
2022年10月28日の東洋経済オンラインの表題の記事を紹介します。
「分譲マンションにはランニングコストがかかる。主なコストの1つが管理費、もう1つが修繕積立金だが、この2つのコストに異変が起こっている。まず管理費を見ると、新築と中古の差が開いているのだ。
新築マンションの管理費のm2単価は、この10年ほどで3~4割上昇している。上昇要因の最たるものは人件費の高騰だ。管理費のm2単価は分譲価格の単価と比例する傾向にあるので、高額物件ほど管理費単価は高くなる。2013年以降、相場が7割ほど上がった分譲マンション市場では、管理費も値上がりしている状況にある。
中古マンションの管理費が上昇していない
ところが、中古マンションの管理費のm2単価は、ほとんど上がっていない。管理会社から値上げ要請を受けていることは間違いないが、値上げをするには管理組合の承諾が必要になる。その合意が取れず、管理のサービスレベルを下げたり、管理費の競争入札を行って、管理会社の変更を辞さずに対応してきたりした結果と思われる。
そして管理会社の中には、値上げをのんでもらえないマンションの管理を受けない会社も出てきた。赤字になるくらいなら、やらないほうがましだという判断である。
次に修繕積立金について見ると、管理費をほぼ値上げしていない中古物件でも修繕積立金は2010年に1m2当たり100円ほどだったものが、2022年には180円ほどになっている。8割の値上がりである。
最大の要因は建築費の高騰にある。大規模修繕の主たる業務は建設会社が行う。2012年の第2次安倍政権発足以降、震災復興や公共工事の復活や東京オリンピック開催が決まり、建築コストは大幅に上がった。同じ建設会社が行う業務であるため、大規模修繕の当初の想定費用は大幅に上昇し、当初の積立金では賄えないからこその値上げではある。
要約すると、中古マンションでは管理費はサービスレベルを下げて費用を維持し、修繕積立金は値上げしている。このことに私は違和感を禁じえない。というのは、管理サービスのレベルダウンは生活の質を落とすことになるのに、大規模修繕は当初の計画を守っても資産価値が上がることはないからだ。私なら、管理費は多少上がってもサービスレベルをなるべく保ち、修繕積立金はなるべく増額を避けて最小限の投資ですませたい。
新築の一部で修繕積立金が下がっているカラクリ
修繕積立金については、もう1つ異変がある。新築マンションのm2単価が一部の物件で下がっていることだ。なぜか。
そもそも修繕計画に対して積立金が十分な設定になっている新築マンションはないに等しい。なぜなら、販売をする際に管理費と修繕積立金の2つのランニングコストが高いと買える人が少なくなり、販売にマイナスの影響が出るからだ。毎月の支払い額=住宅ローンの月返済額+管理費+修繕積立金であり、これが1万円高いと35年で420万円高い物件を買っているのと同じになる。
実は管理費を新築時に低く抑えることは、管理会社との取り決めでやりにくい。とくに大手マンションデベロッパーの場合、管理を委託するのがグループ内の管理会社になるので、グループの収益を圧迫することになるから、管理費は現状の適正価格に設定せざるをえない。
実際、同じエリアで同等の価格でありながら、新築の管理費のm2単価が中古の倍近くになっていることもある。都心では新築と中古で、同じ面積でも月の管理費の支払い額が3万円以上違う例も出てきた。
他方、修繕積立金については、多額の出費を伴うのが竣工から12年後で、主に建設会社への発注になるので、マンションデベロッパーの腹が痛むことはない。
このため、新築を売りやすくするために修繕積立金を低く抑え、数年後に不足が発生することが発覚したかのように装い、値上げを提案するということをずっと続けてきた。最近のm2単価の値下げは、新築の価格高騰による負担を和らげるための悪質なだましと考えられる。
管理費や修繕積立金は、多額の費用を入居世帯で割る形で求められるので不明瞭になりやすいうえに、1人では決められない。この判断を誤ると無駄なコストを払うことになる。マンションの購入を検討する際には、管理費・修繕積立金は専有面積で割ってm2単価を算出し、比較することをお勧めする。そして、月の返済総額(=ローン返済額+管理費+修繕積立金)を比較することだ。
大規模修繕で資産価値は上がらない
最後に修繕積立金の予算不足について私見を述べたい。これは、『マンション「大規模修繕」を予算内に抑える方法』に書いている。大雑把に言うと、大規模修繕は資産価値を上げないので、資産価値を落とさない程度に最小限に留める方法を専門家と協議したほうがいいと考えている。
そもそも大規模修繕は共用部の劣化防止であって、売買される専有部の資産価値には反映されない。現状の劣化具合を把握し、防水や防錆などはやっておかないと快適な生活が脅かされる可能性がある。
そこで必要性・緊急性で優先順位を決めて、その順番で予算の限りで進めていけばいい。大規模修繕計画の12年周期の大工事などのタイミングは目安でしかなく、その見極めが重要なので、専門家の第三者のチェックをしてから進める対応を実施したほうがいい。修繕積立金不足には必要性の低い工事の先送りで対応するという方法もあることを覚えておいてほしい。」
この記事にもある通りマンションに住んでから必要な費用の主なものは「管理費」と「修繕積立金」です。既存マンションでは新築マンションにくらべ「管理費」が安く、「修繕積立金」が高いとありますが、この記事の中で抜けているのが、「管理費」は管理会社へ支払う費用で、払えば無くなりますが、「修繕積立金」は、今後のマンションの修繕等に積み立てる費用で、マンションの管理見合の貯金であり、積み立てれば組合の資産として残るという点です。マンションに住む人の意識としては、同じ金額を払うのであれば、後々残る修繕積立金を多めにしたいのは、当たり前のことだと思います。
ましてや、大規模修繕工事を実施しても、中古のマンション価格は上がらないからほどほどの工事内容で良いという書き方は、マンションを終の棲家として考えている人とは、相容れない記事の内容だと思います。
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