2023年2月3日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。
「 相続税の評価は現金を不動産に替えると低くなる。人に貸せばさらに下がる。土地を買って貸家を建てれば、国税庁のルール通りでも相続税の支払いを減らすことができる――。
富裕層向けの資産運用サービスを提供する「ウェルス・パートナー」(本社・東京都港区)は、この理屈を「タックスコントロール」のモデルとして富裕層に紹介している。
モデルの説明は、こうだ。
土地を5億円で買い、建物を5億円で建てたとする。相続の際、土地は相続税路線価で評価されるが、それは実勢価格の8割とされるため、4億円と評価される。建物の評価には固定資産税の評価額が使われるが、同社によると実勢価格の4割程度まで下がるので、2億円だ。
ここまでで、もともとの10億円から、相続税がかかる評価額が一気に6億円まで下がる。
次に、これを人に貸すと評価はさらに下がる。建物は一般的に7割になるので、1億4千万円の評価になる。土地も8割弱になるので、評価は3億円余りまで下がるというのだ。
貸すことで、結果的に評価額は10億円の半分を切る。
さらに、土地と建物のために10億円を借金してまかなうと、相続時の不動産の評価額が半分を切っているため、差し引きして5億円以上の「マイナスの財産」となる。この分はほかの遺産から減額することができる。
こうした効果は、タワーマンション(タワマン)の高層階であれば、さらに大きくなる。
マンションは比較的狭い土地に多くの部屋が確保されるので、土地が評価に及ぼす影響が一戸建てより小さくなる。相続時の評価減は土地より建物の方が大きいため、同じ投資をしてもマンションのほうが評価減の効果が大きくなりやすい。
一般のマンションより土地を有効活用することが多いタワマンは、さらに効果が得やすい。なかでも、眺望がよく開放感がある高層階の実勢価格は高い。ということは、相続時に単純計算される相続税の評価額との差が大きくなる。
こうした「タワマン節税」に対しては、2017年度の税制改正で上層階の固定資産税評価を上げる措置が取られた。だが、もともと低い評価額を40階でも5%上げる効果しかなく、関係者の間では「焼け石に水」と言われる。
こうした手法の節税策を、税務署も黙って見逃しているわけではない。
最高裁は昨年4月、不動産の評価が下がることを利用した節税策に「伝家の宝刀」を抜いた税務署の処分を支持する判決を下した。
マンション2棟を合計約14億円で買った男性が死亡し、国税庁のルールに従って2棟を3億円余りと評価した遺族が、借金も含めた相続で、相続税をゼロと申告した。この申告を税務署は「著しく不当」として、独自に再評価する例外規定を適用して課税したのだ。
これに対しては、建設業界などから「国税の恣意(しい)的な課税が認められるとタワマンが売れなくなる」という声もあり、国税庁は年内にもルールを改正する方針で検討しているという。
問題の背景には、総務省が決める固定資産税の建物の評価方法がある。現在の評価は画一的で、タワマンで実勢を大きく下回る評価を生む一方、地方では空き家などへの利用価値を無視した課税につながっている。公平な課税のため、抜本的な見直しが避けられない。」
記事の内容は一般的な節税方法として広く行われている方法です。遊休土地の土地活用と併せて、相続税対策としてアパートや賃貸マンションの建設を進める業者は数多く存在しています。国税庁は、高層マンションの評価額を購買時の7割とすると決定しましたが、都心部ではマンションが高騰しており、中古で販売しても新築時と変わらない金額で再販できるマンションでは、依然としてメリットが存在しています。
今回の最高裁の判例は、過度の節税対策に対しての判断ですが、国税庁が恣意的に運用するようになれば、投資家は疑心暗鬼になり、景気を冷やすおそれもあります。具体的なガイドラインを作成して欲しいと思います。
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