検索
  • 快適マンションパートナーズ 石田

マンション管理組合が、紛糾しがちな「総会」を成功させるための合意形成術



 2019年6月3日のダイヤモンドオンラインの株式会社シーピーアイ代表取締役須藤桂一さんの表題のブログを紹介します。


マンションの総会はなぜ紛糾してしまうのか?

 マンション管理組合の仕事は多岐にわたるが、中でも「総会(集会)」の開催は重要な業務の1つだ。区分所有法によって、管理組合は最低でも年に1回、「総会(集会)」を開催することが義務づけられている。一般的なマンションの管理規約では、会計年度の終了後、2~3ヵ月以内に通常総会を実施することが定められているが、4月から翌年3月を会計年度としているマンションが多いため、5月と6月は通常総会が集中する時期といえる。

 総会は、管理組合における「意思決定の最高機関」だ。企業の「株主総会」にあたると思えばいいだろう。総会ではさまざまな議案について審議されるが、総会に議案を上程するには、理事会での決議が必要となる。

 マンションによっては、大規模修繕委員会や規約改正委員会などの専門委員会を設けているところもあり、その場合は各委員会からの具申を受けて、理事会でその内容を検討し、作成した議案を総会に上程する、というステップを踏むケースが多い。そうして理事会や専門委員会で練った議案が、総会ですんなり通れば何も問題はないのだが、そうそう簡単な話ではない。特に、修繕積立金や駐車場使用料の値上げなど、区分所有者の負担が増える議案では、総会が紛糾することもしばしばだ。

 なぜそんな事態に陥ってしまうのだろうか。それは、「合意形成」がうまくできていないからだ。


「文鎮型組織」の管理組合を動かすのは至難の業

 マンションの区分所有者によって構成される管理組合は、社長を頂点とする企業と違い、ヒエラルキーのない「横並びの組織」である。理事会は、そんな「文鎮型組織」の代表なのだ。「横並びで力関係も平等なら、容易に動かせるのではないか」と思われる方もいるかもしれないが、それは誤解だ。実は力関係がないからこそ、文鎮型組織を動かすのは非常に難しいのだ。

 理事会の運営スタイルは、理事長をはじめ、理事の顔ぶれによって左右される。

 例えば、サラリーマン時代の経験を生かして、独自路線で推し進めようとするパワフルなリタイア組がいたり、バリバリとご自身の仕事も頑張っている現役組がいたり、あるいは会社勤めといった社会経験がない方など、その背景はさまざまだ。

 余談だが、私はこれまで数多くのマンションで理事の方々とお会いし、たくさんの総会に出席してきた。そこでもさまざまな人と出会い、いろいろなドラマを見てきたが、十人十色どころか、百人百色といっても大げさではないほど、人間とは実に多様で、ある意味、動物園よりも百倍おもしろい。動物もいろいろな種類がいるが、人間のほうがもっとさまざまなタイプがいて、よっぽど興味深いのである。この仕事を通じて一番勉強になったのは、何よりも人間の多様性が理解できたことかもしれない。


 合意形成に話を戻そう。

 総会には、時にはわがままな意見を主張する人が出てきて、その意見に振り回されてしまうこともある。百人百色の人がいる管理組合という組織を動かし、合意形成を図るためには、その手続きを踏むための手法や戦略が必要なのだ。

 特に、修繕計画などに関する大きな方向転換や、住民の多くが関心を持っている事案について賛同を得るには、この手法や戦略が非常に大切なのである。


合意形成を図るための4つのポイント

 ここから、いくつかポイントをあげて説明していこう。


1.広報活動

 総会が紛糾する原因の1つとして、「広報不足」が挙げられる。総会に重要議案をいきなり上程すると、議論が巻き起こり、最終的に否決されてしまうケースも少なくない。

 理事会としては、専門委員会やプロジェクトチームとともに「長い時間をかけて議論を重ねてきた上で上程した議案なのに…」と納得のいかないところもあるだろう。

 しかし、理事同士は問題を共有していても、区分所有者はその問題を認識できてない状態にある。そこへ突然重要な議案を出されれば、事情を知らない区分所有者にとっては「寝耳に水」状態で、心理的に反発を招いてしまうのだ。


 区分所有者に議案を冷静に受け入れてもらうためには、まず「なぜ、それをする必要があるのか」「それをする目的は何か」ということを明確にして、彼らにも問題を認識してもらう必要がある。その動機を共有するためには、広報活動が欠かせない。

 理事会の議事録を毎回公開することはもちろんだが、可能であれば、定期的な広報誌の発行を行うことをお勧めしたい。広報する内容は、マンション管理に関係した内容だけにする必要はない。

