2021年12月10日の日本経済新聞の表題の記事を紹介します。
「政府は分譲マンションの建て替え条件を緩和する検討に入る。所有者の賛同割合の引き下げなどを柱に区分所有法の改正をめざす。建て替えやすくして老朽化マンションの増加に歯止めをかける。2022年度にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する。
建て替えに必要な賛同を現在の「5分の4」から、共用部の変更や管理組合法人の解散などを決める場合と同じ「4分の3」かそれ以下に引き下げる内容を軸とする。相続などを経て連絡がつかなくなった「所有者不明」の区分所有者は一定の条件下で意思決定から除外する案も議論する。
分譲マンションは一般に区分所有する所有者らでつくる管理組合で建て替えなどの重要事項を決議する。同じ土地で建て替える場合、区分所有法に基づき所有者の5分の4の賛同が必要になる。
不明な所有者がいると意思決定に必要な条件を満たしにくくなり管理に支障が生じる。
建て替えのほかにマンションの敷地を一括して不動産会社などに売却して代金を分け合う「敷地売却」という選択肢もある。この場合は原則、所有者全員の同意が必要だ。1戸でも所有者が不明だとマンションの再開発が事実上不可能になる。
国土交通省の推計によると20年末時点のマンション675万戸のうち築40年を超える物件は103万戸ある。これが40年に405万戸まで膨らむ見通しだ。103万戸の4分の1ほどが都内に集中しているとみられる。
日本は人口減少局面にあるものの都内などへの人口流入は当面続くとの見方は多い。そのため東京カンテイ(東京・品川)の井出武上席主任研究員は「都心部にある物件の相当数で建て替え需要がある」と分析する。
大人数で1つの建物を所有するマンションの建て替えは手間のかかる事業だ。これまでも敷地売却を含む建て替え条件の厳しさは問題視されていた。管理組合で議題にしても合意を得られず、ひとまず建物の延命措置でしのぐところが多いとされる。
旭化成不動産レジデンスが05年に手掛けた東京都新宿区のマンションの建て替えの場合、所有者の合意形成が難航し、検討から着工までに30年以上かかった。
不動産業界からは「災害の多い日本で老朽化マンションを放置するのは危険だ」と危惧する声も上がる。
長谷工コーポレーションはこの40年で40棟ほど建て替えた実績があり、潜在的な需要は多いとみる。三井不動産は「安心で安全な住まいの再生に向けて建て替えを検討する管理組合の後押しにつながる」と決議要件の賛成率の引き下げに期待を寄せる。
経済界の要望を踏まえ、法務省と国交省が中心となって3月に有識者研究会を設置。具体案の議論を始めていた。
研究会では所有者のなかの少数派の意見への配慮を手厚くするよう求める意見もある。法制審への諮問案のとりまとめに向け、年内に会合を開いて詳細を議論する。
建て替えが進まない背景に管理組合の機能不全もある。大規模マンションの場合、管理組合の総会の出席率は1割程度とされる。
長年の所有者と投資目的の購入者の間で利害がかみ合わない例もある。居住者にとって建て替え中の住居費といった自己負担も重くのしかかる。
国交省の調べでは築40年以上の物件で連絡できなかったり所在地が不明だったりする所有者の発生率は4%に達するという。円滑な意思決定ができなければ老朽化したまま放置されるマンションは増えかねない。
国交省が自治体などからの報告で把握しているマンション建て替え事業の実施件数は19年度は全国で10件、20年度は9件にとどまる。政府は20年7月に閣議決定した規制改革実施計画でも所有者不明土地対策の観点から建て替え要件の緩和を盛り込んだ。」
建替えの合意を5分の4から、4分の3に減らした意義は大きいですが、それ以上に敷地売却についても全員同意から4分の3に減らしたインパクトが大きいと思います。
記事にもある通り、建て替え組合を結成して建替え事業を行うより、大手デベロッパーと組んで建替え事業を行う方が、管理組合も負担が少なく、スムーズに運ぶケースが多いです。立地の良い土地に建っている古い分譲マンションは、一度デベッロッパーにマンションを売却して、引き続き住みたい人は、再度新しいマンションを購入するという流れが、今後のマンション建替え事業の主流になってくるのではないでしょうか?
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