年度末が近づいてくると、マンションの定期総会に向けて、総会資料の作成と会計監査の実施が理事の皆さんの業務として発生してきます。今回は、マンションの会計について説明します。
マンションの会計は役所の会計に近い「予算準拠の原則」に基づいて行われます。主な収入は管理費と修繕積立金であり、その限られた収入をもとに、事業計画が立てられ、日々の管理や建物の維持保全が行われます。
また「区分経理の原則」により、管理組合の会計業務においては、目的別に会計を区分することが重要となります。目的別会計とは、マンションの通常の管理を行うために必要な費用(管理員人件費、共用設備の保守点検費、清掃費、事務費など)に充当するために徴収される管理費と、一定年数が経過する都度、計画的に行われる大規模修繕工事などの特別の管理に要する経費に充当するために徴収される修繕積立金を、明瞭に区分し別々に会計処理を行います。
事業年度の最初に今年度の予算を作製し総会で承認を得ます。また事業年度が終ったあとの総会では実績を示し、予算と実績を対比することで、会計の健全性を示します。
管理組合の会計においても、企業と同様に6つの一般原則(①真実性の原則、②正規の簿記の原則、③明瞭性の原則、④継続性の原則、⑤保守主義の原則、⑥重要性の原則)に基づいて作成されます。
① 真実性の原則
「管理組合会計は、管理組合の財産状況および収支状況に関して、真実な報告を提供するものでなければならない」とする原則です。
② 正規の簿記の原則
「管理組合会計は、全て取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作製しなければならない」とする原則です。
③ 明瞭性の原則
「管理組合会計は、会計報告書によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、管理組合の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない」とする原則です。
④ 継続性の原則
「管理組合会計は、その処理の原則および手続きを毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」とする原則です。
⑤ 保守主義の原則
「管理組合の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない」とする原則です。
⑥ 重要性の原則
管理組合会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきですが、管理組合の状況に関する組合員の判断を誤らせない限り、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらず、他の簡便な方法によることも、正規の簿記の原則に従った処理として認められるというものです。
管理組合においても、企業と同様に、年1回、1年間に収入や支出がどれだけあったのか、決められた予算に対して、いくらお金を使ったのか、オーバーしてしまったのかを組合員に報告しなくてはなりません。理事長は、これら管理組合の会計に関する情報を賃借対照表や収支決算書等からなる決算報告書として作成し、監事の監査を受けた上で組合員に報告する必要があります。これらの結果を通常総会において報告し、組合員から承認を得ることで、一連の会計に関する業務が終了します。
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