2024年1月16日のLIFE LISTの表題の記事を紹介します。
「集合住宅に住む人にとって避けられない、大規模修繕。分譲・賃貸問わず、だいたい10~15年に一度のサイクルで行われます。経年劣化に対応するため定期的な修繕は必要ですが、いざ自分が経験するとなると、騒音、匂い、プライバシーなどが気になるもの…。どんな工事が行われ、入居者はどんな対応をすればよいかなどを知り、なるべくストレスを感じないよう過ごせればいいですね。そこで、今回は都内の賃貸マンションに住む私の体験をもとに、修繕告知から完了までの流れと、その間の対応方法についてお伝えします。
修繕内容は広範囲、工期は数ヶ月の長丁場
都内の賃貸マンションに住む私が大規模修繕を経験したのは、2023年です。工事開始の2~3ヶ月前、郵便受けを見ると大規模修繕のお知らせが届いていました。その数日後、建物の見取り図などを含む20ページほどの工事説明資料が配布され、そこには工程表や工事内容、住民への協力依頼内容、防犯対策案内、問合せ先などが記されていました。工期は4~7月の約4ヶ月で、作業は準備・後片付けを含め、月~土曜の朝8時~夕方5時半まで。在宅で働く私にとって、落ち着かない日々の始まりです。
外壁やエントランスの他、バルコニーなどの個人使用部分も対象
「大規模」という名の通り、工事対象範囲は幅広く、風雨にさらされる外壁や屋根をはじめ、さまざまな箇所が含まれます。一般的には以下の箇所が対象です。
【共用部分】外壁、屋根、バルコニー、手すり、給排水管(共用管)、エレベーター、共用廊下・階段、エントランス、オートロックやインターホン、宅配ボックス、機械式駐車場、フェンスなど。
【共用部分のうち専用使用部分(個人使用が認められている共用部分)】玄関扉(外側)、玄関ポーチ、サッシ及び窓枠、個人使用が認められているバルコニー及びルーフバルコニーの床や手すり、専用庭、専用使用駐車場、トランクルームなど。
おおよその期間と内容例
着工から工事完了までの期間は、50戸以下の小規模マンションの場合3~4ヶ月程度、50戸以上の大規模マンションなら4ヶ月以上はみておきましょう。工事の進め方の一例は下記の通りです。
工事の進め方一例
(1) 仮設工事足場や現場事務所などの設備を設置。足場の周囲を覆うメッシュシートは塗料の飛散防止や落下物防止が目的。工事終了まで設置されています。
(2)下地補修工事壁や天井などコンクリートの基幹部分に生じたひび割れなどを補修。
(3)タイル補修工事建物の耐久性、防水性、安全性や美観に関わる部分。作業員が足場に上り、すべてのタイルの状況を打診や目視によって確認し、補修。
(4)シーリング工事外壁のつなぎ目やサッシ周りに使用されることの多いシーリング材を補修。雨漏りなどを防ぐ目的。
(5)塗装工事(外壁・鉄部)鉄は扉や外部階段、手すりに使用されていることが多い。
(6)タイル・外壁洗浄高圧洗浄など。
(7)防水工事屋上やバルコニー、廊下など。
(8)クリーニング、足場撤去その他付随工事として、エントランスの改修、インターホンや玄関扉・サッシの交換、給排水管の更新・更生工事などがあります。
騒音、日当たり、プライバシー…私が不安に感じたこと
全体像がわかったとはいえ、私の住むマンションの場合、住民を集めた説明会はなく、資料のみの案内だったこともあり、工事前にはさまざまな不安が…。わが家は4階建ての3階部分にあります。部屋の場所や生活スタイル、家族構成によって異なるかと思いますが、私の場合は下記のことを懸念しました。・日当たり:足場を組んで、建物全体にシートをかけたら、風も通らず、日も当たらないのでは? 夏前の窓を開けたい季節なのに、暗い気持ちになりそう。・騒音:ドリルの音などは、どれくらいの大きさ? もしオンライン会議などに重なったらどうしよう。・洗濯物:洗濯物や布団は干せる? 乾燥機もあるけれど、特に寝具はしっかり干したい。・防犯対策:足場を伝って、不審者が入ってくることもあり得る? 防犯鍵が推奨されるということは、危険という意味かも…。・バルコニー:バルコニー床を張り替える間、物干しざおや植物の鉢、子どものおもちゃなどの置き場所に困る。・プライバシー:窓のすぐ外に工事の方がいるという生活が4ヶ月続く? カーテンを閉め切って過ごすのは気が滅入りそう。考えても仕方ありませんが、やはり気持ちはどんより…。
心配事があれば直接問合せ、またはご意見ポストへ
