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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

マンションで孤独死、親族は? 管理組合が抱えた難問「身寄り捜し」

更新日:7月12日



 2024年3月4日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


東京都内にある築50年ほどの分譲マンションで、1人の男性が孤独死した。同じマンションには、別の部屋に、男性の高齢の父母が住んでいる、はずだった。しかし、別の階にある父母の部屋には家財が残されたまま、誰もいなかった。父母はどこにいったのか。ほかに親族はいないのか――。管理組合による「身寄り捜し」が始まった。


 一家は、マンションの新築時に入居した。そのときの記録には、父、母、長男、次男の4人家族と残っている。

 管理組合理事長の女性(76)は、父と通勤の時間が同じだった。駅まで歩きながら、よく世間話をした。ハンチング帽をかぶり、パリッとスーツを着こなす。ニコニコ笑って明るい人、という印象だった。外国籍で、出身国の大使館に勤めていると話していた。

 ただ、家族のことは知らなかった。女性が15年ほど前に退職してからは、会うこともなくなった。

 住民から管理組合に、「隣室から異臭がする」と連絡があったのは2021年2月のことだ。

 管理組合は警察に通報。そこで暮らす50代の男性が亡くなっていることがわかった。一家の次男だ。死後2カ月ほど経っていたとみられ、病死だった。住民の高齢化が進むマンションでは、孤独死はそれほどめずらしいものではない。通常は、入居届で記載を求めている連絡先にあたり、相続の手続きを進めてもらう。次男の連絡先は、父になっていた。もう90代になっている。

 しかし、父母の部屋は、その半年前から管理費などが滞納されており、連絡がとれなくなっていた。そして、父の連絡先は、亡くなった次男になっていた。

 警察の立ち会いのもと、父母の部屋を開けた。テーブルの上には薬が、クローゼットには洋服が残っていた。しかし、人が暮らしている様子はない。

 父と母、そして長男はどこに行ったのか。

 次男が亡くなっていた部屋は、異臭が残っていた。ただ、管理組合に立ち入る権限はない。清掃するためにも、相続する権利がある「相続人」を捜す必要があった。

 ところが、一家の所在がわからないうえ、ほかに親戚がいるかどうかも、管理組合にはさっぱりわからない。

 空室のままでは、2部屋とも、月に約2万円の管理費や修繕積立金の滞納も続くことになる。相続人が見つかれば、滞納の分を請求できるが、5年で時効になる。

 「放置することはできない」

 管理組合は、マンションの住民に話を聞いてまわった。何人かの話から、一家の歩みがおぼろげながら見えてきた。次男は精神障害があり、生活保護を受給していたらしい。

 父はほとんど寝たきりで、母が介護をしていた。その母も5年ほど前に体調を崩し、施設に入所。父は近くの高齢者施設に入所し、のちに別の施設に移ったという。

 母は亡くなり、次男が友人と2人で葬式を出したそうだ。父が、どこでどうしているかはわからない――。

 生活保護の窓口となる区の福祉事務所や、父が最初に入ったはずの高齢者施設に所在を聞きに行ったが、「個人情報」を理由に、それ以上の話を聞くことはできなかった。

 困りはてた理事たちは、パンパンになった郵便受けに手がかりを求めた。事情を知る人からの手紙などが届いていないか。ためらいながらも、郵便物を調べることにした。

 公共料金の請求書やダイレクトメール……。霊園からの督促状を見つけた。

 封筒に書いてあった番号に電話した。長男はその霊園に納骨されていた。何十年も前、10代で亡くなったそうだ。霊園の管理費も、数年前から滞納されていた。


管理費など未収金100万円以上 新たな負担も「やむなし」

 そうしているうちに、どこから聞いたのか、管理会社から「父が都外の施設で亡くなった」と連絡があった。ほかに相続人はいるのか。管理組合は、同社の弁護士に調査を依頼したが、外国籍ということで対応してもらえなかった。

 区の無料法律相談に尋ねても、解決の糸口は見つからなかった。

 マンション管理の相談にのるNPO法人「集合住宅管理組合センター」(東京都新宿区)を頼ると、外国籍の人の相続に詳しいという司法書士事務所を紹介された。

 そこですすめられたのが、家庭裁判所相続財産管理人(当時。現在は相続財産清算人)の選任を申し立てることだ。相続財産管理人は、相続人がいない場合に、負債を含め亡くなった人のすべての財産を調べ、売却したり借金を清算したりして整理する。

 司法書士事務所に正式に手続きを依頼すれば費用がかかるが、「やむをえない」と理事会で決議した。2022年3月。亡くなった次男が見つかってから、すでに1年以上が経っていた。

 申し立てに必要な書類を用意するのも苦労した。不動産登記簿謄本や住民票は、理事で手分けして法務局や区役所に足を運び、請求した。マンションの管理規約や総会の議事録、管理費の滞納一覧なども必要だった。

 2022年秋、家裁に予納金100万円を支払い、相続財産管理人が選任された。そして、23年5月に父の部屋の売却が、10月には次男の部屋の売却が決まった。管理人をつとめた弁護士によると、外国籍であるために手続きには通常より時間がかかったという。

 管理費などの未収金は、二つの部屋で計100万円以上になっていたが、部屋が売却できたことで無事に回収できた。100万円の予納金が返還されるかどうか、司法書士事務所の費用がいくらで確定するのかは、まだわからない。管理組合の負担が発生する可能性もあるが、理事長は「管理費などの滞納が終わり、ほっとしている」と話す。

 マンションには、未婚の人や親子関係が薄い人もいる。外国籍の入居者も増えている。「友人でもいい。万が一のとき、事情がわかる人が連絡先になっていないと困る、と痛感しました」と理事長。総会で入居者には連絡先の更新をお願いしているが、応じない人も多く、限界を感じているという。


どう備える? 連絡先の把握、遺言も検討を

 日本相続学会の副会長を務める吉田修平弁護士によると、「亡くなった居住者が日本国籍であっても、相続関係を調べるのは労力がかかる」という。相続財産清算人の選任を申し立てるには、まずは相続人がいるかどうかを確認しなければならず、本人の出生から死亡までの全ての戸籍を調べるには、専門家でも3カ月以上かかることが多いという。

 国土交通省によると、築40年以上の高経年マンションは約126万戸(2022年末時点)あり、32年末には約261万戸となる見通しだ。国交省のマンション総合調査(18年度)によると、1979年以前に完成したマンションの管理組合のうち、所有者の所在がわからなかったり、連絡がとれなかったりする部屋が「ある」と回答した組合は13・7%にのぼり、5・3%では、そうした部屋が2割を超えると答えた。


 管理組合はどうすればいいのか。

 吉田弁護士によると、まずは、居住者が亡くなった場合に相続することになる家族などの連絡先を把握しておくこと。連絡先は入居時に求めるだけではなく、更新していくことが重要になる。「独居の高齢者には年1回、訪問して様子を聞くといいのではないか」

 配偶者や子ども、親など法定相続人がいない場合、遺言書がなければ、たとえばいとこのような法定相続人ではない人に遺産を残すことはできない。マンションの部屋が残れば、管理組合が相続財産清算人の選任を申し立てるなどすることになる。

 吉田弁護士は「遺言書を作り、死後の財産の処理について決めておくことは、居住者にとっても自分の遺志を伝えられるメリットがある。管理組合もこれらのことを発信して、居住者らの理解をえられるように努める必要がある」と話している。」


 マンション入居者の高齢化に伴い、記事に書かれたようなケースが増えてきています。管理組合は居住者リストの更新を定期的に行うことと、緊急時の連絡先を確認しておくことが重要です。


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