 例えば、地域の祭りや行事、近隣の花火大会や観光スポット、お勧めのレストラン情報など、どんなことを載せてもいい。大切なのは、定期的に広報誌を発行するという点だ。

 そして、重要な議案があるときには、総会の数ヵ月手前から複数回、議案やそれに関する情報を掲載するのだ。そうすることで、事前に議案を周知したという証拠にもなる。また、理事会にはアカウンタビリティー(説明責任)があるので、こうした情報発信によって理事会の活動を広報できるとともに、その透明性を伝え、理事会がしっかり機能していることのアピールにもつながる。

 理想的なのは、住民が配布されるのを楽しみにするような広報誌にできることだが、いきなりハードルを上げることはない。A4サイズの用紙1枚でもいいので、少なくとも年に数回、理事会の活動やマンション周辺の情報などを紹介する広報誌を発行してみてはいかがだろうか。

 このような広報活動を継続するためには、理事会の中に広報担当理事を置くといいだろう。私たちがコンサルティングをさせていただいているマンションでは、広報担当理事を置いているところが多く、いずれも良質な広報活動ができているように思う。

 理事会の取り組みの真剣さが伝われば、区分所有者の意識もおのずと変わってくるものだ。地道な広報活動によって、管理組合や理事会の活動に関心を持つ区分所有者が増え、それが総会や説明会の出席率にもつながることになるので、ぜひ積極的に情報発信を行っていただきたいと思う。


2.説明会

 重要な議案や複雑な議案を上程する場合には、説明会の開催は必須である。

 大きな改革を行うときに、「機が熟す」のを待っているだけでは何も動きださない。たいていのマンションでは、理事は任期1年の輪番制か2年で半数改選となるため、物事を動かすためにはスピード感が重要になる。「機を熟させる」ために行うのが説明会だと理解すればいいだろう。


 説明会は総会の予行演習にもなるし、仮に理事会の方向性が間違っている場合には、そこで反対意見などが多く出てくるので、議案の作成について軌道修正を図ることもできる。説明会を行うことで、周知徹底を丁寧にしたという証拠にもなる上、区分所有者の「ガス抜き」の場になるという効果も無視できないだろう。

 私たちがコンサルティングをさせていただいているマンションでは、通常総会ですら、開催の1~2ヵ月手前から総会説明会を開いているところもあるほど、説明会を重視している。

 総会でも説明会でも、「議論が足りない」とか「もっとみんなで考えるべきだ」などという言葉が必ず出てくる。まるで、国会における野党のような反応である。しかし、前述したように、任期の短い理事会で改革を進めるには、スピード感が大切だ。そうした言葉に惑わされないように、総会でしっかりとしたかじ取りをするためにも、説明会はきわめて重要になってくる。

 説明会を開催する際には、できれば口頭での説明だけでなく、資料を用意したり、スライドを使うなど、丁寧な説明を行うことが望ましい。開催時期や回数、資料の有無などは各理事会の判断で進めればよいことだが、特に総会に重要な議案を上程する場合には、ぜひ説明会の開催をお勧めしたい。


3.アンケート

 私は20年ほどこの業界にいるが、これまでに管理組合の区分所有者や居住者に多くのアンケートを仕掛けてきた。実は、このアンケートは彼らの意見を集約するためではなく、理事会で決めたことを啓蒙するための手段として活用してきたのだ。

 例えば、これまで1万円だった修繕積立金を3割値上げする議案を上程したいとしよう。3000円値上げして、1万3000円にしたいわけだ。その場合、修繕積立金の値上げ額に関するアンケートには次のように記載する。

 (1)3割の値上げで1万3000円  (2)5割の値上げで1万5000円  (3)7割の値上げで1万7000円

 大幅な値上げを望む者はいないので、この数字を見れば、誰でも(1)の1万3000円を選ぶだろう。そうして、区分所有者の意見を集約した結果として、「修繕積立金は3割値上げして1万3000円とする」という議案を上程することができる。

 アンケートをする場合、どんな回答が多くなるかということはだいたい予想がつく。それを逆手にとって、得たい回答に落ち着くような質問を挙げればいいのだ。そういうと、意見の誘導のように感じる方もいるかもしれないが、これは1つのテクニックである。

 理事会や専門委員会、プロジェクトチームでは、議案を作成するために時間をかけて検討や議論を重ねるが、一般の区分所有者は当然そのレベルには達していない。その状態の区分所有者に、いきなり高いレベルの意見を求めるのは無理というものだ。

