先日新聞で1戸191億円の分譲マンションがニューヨークで発売されたニュースがありました。ニューヨークでは今、スレンダービルが多く建てられ、ニューヨークの景観が変わってきているそうです。スレンダービルが多く建てられている理由を示す記事がネットにありましたので紹介します。
「天高くそびえる高層ビルの形状が意味するものは、希望と成功の結晶なのか? それとも資本のうぬぼれがもたらした現代版バベルの塔なのか?
ビル群はコミュニティを支える支柱なのだろうか?
20世紀に広まった建築様式のなかでも、摩天楼ほどに比喩の文脈で読み解かれてきたものはない。天高くそびえる高層ビルの形状が意味するものは、希望と成功の結晶なのか? それとも資本家のうぬぼれがもたらした現代版バベルの塔なのか? 時代がめぐり、世界が移り変わるなかで、摩天楼の威容が見る者の胸にもたらす響きもまたさまざまに転調してきた。フェミニズムの高まりのなかでは、そびえ立つその姿は男根崇拝の神体としか見えなかったし、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件の後では、あまりにも孤立無援の構造体に見えてしかたがなかった。そうして近ごろ、超高層ビルがもつ象徴としての意味合いがまた変わろうとしている。しかもその変化はこれまでとは違って時代の変転ではなく、建築技術のブレイクスルーによるものなのだ。
超スレンダーな高層ビルというものが生まれたのは、いまから10年ほど前、摩天楼の聖地ニューヨークでのことだ。建築物の細長さの指標になるのは「スレンダー度」、あるいは「塔状比」とされるが、建物の幅と高さの比率が1:10を上回る、それこそ塔のような形の高層ビルが建設可能になってきたのだ。現実のスレンダー高層ビルには1:10の基準をはるかにしのぐ細さのものも珍しくなく、9.11テロで倒壊したワールドトレードセンターのノースタワーが1:7だったのに対して、マンハッタンの西57丁目に建設中の高さ435メートルとなる予定の「スタインウェイ・タワー」にいたっては1:24という驚きの細さとなっている。いっぽう西53丁目に完成間近の「53W53」は高さ320メートルとだいぶ低いが、1:13というスレンダーぶりで存在感を主張している。また、オーストラリアのメルボルンでは75階建ての「エリジウム」というタワーが、市内のサウスバンク地区に建つ予定で、建設許可も下りている。BKKアーキテクツという現地企業が設計したこの高層ビルは高さが244メートルで、もっとも細い部分の幅はわずか12メートルだという(塔状比1:20)。
ニューヨークのマンハッタンには、完成済みのものや建設中のものを含めてこうした超スレンダーな高層ビルが林立しているエリアがあり、セントラルパークの南側の西57丁目を中心とするその一帯が、いつしか「ビリオネア・ロウ」と呼ばれるようになった。億万長者通りという意味だ。かつては高層ビルといえばオフィスビルと相場が決まっていたわけだが、時代が変わり、ビリオネアたちの需要に応じて豪奢な超高層集合住宅が築かれるようになったのだ。それらはいずれも、セントラルパークが眼下に広がるロケーションの良さや、マンハッタン島をふちどるハドソンとイーストの両河川、そして大西洋までをも見わたす眺望を売りにしている。
過密都市にもラグジュアリーな住まいをそんな声から生まれたスタイル
こうした超スレンダー高層ビルが生まれた背景には、先にも述べたように都心部での高級不動産物件への需要の高まりがある。過密都市マンハッタンの中心部には大規模なオフィスビルを新たに建てるだけの土地はなかなか出てこないが、高層住宅を建てるくらいの土地なら見つかりやすい。そうした事情から、従来の高層ビルの常識では考えられないほどに細長いビルが出現しはじめたのだ。
その裏には主にふたつの要因がある。ひとつは、土地区画の法規制によるものだ。ニューヨークには建造物の高さ制限がある。マンハッタンが近未来サイバーパンク映画のような超高層ビルの密林地帯になってしまうことを防ぐための規制だ。けれども「空中権」という概念があり、隣接する区画の空中権を購入して積み上げていくことで、摩天楼の代名詞である1930年完成のクライスラー・ビルディングを上回るような高さのビルでも建設できるのだ。
そしてもうひとつの要因は、建設技術のイノベーションだ。摩天楼の最大の敵は風である。建築家たちは風の流れを計算し、ひどい振動を巻き起こす風の渦が発生しないように工夫を凝らさねばならなかった。しかし、長年のうちにコンクリートの化学組成が飛躍的に進化し、はるかに少量のコンクリートではるかに巨大な重量を支えられるようになってきたのだ。
でも、そんな最先端技術で築かれる高層ビルであるからには、建設費もべらぼうに高くなってしまうんじゃないかと思う人もいるかもしれない。確かにそれはそうで、超スレンダー高層ビル群には目玉が飛び出るような予算が投じられている。2015年6月に計上された「スタインウェイ・タワー」の建設費は6億7800万ポンド(約1000億円/1ポンド=147円換算)だった。それでも不動産デベロッパーたちは、82階建てのコンドミニアムの息を呑む眺望を考えれば、一戸あたり最大1200万ポンド(約18億円)の販売価格でも完売するに違いないと自信たっぷりで、販売価格の総額はじつに11億5000万ポンド(約1700億円)にもなるのだという。
そんな夢のような超スレンダー高層ビルにも設計上の悩みの種がある。それはエレベーターシャフトが占有する床面積だ。技術のイノベーションでビルはスリムにできても、エレベーターシャフトを小さくすることはできないから、ビルを細くしすぎると、居住性に問題が生じるのだ。それでも、超スレンダー高層ビルという新たな潮流は土地に制約のあるマンハッタンという街と相性がよく、人口の0.1%のビリオネアたちのために、夢のような高層邸宅が次々に建てられている。
戦中戦後の英国首相ウィストン・チャーチルはかつてこう言った。「われわれは建物を形づくる。すると今度は、建物がわれわれを形づくる」。この発言にあるように、私たちの価値観や生活習慣は住環境に影響される部分が少なくない。」
地震の多い日本では、このような塔状比が1:20のようなビルを建設することは、なかなか難しいと思います。記事にもあるように、まとまった大きな敷地が確保できない中、1住戸20億円超でも販売できるとなれば、地震の少ない世界中の都市で、同様のスレンダービルが今後も増えてくることが予想されます。
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