昇により破綻するケースも考えられるという。
「修繕計画を立案する際は、毎年0.5~1%程度の物価上昇を織り込んで計算した計画も検討した上で妥当な積立金の額を設定することをお勧めします」
タワマン1戸あたり60年間で約2200万円の試算も
前述の条件に当てはめて、60年で110億円の修繕積立金を確保するには、1戸あたり約2200万円を用意しなければならない計算になる。60年は720カ月だ。
「720カ月で2200万円となると、入居月から3万円ずつ払っても40万円不足します。1万円ずつしか積み立てていないなら、毎月2万円以上の赤字を出して生活しているのと同じです」
同じ500戸でも、タワマンと100世帯が入居できる建物が5棟並ぶ団地タイプのマンションとを比べると、修繕費用はかなり違う。
「後者の場合、60年間でかかる修繕費用の試算による目安は1戸あたり1600万〜1800万円。少なく見積もっても400万円の差が生まれます」
修繕費を1800万円とした場合、1戸あたりの負担は月々2万5000円だ。建物の規模が同じでも戸数が減れば、1戸あたりの住民が負担する金額はより高額となる。実は、程度の差はあるが維持費の負担が大きいのはタワマンも通常タイプのマンションも変わらない。
「維持費」だけでマンション家賃に
マンションに住めば、修繕積立金以外にも維持費はかかる。仮に一般的な構造の総戸数500戸のマンションの管理費を月々2万3000円程度とすると、車を所有している場合は駐車場代が月々1万5000円、固定資産税、都市計画税を月割りの額に換算した金額はおおむね1万円だ。ざっくりとだが、修繕積立金を含めて合計すると月々7万3000円程度かかる計算だ。
「タワマンでなくても、維持費だけで、単身用マンションが借りられる金額です。毎月これだけの維持費を負担しながら、住宅ローンや日々の生活費、子どもの学費なども支払わなければならない。そもそも、マンション所有者の金銭の負担は非常に大きいのです」
積立金を支払えなくなったら
分譲マンションでは、積立金が支払えなくなる住民が出ることは珍しくない。
支払えなくなった住民は、マンションを売却してほかの住まいに移り住むか、滞納するかのいずれかだ。滞納が半年続くと、滞納分全額を回収できなくなるケースも少なくない。
「管理の厳しいマンションは、3~6カ月以上滞納したら、すぐに弁護士に委託し『期日までに支払わなければ裁判所に競売の申し立てをする』と伝えます。でなければ、未収金が増えるばかりだからです」
滞納したら即、弁護士――。残酷に見えるかもしれないが、滞納した住民にとっても管理組合にとっても、滞納額が少ないうちに売却したほうが、競売より「プラスに働くケースが多い」という。特に都内の物件は値上がり傾向にあり、売却益を得られる可能性が高いからだ。
修繕計画は60年先まで考えて
資金トラブルを防ぎ、マンションの廃虚化を防ぐためには、長期計画が重要だ。一般的な長期修繕計画は30年先までが多いが、土屋さんはその倍の「60年後までを見据えるべきだ」と話す。
「まず、60年間でかかる費用をざっくりでも試算して、少なくとも85%から90%ぐらいを賄える水準に修正することです」
そして、多くのマンションは大規模修繕の周期を見直すべきだという。これまで大規模修繕は12年周期が一般的とされてきた。
「500戸のタワマンの場合、1回の大規模修繕の費用はおおむね10億円程度、1世帯あたりの負担は200万円程度です。12年周期の場合、60年で5回も工事を実施することになる。大規模修繕の対象とならない設備の工事も必要となることを考えると、500戸で110億円積み立てても、資金が不足する可能性が高くなります」
土屋さんから見て無理のない計画に見直している管理組合のほとんどは、大規模修繕工事の周期を16年から18年に変更済みだという。18年周期なら、3回目の大規模修繕は54年目。12年周期と比べると、60年時点では計画上2回も工事を減らすことができる。
管理力はマンション選びの重要指標
それでも資金が不足して、マンションの健全な維持管理のために修繕積立金を値上げするほかないこともある。
「資金不足の一番大きな要因は、管理組合(所有者)の維持管理への無関心です。タワマンに限らず、中古マンションを購入するなら、エリアや駅からの距離、日当たりなどと同様に、マンション管理組合の運営状況にも注意を払って選んでいただきたい」
最後に土屋さんは「タワマン」についてこう話す。
「タワマンは、十分な支払い能力を有する人が住む分には何の問題もありません。設備が複雑で適切に管理しなければリスクが高いのは事実ですが、深刻な資金不足が発生するかどうかは、管理組合の運営次第です」
修繕積立金計画や防災訓練の実施、管理組合員同士のコミュニケーションの場の創出など、健全に管理されているタワマンも多く存在する。購入を決める前に、まずは管理組合の運営状況を確認することだ。」
改めて60年間のマンションの維持費を見ると、その金額の高さに唖然とします。私の住むマンションの修繕積積立金は月々1万1000円なので60年間で790万円、15年毎に大規模修繕工事を実施すると15年目・30年目・45年目の3回の大規模修繕工事なので、毎回260万円の費用が掛けられます。前回2回目の大規模修繕工事は玄関ドアも交換して戸当たり150万円でした。
この記事にあるような、60年間でかかる修繕費用の試算による目安は1戸あたり1600万〜1800万円。修繕積立金月々2万5000円とは大きな乖離があります。タワーマンションはやはり高額なのか?首都圏の工事費は地方に比べると大幅に高いのか?
この記事が独り歩きして、マンションの修繕積立金を高額化させているのであれば、注意して見ていく必要があるように思います。
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