 それに、アンケートを集計して、その意見によって物事を決めるというのであれば、理事会や専門委員会は不要になってくる。問題が発生したら、その都度、区分所有者全員が集まって話し合えばいいだけのことなのだ。それができないからこそ、理事会や専門委員会があるわけだ。

 だから、荒っぽくいってしまえば、アンケートを本来の意味で考えるなら、区分所有者へのアンケートは必要ない。アンケートをしたところで、想定した回答が返ってこない可能性が高いからだ。

 それを理解した上で、合意形成の戦略としてアンケートを実施することをお勧めする。「区分所有者の民意を反映した」という証拠としても、アンケートを利用することが正しいやり方だというのが私の考えだ。重要な議案を上程したり、大きな改革をする場合には、区分所有者に事案の重要性を啓蒙し、彼らの意見を望ましい方向へ誘導するためにも、ぜひアンケートを活用していただきたいと思う。


4.専門委員会・プロジェクトチーム

 反対意見が出ることが予想される事案、議案検討に時間を要する事案、あるいは専門的な知識が必要な事案などの場合は、それに特化した専門委員会やプロジェクトチームを設置するといいだろう。

 例えば大規模修繕工事や管理規約の改正は管理組合の大きなテーマだが、短期間で理事が入れ替わる理事会レベルで検討を進めたことで、間違った方向に行ってしまうケースを数多く見てきた。任期の短い理事にとっては負担の大きなテーマであり、どうしても楽な方法や簡単に決定できる方法を選択しがちなのだ。

 もちろん、専門委員会やプロジェクトチームを作っても、彼らも間違った方向に進むケースはあるのだが、その場合は理事会がそれを牽制する働きをするので、やはり重要なテーマについてはそれを継続的に検討する機関を設けるべきだろう。

 その場合、委員やチームのメンバーには、ぜひ「あめ」を用意してほしい。

例えば、ほんの少しでいいので会議費として予算をとって、昼や夜の食事時をまたいでの会議の際には弁当を出すのである。年に数回、缶ビールや乾き物を用意し、集会室で「飲みニケーション」をする場を設けてもいいだろう。1回あたりの予算は1000~2000円程度でいいのだ。

 あるマンションでは、専門委員会の委員になると、理事になる輪番をスキップできるという取り決めにしている。つまり、理事の順番を免除されるというユニークな「あめ」だ。

 いずれにしても、マンションのために働いてくれる委員やメンバーが、気持ちよく活動できるようにすることがポイントだ。「自分たちの活動が認められている」という雰囲気の中で、委員やメンバーの方々に議論をしてもらえれば、きっといい結果につながっていくことだろう。


理事会の運営を成功させるポイントは「仲間作り」と「人間力」

 以上、合意形成を図るためのポイントを4点挙げたが、総会の議事をスムーズに進めるために、これらの手法はとても大きな原動力になる。

 そして、理事会がこうした手法をとるために大きな助けとなるのが「仲間作り」だ。

 ぜひ、「こんなマンションを目指しましょう」という合言葉を作って、仲間を集っていただきたい。何を目標とするのか、なぜそうする必要があるのか、という思いを共有し、それを1人ひとりが自分自身の課題としてとらえ、アイデアを出し合って協力し合う組織を目指していただきたいのだ。

 そのためには、個々の「人間力」も大切になってくる。「○○理事長のためなら」とか、「○○さんの考えには共感できるから」といった人と人とのつながりや思いが、「だから一緒に頑張っていこう」という意識に結びついていくからだ。

 総会を成功させるためだけでなく、日頃の理事会活動を円滑に行うためにも、理事会を応援・支援してくれる仲間を作ることが重要だ。理事同士だけでなく、その思いを区分所有者にも広げて、1人でも多くの仲間ができるように工夫を重ねることが、理事会活動の大切なポイントになる。

 そういう理事会の姿勢が、やがてはマンション全体のコミュニティーの意識を高め、それがマンションの資産価値の向上にもつながってくると私は思うのだ。



 重要な項目を討議する場合には、議事録の配付やアンケートの実施・説明会の開催はとても重要だと思います。私がいま大規模修繕工事のコンサルタントを行っているマンションでも、議事録での周知が充分できておらず、一部の組合員から、理事会が独断で何をやっているのか判らないとの苦情が出され、組合員への定期的な説明会を開催し、不信感の払しょくを行いました。このブログにあるように、マンションの入居者は様々です。物事を決める際にも、独断にならず、皆さんの意見を聞いて決めたという意思決定の手順を踏むことは確かに重要だと思いました。


5回の閲覧0件のコメント

最新記事

すべて表示