マンション管理センター通信(2022年10月号)に、マンションの用法に関する相談が特集されていました。標準管理規約第12条第1項には「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と定められています。
しかし、コロナ過による在宅勤務や、多くの企業がテレワークに移行するなど、生活実態は標準管理規約と乖離している状況です。国土交通省が2021年3月19日に発表した「テレワーク人口実態調査」では、約64%の人がテレワークに総合的に満足しており、今後も実施したい人は約82%であったと報告されています。また、最近は「SOHO(ソーホー)」という住居形態も増えてきています。これは「Small-Office Home-Office」の略で、小規模事務所や自宅兼用事務所を指す言葉です。
相談1:テレワークしやすいようリフォーム工事
回答:標準管理規約第12条関係のコメントには「住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する」としています。このことから、生活の本拠がそこにあればリビングスペースを広くとっても、それは専ら住戸として判定される。としています。
規約に抵触しない例としては、個人で経営する設計事務所やマンション管理士事務所のように、そこに住んでいて、事務所として使用しても仕事関係の来客もなく、主にクライアント先に訪問して作業を行う場合。このように住戸に平穏さが保たれていれば認められます。
テレワークであっても、その部屋に勤務先の人が通勤してきたり、不特定多数のお客様が頻繁に出入りする場合は認められません。
相談2:通信販売を開業したい
回答:主婦などが行う、一般的な内職やインターネットを利用した個人のサイドビジネスなどは、ほかの住戸に特に影響を与えるものでなければ認められる。
華道、茶道、書道などの伝授は、少人数の者を対象とする場合には問題ないが、規模・人数によっては、平穏さに問題があるとして求められないケースもある。
塾やピアノを教授するような場合は、規模・人数・授業の時間帯や周囲の状況などによって難しいケースが多い。
いずれにしても、住宅としての使用方法として何が認められ、何が認められないかは一概に決められないので、個々のマンションの事情を考慮して、そのマンション毎に判断する必要があります。また、その時の理事会役員によって判断が異なると大きなトラブルにもなりますので、用途制限に違犯する営業類似行為の判定基準を、管理規約または使用細則に定めておくことが望ましいと考えます。
この記事を見てのポイントは、居住実態があることと、生活の平穏さにあるようです。私が住んでいるマンションでは「住居として使用し、テレワーク等、来客を伴わない事業を行う場合は使用することができる。」という項目を標準管理規約第12条に追記する予定で、規約の見直しを行っています。
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