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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

マンション建て替えに1世帯5千万円「絶対無理だ」 増える老朽物件

更新日:2023年6月8日



 2022年10月30日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


「川崎市内にある小田急線の柿生駅から徒歩15分ほどの、閑静な住宅街にあるマンション(築28年、19戸)。今年5月、将来の建て替えを検討し始めた。

 きっかけは理事会。2回目の大規模修繕工事が控えていた。

 40代の住民から「テラスハウス型のマンションで、一般的な設備ではないため、修繕費用がかさむ。将来に向けて建て替えも検討すべきでないか」との意見が出た。管理組合は、専門業者にシミュレーションを依頼した。

 すると、示されたのは驚くほど高額な金額だった。

 建物を解体して、新たに建て直すためには、概算で約9億円。19世帯で分割すると、1世帯あたり約4740万円が必要と算出された。

 「建て替えはもともと難しいと感じていたが、これほど高価とは」。理事長男性(69)は振り返る。

 住民は60代前後が中心で、年金暮らしの高齢者も多い。「建て替えなんて絶対無理だと感じた」

 容積率に余裕があれば、建て替え時に床面積を増やして余剰分を販売することで、住民の負担は減る。だが、このマンションの場合、もともと容積率いっぱいに建てられていたため、増やすことはむずかしい。最寄り駅からも遠いため、マンションの販売価格が低く、収益化は難しいと判定された。

 建て替え金額のすべてを住民が負担する必要があり、「建て替えは、一番厳しいパターンの相談」との回答だった。

 この管理組合のコンサルタント業務などを行う「メルすみごこち事務所」(東京)の社長でマンション管理士の深山州さんは、「住民から建て替えの意見が出ることは珍しくないが、ほとんどのマンションでは資金面で現実性がないのが現状だ」と話す。

 国土交通省の調査では、建て替えが済んだマンションは2020年4月時点で254件(約2万戸)にとどまる。一方、築40年超のマンションは、21年末時点で約116万戸ある。


国は対策、でも残る課題

 国は、分譲マンションの建て替えや売却を円滑に進めるため、住民の合意要件の緩和などの制度改正を重ねてきた。

 民法上、売却には所有者全員の同意が必要だ。この要件が、売却が進まない要因になっているとして、国は「敷地売却制度」を14年に新設。自治体が耐震性不足と認定したマンションについては特例として、所有者の「5分の4」の合意で売却できるよう要件を緩和した。

 また、現在、建て替えをする場合は5分の4、取り壊しは全員同意が要件だが、法制審議会(法相の諮問機関)では、所有者の多数決で議決する要件の緩和を検討している。

 だが、不動産コンサルティング「さくら事務所」(東京)のマンション管理コンサルタント、土屋輝之さんは「建て替え要件を緩和してもどれだけの効果が生み出せるのか疑問。最大の課題である費用負担を解決しないとなかなか難しい」と指摘する。

 「確かに、再開発地域などにあって、容積率の大幅な緩和などによって従来の総戸数の3~4倍を建築できるような場所であるなど、限られた条件のマンションでは効果はある」とする一方、「圧倒的な多数を占める一般のマンションでは、そもそも合意要件がネックになっていない。緩和しても、全国レベルで建て替えが進むことは基本的に考えにくい」と土屋さんは話す。

 敷地にゆとりがあれば、建物の容積を大幅に増やして新たに生まれる住戸を分譲し、その利益で建設費をまかなうことができるが、都市部の多くのマンションではそうした余裕はなく、建て替えにかかる費用は所有者で負担する必要がある。平均の負担額は増加傾向にあり、所有者1人あたり1千万円以上だ。

 さらに、老朽化したマンションでは、現在の高さ規制や容積率などが建設時より厳しく、現状では法的に「既存不適格」になってしまうこともある。交通省によると、こうした物件は1970年以前の建設では約6割にのぼる。こうした物件は、再建すると小さくなり、各戸面積は狭くなり、解体・建設費の住民の持ち出しが大きくなってしまう。

 敷地売却制度も、ディベロッパーに売却する仕組みなので、敷地に価値がないと買い手は現れず、立地が良いことなどが条件になる。


取り壊し、だれが責任を持つのか?

 建て替えや取り壊しが進まなければ、マンションがスラム化し、放置される問題もでてくる。

 最終的に、誰が責任を持って取り壊すのか。

 住宅政策に詳しい大阪経済法科大学の米山秀隆教授は、「マンションは一戸建てと比べて解体費用が高く、共同所有であるため、終末期段階でその処理にだれも責任を持たなくなる傾向がある。分譲マンションという居住形態が生まれた当初から、時限爆弾のようにあらかじめ組み込まれた問題といえる」と指摘する。

 国交省の推計では、築40年超のマンションは、40年には404万戸にまで増える。今後、老朽化したマンションの修繕や建て替えが大きな問題になり、対策をとらなければ、廃虚化したマンションが取り残される可能性もある。住民が取り壊しができず、行政が税金を使って代執行する事態も増えてくる可能性があるという。

 「解体費用の積み立てを義務づける、固定資産税として事前徴収する、行政の解体費用の補助金制度を創設するなどの検討は必要だ」と米山教授は指摘する。」


 この記事にもあるように、マンションの建替えは非常にハードルが高いです。建替えがうまくいっているケースでは、容積率に余裕があり、新築によって出来た余剰面積で住戸を追加販売することで、既入居者は無料で新しいマンションに入れると紹介されますが、そのような条件に合致するマンションは都心のごく一部のマンションです。築40年超マンション116万戸に対して、建替えが住んだマンションが254件(2万戸)という数字が物語っています。

 ほとんどのマンションでは記事にあるように、既存マンションの解体費と新築費用を負担しなければ、マンションの建替えなど不可能です。この記事ではその費用が4740万とされていますが、もっと厳しく見積もっても3000万円程度は必要になると思います。

 マンション建替えとなると築60年超の物件です。30歳で入居しても世帯主は既に100歳近くの年齢に達しており、その子供も60~70代ということであれば、普通であれば、もうどこかに住居を構えていると思います。そのような世代の人が、古いマンションを建て替えるでしょうか?

 敷地売却制度等を使って、デベロッパー等に土地を売却し、土地代を解体費用に充てて、残りのお金を専有部の持分割合で分けるというのが一番現実的ではないかと思います。


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