2021年2月8日の沖有人さんの、表題のコラムを紹介します。
「2020年の日本人の死亡者数は前年比で約1.5万人減っている。少子高齢化社会では高齢者が増加する分、死亡者数も増えるものだ。しかし、2020年はコロナ禍だからこそ、死亡者数は減っているのだ。コロナは衛生管理を周知徹底させたために、寿命を延ばす結果となっている。コロナの最大の恩恵は健康意識の高まりにある。そんな中、家は売れている。その際の選び方は一過性のコロナ対応ではなく、一生を健康的に過ごすための安心を中心に考えたいものだ。そこで家と健康の関係を調べてみて分かったことは、「マンション住まいは長生きする」という事実である。
コロナよりもこわい病気はたくさんある
コロナを死因とする死亡者数は毎日ニュースで報じられている。およそ1年経過した2021年1月30日時点で、累計5652人である。しかし、その数が他の死因で亡くなった死亡者数と比較されることは少ない。2019年の死因別年間死亡者数は以下の通りである。
■年間死亡者数(2019年)■ 総数 138万人 3784人/日 がん 38万9841人 肺炎 9万5498人 感染症 2万3529人 インフルエンザ 3571人 交通事故 4295人 自殺 1万9415人 他殺 293人 (出典)人口動態統計
コロナでは基礎疾患がある人の死亡率が高いことは世に知られている。厚生労働省発表資料によると、19歳以下の死亡者はゼロ、20~59歳も191人と少なく、それ以外はすべて60歳以上となる。免疫力が下がり、弱った体にはどんな病気でも死に至る可能性を秘めている。それは高齢化とともに確率を高めてしまうものだ。その意味で、家は体にやさしく、長生きできるところを選びたい。
家での不慮の事故に注意
家での不慮の死亡は多い。東京都健康長寿医療センター研究所は、浴室での心肺停止状態を含む全国での死亡者総数を2011年の年間で約1万7000人と推計している。この調査方法は、東日本全消防本部(救急車での搬送事例)の81%の調査協力を得る形で、ヒートショックでの死亡者数を把握したのだ。現時点でもコロナの3倍の死亡者数を出しており、特に冬場に集中して多い。ヒートショックは、主に家の中の温度差により起こる。熱い湯船と寒い脱衣所の間の移動などで血圧は急激に大きく変動し、心肺停止状態になってしまうのだ。このためにも、家の中の寒暖差を少なくすることが必要で、脱衣所や浴室での暖房が重要になってくるのだ。
マンションは戸建てよりも長生きする
国勢調査のデータを使って、建物別に寿命を計算することができる。そうなると、どんな建物に住むと長生きするかが見えてくる。その結果は分譲マンション(鉄筋コンクリート造)、戸建て(木造)、アパート(木造が多い)の順になる。分析方法は、60~64歳の20年後の生残率(生きている確率)の比較という形で行う。戸建て居住者の生残率が67.4%に対して、分譲マンションが73.2%と5.8ポイント高く、長生きしている。これに対して、アパートは53.2%にすぎず、戸建てより14.2ポイントも悪い。これを年齢差にすると、分譲マンションが戸建てよりも1.1歳長生きし、アパートは戸建てよりも2.7歳早死にすることになる。60歳以降の1年の寿命差は大きい。
分譲マンションと戸建てに代表される持ち家とアパートに代表される賃貸では、断熱性能や設備水準が違う。構造別では、鉄筋コンクリート造の方が木造よりも長生きするという結果とみることができる。ヒートショックの死者数は年間死亡者数の1.4%ほどにすぎないが、それ以外にもマンションの方が体への負荷が小さく、けがも少ないなどの諸々の要因があると考えられる。
マンション居住者が高齢化する
マンション価格はこの8年で1.5倍になった。価格が高くなったことで買える人も減った分、供給も減った。価格が安い時のマンション購入者は賃貸からの住み替え組が多かったが、今や持っている人が主な買い手となっている。こうして、マンションの居住者は5年で2.5歳平均年齢が上がっている。実際、古いマンションの居住者の高齢化はかなり進んでいる。
高齢化が進む中、晩年のついのすみかは、以前は庭付き一戸建てと思われていたが、今は駅近のマンションに変化している。それは長生きのためにも理にかなっている。そして、マンションの最大の利点は、戸建てと違い、フルフラットなところだ。段差がないのは体に楽だし、転倒事故も少なく、一方の戸建ては2階に上がれない高齢者が続出している。マンションでは、高低差はエレベーターが解決してくれる。
また、高齢になったら、立地も考えた方がいい。以前は高台の上が高級住宅地でいいとされた。しかし、丘の上はコンビニすらない不便な街でしかない。標高差は商圏を狭くし、スーパーはもちろん存在しない。こうして買い物難民が増える。それなら、高齢者には、街も平たんがいい。そこで、高齢者に最もおススメなのは、湾岸エリアということになる。湾岸の最大のリスクは災害リスクだが、もし災害があっても売却を検討しないのなら、大地震被害による資産性の下落を恐れる必要もない。そんな湾岸の大規模なタワーマンションは1階にスーパーがある物件が多く、便利だ。これは、冷蔵庫代わりになる。
マンションに必要なものは
ヒートショックに代表される室温差による体への負担は主に住宅設備が解決してくれる。冬場の大切さを考えると、一番健康にやさしいのは、床暖房だ。分譲マンションでは、標準装備されている物件も多いが、これは購入の必須条件だ。それはリビングだけでなく、ダイニング、キッチン、居室にあるとなおいいだろう。その次に、浴室暖房だが、これも浴室乾燥とともにユニットバスに標準装備されていることが多いので、積極的に使って予防しよう。
「エアコン」というと、日本では冷気・暖気を風とともに送るものが一般的だが、諸外国ではそうではない。全館空調や断熱技術で室温差を少なくし、風を起こさず、床暖房のようにじわっと空気環境を快適に維持することが多い。エアコンとは空気(エア)をちょうどいい感じにする(コンディショニングする)ということなのだ。それは温度だけでなく、湿度も制御し、風を起こさない方がいい。それが人にとって快適でやさしい空気環境なのだ。日本でそんな空気環境を作れたら、長生きするのは必然となるだろう。高齢化が進む中で、10年後に価値があるマンションは、こうした高齢者に好かれるマンションと言っても過言ではないと思う。」
感想
マンションはコンクリートのため、蓄熱性があり また気密性も高いため、戸建て住宅よりも各段に暖かいです。私の住んでいるマンションでも、冬場の早朝でも暖房なしで室温が16度以下になることはめったにありません。私の知り合いには、カゼや肺炎になることをおそれ、冬場だけマンションで生活する方もいらっしゃいます。
会社員時代にも、高齢者が一戸建てから、マンションを購入するケースは結構ありました。大型の病院が郊外に移転すると、その廻りのマンションは良く売れました。またショッピングセンターの近くや街中のマンションも、運転免許証を返上するような年になると、移り住んでくるお年寄りが多くいました。寒冷地では、冬場に雪かきが不要ということで、一戸建てからマンションに移り住む人も多くいらっしゃいました。室内に段差もなく、マンションは確かに、高齢者に優しい住まいだと思います。
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