やがて、1階エントランスに移動式のホワイトボードが設置され、全室に対し、毎日の洗濯物干しの可否が提示されるようになりました。ホワイトボードの下には「工事用ポスト」も置かれ、質問や意見があればそこへの投函もOK。1人で不安を抱えているよりも、このように備え付けられたものを積極的に活用するといいですね。
設置された工事用ポスト。現場監督への直接問合せなどで、私も2~3回利用した
工事進行中のリアル体験談
気をもんでいるうちに、いよいよ工事スタートです。進行に応じて、郵便受けに案内が配布されるようになりました。まずは仮設工事から。困った点や思いがけず好都合だった点など、当時の体験談としてご紹介していきます。
【仮設工事】 注意点は音と人
1週間近くかけて、鉄骨の足場が1階から屋上まで組まれました。今思えば、外壁を剥がすドリル音の次に大きな騒音を感じたのが、この足場組み立て。鉄を打ちつけたり、鉄同士がぶつかったりするため高い金属音がします。あるときには、窓の外20cmくらいの距離にいきなり工事の方が! 慌ててカーテンを閉めました(苦笑)。至近距離での作業中は窓や厚いカーテンを開けられませんでしたが、工事の方がいなければレースのカーテンで過ごせました。足場が組まれた後にはメッシュシートがかけられましたが、案外、風通しは良いままです。日光が遮られ、全体的に暗くはなったものの、日当たりの良いわが家にとってはちょうど良い遮光カーテン代わりになり、意外と快適。しかし、反対に冬なら日光が遮られて、いつもより寒いのでは? そう思い現場監督に聞いてみたところ、冬はそもそも窓を開ける人が少ないため、工事自体が気にならない人が多いとのこと。季節によりますね。
工事の方と目が合うことも。今回使用されたメッシュシートは見通しが良く、メッシュシートがかけられても外がよく見えた
あらゆる工事に伴う騒音と振動
工事会社からの資料には、足場組み立て・撤去、コンクリート穴あけ、屋上防水、高圧洗浄などのタイミングで騒音や若干の振動が発生すると明記されていました。コンクリート穴あけは、一時的に70~80デシベルとなり、会話に支障があるレベルです。騒音の衝撃を受けたのは、仮設工事の後半のことでした。天井から大音量のドリル音が聞こえ、隣室の友人からも「真上の工事始まった!」とメッセージが。どうやら、屋上にある中庭の補修工事も並行して始まったようです。初回は、歯医者で歯を削られているようなドリル音が断続的に続きましたが、20分程度で終了。「ドリル音がするかも」と心の準備をしていても、やはりびっくりします。
工事中の建物外壁の一部
耳栓にイヤーマフ、その効果は?
外壁など、建物のあちらこちらにタイルは使われており、傷んだタイルを交換するにはドリルを使わざるを得ないよう。そこで、自室周辺で工事が行われる際は、買い物に出る、子どもの外遊びに付き添う、外でランチ、図書館に行く、などの行動を選ぶようにしました。オンライン会議があるときは自室内の違う部屋に移るつもりでしたが、幸運にも、そこまで騒音を伴う工事とタイミングが重なることはありませんでした。自室周辺での工事の際には、その間だけ外出するとしても、遠くで断続的にドリル音や金属音が鳴り響いているときもあります。窓を閉めても鈍い音と振動が伝わってきたため、耳栓などを試してみました。結果、通常の耳栓でも少しは騒音がましになりましたが、案外良かったのは、ワイヤレスイヤホンをオフにして耳栓代わりに使ってみるという方法です。耳が耳栓のようには圧迫されず、外部の音もやんわり小さくなります。しかし、それでも気になるときがあったので、急遽、騒音防止のイヤーマフを購入しました。商品によって性能は異なり、聴覚過敏の方や工場・工事現場で働く方も、用途に合わせて使っているそうです。コードがついていないヘッドホンのような形で、頭部に固定するため、耳が苦しく感じる人もいるかもしれません。説明書によると使用時間は1時間程度が目安。防音機能は一番良かったのですが、どうしても集中したいときなどを選んで使うことをおすすめします。
騒音防止用に使用した防音イヤーマフ
【下地・タイル補修工事】洗濯物は夜干し、コインランドリーでしのぐ
部分的に工事が進められた下地・タイル補修。日当たり、騒音に続いて懸案事項だった洗濯物については、干せない日があったものの、この工事段階では2日間以上続くことはありませんでした。とはいえ、工事の方が行ったり来たりする中で干すのは気が引け、汚れる可能性もあり、どうしても外干ししたいシーツ類やしわになりやすいシャツは、夜に干して朝8時の工事開始前に取り込んでいました。その点、暖かい季節で良かったと思います。もちろん、コインランドリーも利用しました。
防犯アイテム補助錠で二重ロック
