• 快適マンションパートナーズ 石田

マンションの「ペット禁止」築古物件にそびえる壁

更新日:8月29日



 2022年4月21日の東洋経済オンラインの表題の記事を紹介します。


「都内のマンションに住む和田信子さん(仮名)、賢治さんご夫婦は近所の人も羨むぐらい夫婦仲が良かった。特に息子の正明さんが、就職を機に実家マンションを出てからは、よく2人で近所のショッピングセンターに出かけたり、映画を観に行ったりした。賢治さんが定年退職してからは、バスツアーや海外旅行にもよく行ったものだ。

 そんな和田さん夫婦に、悲劇が襲う。健康そのものだった賢治さんが、心筋梗塞で倒れ帰らぬ人となる。あまりにも突然過ぎて実感が湧かないにもかかわらず、葬儀の準備や生前親交があった方への連絡など慌ただしい日々が過ぎていく。


「犬とか飼うのはどうかな?」息子から母に提案

 そんなある日、正明さんが「母さん、犬とか飼うのどうかな?」

 信子さんの落胆ぶりを見て、正明さん夫婦で相談しての提案だった。猫ではなく犬を提案したのは、 散歩などの外出で家にこもりっきりにならずにすむだろうと思ったからだ。信子さんは、突然、犬と言われて驚いたものの、子犬の動画を見たり、ペットショップに行って抱っこしたり、犬を飼っている知人に「飼うのは大変なの?」「私でも飼えるの?」と聞いたりした。何よりワクワクしている自分自身に驚きと嬉しさがこみ上げてくる。そんなある日のこと、信子さんがゴミ捨てに行く際に、ふと掲示板を見るとペット飼育についての注意文が貼り出されていた。もしかして……と嫌な予感がする。あわてて管理員さんに聞いたところ、当マンションではペット飼育はできない。ただし「ペット飼育可」にしたい、という意見は多く、現在、管理組合の理事会で検討中だという。

 いままで気にも留めなかったが、このマンションは「ペット飼育禁止」だったのだ。正明さんにそのことを伝えたら、「ペット飼育可にする検討中なら、少し待ってみたら? その間にどんなペットにするかじっくり考えたらいいんじゃない。一度ペットショップに行ってみようよ」と言ってくれた。

 まもなくして、管理組合から「ペット飼育に関するアンケート」が送られてきた。信子さんは、当然ながらペット飼育可「賛成」に〇印を付け、管理組合のポストに投函した。翌月には、理事長名でアンケート集計結果が示された。ペット飼育希望者が多く、「どちらでもいい」をあわせると80%を超えるため、次の総会に向けて理事会で検討するという。

 それから6カ月ほど経った管理組合の通常総会の案内を見ると、ペット飼育可にするための「管理規約改正とペット飼育細則制定について」提案する議題があった。これでようやく子犬が飼える! と、とても嬉しかったのを覚えている。


ペット飼育をめぐって飛び出した激しい意見

 いままでは賢治さんに任せきりで、マンションの総会にはあまり出たことがなかったが、今回は出席してみることにした。すると、ペット飼育の議案になった途端、激しい意見が飛び交ったのだ。


組合員1 「いままで通り、ペット飼育禁止がいいです。私の家族で重度のペットアレルギーを持つものがいるんです。わざわざ、ペット禁止だというから築古だけどこのマンションを購入したのに。お願いします。このままペット禁止がいいです」


組合員2 「私はペット飼育可に大賛成です。子供が飼いたいと言っており、子供の教育のためにも飼いたいです」


組合員3 「私は外部に居住しており、賃貸に出しているのでどちらでもいいですが、正直なところ、ペット飼育可のほうが賃料が高くなり資産価値が上がると思います」


 議長による採決の結果、出席者、委任状や議決権行使書もカウントしたが、わずかに4分の3に届かず否決されてしまった。ペット飼育可にするには、管理規約の改正が必要で、組合員総数と議決権総数のそれぞれ4分の3以上の承認が必要なのだ。

 承認されなかったのは、ペット飼育について「どちらでもいい」と思っていた組合員が、ペットアレルギーの人に同情をして棄権や否決に動いたのが理由のようだった。信子さんは、ガッカリして、正明さんにも結果を伝えた。ちなみに規約改正が承認されれば、ペット飼育細則の議案は、出席組合員の議決権の過半数で決めることができた。


