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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

マンション大規模修繕、長周期化は正解か 12年→18年へ

更新日:2023年6月28日



 2022年7月2日の日経新聞の表題の記事を紹介します。


「マンション住まいには身近な「大規模修繕」。12年程度で繰り返すのが一般的だが、18年周期などに間隔を延ばすことも増えている。6年の違いが、長い目では大きな費用差になるらしい。


外壁工事の足場がコスト要因

 大規模修繕とはどんな工事で、なぜ必要なのか。記者もマンション住まいだが、わかるようでわからない。コンドミニアム・アセットマネジメント(東京・中央)の渕ノ上弘和代表は「どんなマンションも基本的に経年劣化はする。特に外壁防水などは定期的に修繕しないと、住宅の基本機能が損なわれる」と話す。

 外壁工事は建物全体に仮設の足場をかけた大がかりなものとなるため、併せて他の部分も工事する。これが一般的な大規模修繕だ。その費用は人手不足などで上昇傾向。「そのコストを抑えようと考え出されたのが修繕周期を延ばす手法だ」(渕之上さん)



 確かにここ5~6年で、野村不動産パートナーズ、東急コミュニティー、三井不動産レジデンシャルと大手企業が相次ぎ「最長18年周期の修繕」の提案を始めていた。もっとも、基本的に自社系列の分譲マンションを長周期化の対象とする会社が多く、他社分譲もOKとする東急コミュニティーも、マンション管理受託が条件で、対応エリアなどにも一定の制約がある。


どんなマンションでも可能性あり

 どんなマンションも長周期化ができるわけではないのか。さくら事務所(東京・渋谷)の土屋輝之マンション管理コンサルタントは「適切な材料や工法を選び、大規模修繕の合間の中間補修もしっかり実施できるなら、どんなマンションも長周期化できる可能性はある」と説明する。

 記者のマンションも大規模修繕は1回数千万円かかる見込みだ。これほどの費用が不要になるなら所有者個人にも恩恵がありそうだ。期待が膨らんだが、土屋さんは「長周期化で、逆に上がるコストもある」と一言。どうやら甘い話ばかりではないらしい。

 長周期化する際は基本的に高い耐久性がある材料を使う。外壁防水に使う「シーリング材」などが典型だ。12年周期で使う材料より長持ちし、保証期間なども長いので高価格になる。結果的に「大規模修繕1回の費用は10%程度上がる」(土屋さん)。大規模修繕の周期が長くなる分、その合間に行う中間補修で行う項目も増え、その費用も加算されるという。



 長周期化のメリットはどれくらいか。土屋さんに総戸数50戸のマンションを例に試算してもらうと、エレベーターなど設備部分を除く「建築部分」で、60年間の総費用が1億円弱は低くなるとの結果だった。1戸約200万円の負担減となる計算だ。多くの所有者が年金生活となり収入が減る時期まで見通すと、この差が老後生活に及ぼす影響は小さくない。逆に12年周期では途中で積立金が不足し、高齢期に数十万円など多額の臨時徴収を迫られる可能性も。


60年間で費用14%削減

 「実は大規模修繕費用の約2割は足場のコストが占める。足場をかける回数が減る効果が大きい」(土屋さん)。野村不動産パートナーズや三井不動産レジデンシャルが一定条件を置いて行った試算でも、長周期化により60年間で総費用が14%程度削減できるとなっている。建物の個別事情で削減額には差があるが、長い目でみれば長周期化で総費用は減る例が多そうだ。

 長周期化の利点を知ると、逆に「なぜ今まで12年周期ばかりだったのか」という疑問がわいた。渕ノ上さんは「明確な周期の根拠はない」と教えてくれた。以前、防水材などは10年保証が多く、保証切れ後1~2年の調査などを経て修繕することは多かった。ただ、12年周期が定着したのは2008年に国土交通省が定めたガイドラインで修繕周期は「12年程度」と記載された影響が大きかったという。土屋さんも「ガイドラインは目安にすぎないのに、国の文書に書かれたことで『数字が独り歩き』した」と語る。

 そのガイドラインも21年の改定時、周期の記載は「12~15年程度」と書き直された。長周期化が追認されたような格好だ。ただ、渕ノ上さんは「今後は逆に『18年が当然』と思い込むのは避けたい」と話す。「12年から一気に18年に延ばせるとは限らない。まず15年程度の周期で計画し、実情を点検しつつ工事時期を決める方法もある」という。


大規模補修、必要性減りそう

 修繕の長周期化が進んだ背景には防水材などの技術革新がある。さくら事務所の土屋さんは「シーリング材のほか、塗料なども高耐久性のものが増えている」と話す。技術がさらに進化していけば、修繕周期も一段と延びていくかもしれない。

 それどころか、「いずれ『大規模修繕不要のマンション』が現れるかもしれない」(土屋さん)。多少の補修は必要でも、足場をかけた大がかりな工事の必要性は材料や工法の進化で徐々に薄れていくという予測だ。  今は夢物語のようでも、未来はわからない。例えば、今から60年前は、まだ分譲マンション黎明(れいめい)期で、当時マンションという住宅形態が700万戸に迫る規模に発展すると予見できた人は少なかっただろう。  今、18年周期の修繕を採用してコスト削減を実感するには60年程度かかる。その60年後には、もしかすると「昔のマンションには大規模修繕なんてものがあったんだ」と振り返る時代になるかもしれない。」


 大規模修繕工事を12年周期とした根拠は、国が定めた特殊建築物の定期報告制度においてタイル貼りのマンションについては、建築基準法施工規則の改正(2008年4月1日)によって、築10年を経過した外壁がタイル貼りのマンションは、築13年までに外壁の「全面打診調査」または「修繕工事」のどちらかを行うことが義務付けられたことによります。

 しかし実際に、築12年のマンションを見ると、まだまだ綺麗で、大規模修繕工事を行わなくても良いのでは?と個人的には思います。また特殊建築物にマンションが対象とされていない自治体も多く、私の経験では現状でも15年毎に大規模修繕工事を行うことでも別段問題ないと思います。

 一方私の担当した築18年のマンションの大規模修繕工事では、外壁塗装の劣化が激しく、またコンクリートのひび割れも多く発生しており、一刻も早く大規模修繕工事を行う状況でした。また、足場を建てて、外壁タイルの打診調査を実施したところ、大面積のタイル浮きも発見され、地震や台風等で、外壁の落下も懸念される状態でした。

 今回各社が提案している18年周期についても、単純に12年周期を1.5倍延ばして18年周期にしたようにしか思えません。確かに塗料やシーリング材を高耐久のものに変更していますが、何を根拠に18年なのか?納得のいく理由を示して欲しいです。

 確かに材料の高耐久化で修繕周期は長くなりますが、タイルの浮きや、コンクリートのクラックや爆裂による鉄筋のサビ発生等は考慮されていません。

 この記事にもありますが、15年前後の大規模修繕工事適齢期に、建物診断を実施し、組合員の同意のもとに大規模修繕工事を行うのか、もう少し様子見をするのかを判断するのが、一番納得性も高く、合理的です。外壁がタイル貼りか吹付か?立地が海の近くにあるか等で、マンションの修繕周期は当然に変わってきます。このままでは高耐久材料使用イコール18年周期だけが独り歩きしそうで怖いです。

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