防犯については、当然ながら要注意です。足場を伝えば、窓のすぐそばまで行くことができてしまい、工事会社からの資料にも「防犯上、施錠とカーテン閉めなどに注意。外出時と就寝時は特に注意」と書かれていました。安全を守るアイテムとして貸し出されたのは、窓に取り付けられる補助錠。サッシに設置し、ツマミを回すと窓が押さえられ動きにくくなるというものです。窓開閉のたびに取り外さなければならないという手間は増えますが、安心感は増します。貸し出しがない場合は、量販店で購入可能です。
補助錠の使用例
ちなみに、日中はマンションの管理人常駐で、工事の方は会社のロゴ入りベストを着ているため、部外者と区別しやすく、安心できました。
【外壁洗浄】盲点は汚れの飛び散り
工事開始から約1ヶ月半が過ぎ、外壁洗浄が始まりました。洗濯物が干せない日が増え、娘が毎日、エントランスのホワイトボードで、翌日の洗濯物干しの可否を調べるのが日課に。作業に差し障りがあるため、バルコニーに設置していた物干しざおや子どものおもちゃは室内や玄関に移動。どうしても自室内に置けない大型のものは、担当した工事会社の場合、その期間移動・保管してくれるとのことでした。なにしろ高圧洗浄なので、窓枠の隙間から水が入るかもしれず、「窓の内側にタオルや新聞紙をつめてください」と案内が配布されましたが、室内に水が入った形跡はありませんでした。
しかし、洗浄した部分はきれいになるものの、飛び散った泥や汚れが周りにはねます。4階部分の洗浄の際、自室がある3階の外廊下や窓ガラス、玄関扉に汚れがこびりついてかなり目立ったため、現場監督に報告。すると、翌日には拭き取られていました。気になることがあれば、少しでも早く解決することがストレスを溜めないコツですね。
【防水、シーリング工事】バルコニー補修で網戸も撤去
外壁洗浄の次には、バルコニーの補修が始まりました。この時点で、工事開始から約2ヶ月が経過。バルコニーの床が外され、防水処置が行われ、新しいタイル床シートを接着させる間、バルコニーは使えませんでした。窓の網戸が外されていることに気づいたのは、バルコニー補修中のある日のことです。まだクーラーなしで過ごす日も多く、窓を開けた際に網戸がないと全開になってしまいます。それでは困るので、現場監督に夜間は自分で戻していいか尋ねたところ、「作業員が作業します。冬だと皆さん気になりませんが、今の時期はよく問合せを受けます。なるべく早く網戸を戻せるようにします」との返事。言葉通り2~3日で網戸を付けてくれました。こちらも、確認してストレスが軽減された点です。
バルコニーには、透明の養生用ビニールカバーもかぶせられた
塗装や防水作業で材料独特の臭いがするときもありましたが、工事会社の資料によると、人体に害のない材料を選定しているとのことでした。
【クリーニング・片付け】足場が解体され、きれいな外観に
約4ヶ月間、梅雨や台風の影響もほとんど受けず、工事は予定通り進みました。遅れがあった場合は、本来休みである日曜や祝日に、音の出ない工事のみ行って取り戻していたようです。その際には、事前に案内がありました。足場解体と並行して、清掃が行われ、終了です。
大規模修繕無事終了! 「マンションは管理を買え」
もちろん不便はありましたが、終わってみるとそれほど大きなトラブルもなく、淡々と進んだ印象です。全期間を通じて思ったのは、たとえ細かい点でも、気にしていてはやはりストレスになるということ。特に、私のように在宅時間が長い場合、数ヶ月にも及ぶ工事の影響は大きくあります。工事の方はプロであり、これまでたくさんの現場でさまざまな問合せを受けてきたはずです。疑問や困ったことがあれば、円滑なコミュニケーションになるよう心がけながら、確認してみましょう。
季節は春から夏へ。3階の足場に、1階からつる植物が伸びてきた
そもそも、大規模修繕がきちんと行われているということは、管理状況が良いマンションだという証拠。「マンションは管理を買え」ともいわれているくらいです。引越しの際には、建物管理状況の良いマンションを選びたいものですね。もし、大規模修繕はなるべく避けたいという場合は、入居後少なくとも10年ほどはそのタイミングが巡ってこない、新築・築浅(3年未満)マンションを検討するのも一案です。」
実際の体験談だけに、工事中の様子がリアルにわかります。工事中に判らないことは、現場の担当者に直接問い合わせることで、工事中のストレスは随分少なくなると思います。是非参考にしてください。
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