ペット飼育はマンション3大トラブルのひとつ

 信子さんのように、ペット飼育意向のある非飼育者の阻害要因として、調査によると「集合住宅に住んでいて禁止されている」が、犬で24.3%、猫で34.3%にもなる。いまでこそ、新築マンションのほとんどがペット飼育可だが、いまだ築古マンションではペット禁止も多い。ペット飼育可の分譲マンションが主流となったのは2000年代以降とされる。不動産経済研究所の「首都圏におけるペット飼育可能な分譲マンション普及率調査」によると、調査を開始した1998年に販売された新築マンションでペット飼育可は、たった1.1%しかなかった。それが2002年には30%、2004年には50%を超え、2007年には86.2%まであがっている。

 その背景には、1997年に国土交通省が中高層共同住宅標準管理規約の改正で、ペット飼育を「規約で定めるべき事項」と記載し、ペットに関する規約をつくるよう促したこともあげられる。以降、新築マンションでペット飼育可が主流になってきたことを受けて、既存マンションにおいてもペット禁止から飼育可へとルール変更をするマンションが増えている。

 こうしてマンションでペット飼育が普及する一方で、ペット飼育がマンショントラブルの上位を占めることも多くなった。

 ちなみに国土交通省実施の「平成30年度マンション総合調査」によると、トラブルがないマンションは23.2%しかなく、何らかのトラブルを抱えているマンションが増加している。発生したトラブルについては、居住者間の行為、マナーをめぐるトラブルが55.9%と最も多く、次いで建物の不具合に係るトラブルが31.1%、費用負担に係るトラブルが25.5%となっている。

「居住者間の行為、マナーをめぐるトラブル」のうち、平成30年度調査では生活音が38.0%と最も多く、次いで違法駐車・違法駐輪が28.1%、ペット飼育が18.1%となっている。この「生活音(騒音)」「違法駐車・違法駐輪」「ペット飼育」は、「マンション3大トラブル」といわれている。


マンションのルールを変える手続き

 ペット禁止からペット飼育可にするには、マンションでのさまざまな決まり事が記載されたルール集ともいえる管理規約や使用細則の制定や変更が必要である。


新しくルールを作ったり、一度決められたルールを変更したりする一般的な流れは以下が骨子だ。

○理事会で検討、必要に応じて専門委員会を設置し検討する ○アンケートを作成し配布、集計し結果を報告 ○必要に応じて説明会 ○総会に諮る。管理規約の制定や変更は、総会に議題として上程し、特別決議での承認が必要。特別決議の要件は、組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の賛成がいる(使用細則の制定や変更であれば、普通決議で出席組合員の議決権の過半数の賛成でよい)


 信子さんの事例ではアンケートの集計の結果、ペット飼育希望者が多くどちらでもいいをあわせると80%を超えていたため、説明会などは開催せずに、総会に議題として上程した。しかし、アンケートを除いては、区分所有者(組合員)が意見を発言する場所がなかったため、総会当日にさまざまな意見が飛び交うこととなった。たとえば、同じアンケートでも意見を書く欄を大きくとったり、総会前に全体に向けた説明会を開催したり、「○月○日にペット飼育について話し合う理事会を開催するので意見がある方は参加してください。日程があわない方や言いづらい方は、管理員さんに言付けや管理組合用ポストか目安箱に投函してください」など、開かれた理事会として多くの意見を取り込めていればまた結果は違ったであろう。

 また忘れてはいけないのは、マンション内のルールは合意形成によって変更されるということ。今回は否決されたが、信子さんのマンションも時間がたてば、「ペット飼育可」になる可能性もある。」


 マンション居住者の高齢化の進展で一人暮らしの人が増えるに伴い、ペットを飼う方が増えてきます。しかしながら古いマンションでは、いまだにペット飼育禁止のマンションが多く、一部の住人が隠れて飼っているのが現実です。マンションで問題になっているケースの多くは、ペット飼育禁止マンションでのペット飼育に対する苦情のように思います。また、本当は飼いたいのに飼えない人の「妬み」も入っているのでは?と勘ぐってしまいます。

 2000年以降の分譲された多くのマンションではペット飼育が認められていますが、深刻な苦情は聞いたことがありません。ペット飼育のためのルールが制定されており、またお互いに気を付けるという生活になっているのかもしれません。

 ペット飼育不可マンションでは、当然ながらペット飼育に関するルールもなく、大型犬が飼われたり多頭飼いがなされていたり、廊下では、抱きかかえることや、ペットのフンの処理等、多くの苦情が寄せられます。却って、ペット飼育可にして、厳しいルールを制定した方が、苦情は減るのではないかと思う今日この頃です。


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