私の住んでいるマンションは、ペット飼育不可のマンションです。ところが、犬と猫を多頭飼いしている入居者がいて、近隣の住戸は臭いと抜け毛の被害を訴えており、なおかつペットを飼っている入居者が苦情を訴えても聞く耳を持たないということもあり、今期の理事会では、裁判も辞さないということで、総会には弁護士費用の計上が上程されました。
ただし、この予算が承認されたからと言って、直ちに裁判が提起される訳ではありません。
標準管理規約第66条には義務違反者への処置として「区分所有者又は占有者が建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、区分所有法第57条から第60条までの規定に基づき必要な措置をとることができる。」あります。
そこで区分所有法を見ていると、区分所有法第6条には「区分所有者及び占有者(賃借人など)は、建物の保存に有害な行為や、その建物の管理又は使用に関し、共同の利益に反する行為をしてはならない」とあり。
区分所有法第57条:共同の利益に反する行為の停止等の請求で
「区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前三項の規定は、占有者が第6条第3項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。」とあります。
今回のケースでは、ペットを飼わないことが該当します。申し入れをしても従わない場合には、第2段階として、第58条専有部分の使用禁止請求が出来ます。
具体的には、
「前条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第1項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
2 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
3 第1項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
4 前条第3項の規定は、第1項の訴えの提起に準用する。」とあります。
ただし訴訟にあたっては2項にあるように総会の特別決議が必要です。その際、3項にあるように義務違反者には弁明の機会が与えられます。
裁判において原告勝訴の判決が下された場合、被告である区分所有者は相当な期間にわたって専有部分を使用できなくなります。家族も使用できなくなります。ただし、他人に賃貸することは許されます。
このように裁判にあたっては、まだまだ様々な手続きが必要です。
区分所有法59条には区分所有権の競売の請求も定められており、
「第57条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第57条第3項の規定は前項の訴えの提起に、前条第2項及び第3項の規定は前項の決議に準用する。
3 第1項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。」との条文もあります。
最も悪質な義務違反者に対しては、最後の手段として、訴えをもって区分所有権及び敷地利用権を強制的に競売することを請求することができます。
共同生活のルールを守れない入居者に対しては、このようなルールが定められていることも理解しておきましょう。
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