
2022年6月14日の日経アーキテクチャーの表題の記事を紹介します。
「鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造による3層飛ばしのメガストラクチャーの内側に木造の構造物を入れ子状に組み込む──。平和不動産が東京・日本橋兜町に建てたハイブリッド木造ビル「KITOKI(キトキ)」は、高層木造建築の新たな形を示している。
2022年6月に開かれたKITOKIの見学セミナーには、建築設計者など約500人が詰めかけた。国内初となるメガストラクチャーのハイブリッド木造ビルに、多くの建築関係者が熱視線を注いでいる。

平和不動産が東京・日本橋兜町に建てた「KITOKI」。10階建てのハイブリッド木造ビルだ
建物は10階建てで、最高高さ約34.5m。延べ面積は約790m2だ。22年4月に竣工し、5月末に内装工事を終えた。設計・施工はADX(福島県二本松市)が担当した。同社は20年2月開業の複合施設「K5(ケーファイブ)」で平和不動産と協働した経験を持つ。
KITOKIはSRC造と木造のハイブリッド構造。おおよそ1m角の柱と梁(はり)せい1~1.3m程度の梁で構成されたSRC造のメガストラクチャーが建物全体を支える。メガストラクチャーの柱スパンは南北方向に約6.4m、東西方向に約5.6m。高さ約10mの層が3つ重なった巨大な構造体だ。
その内側に木造の構造物を挿入して、各層を3フロアに分割する。メガストラクチャーの内側は計9フロアになる。建物の内部には、SRC造の空間と木造の空間が混在する。

SRC造によるメガストラクチャーの内側に木造の構造物を入れ子状に組み込んでいる。メガストラクチャーの柱は南北方向1スパン、東西方向2スパンだ(資料:ADX)

7階の天井には木の梁が現れる。天井高は約2.8m、梁下で約2.3mだ。KITOKIの2階、4階、7階は家具などを入れた状態で貸す。内装デザインはparkERs(パーカーズ、東京・港)が手掛けた

6階にはSRC造によるメガストラクチャーの梁が現れる。天井高は約3m
木造の構造物はメガストラクチャーの土台の上で自立しており、建物全体の構造を負担しない。そのため木造部分は実質的に低層木造建築と見なすことができる。実際にKITOKIの木造部分では、梁のピッチを約910mmにするなど木造住宅の伝統的なモジュールに近づけている。高層木造ビルに木造住宅のノウハウを適用できるという点で、これまでの高層木造建築とは一線を画している。
発注者と設計者が語る「KITOKI」誕生のロジック
KITOKIは平和不動産にとって初めてのハイブリッド木造ビルだ。同社を含む3社が兜町の新しいランドマークとして建てた複合施設「KABUTO ONE(カブトワン)」の隣に立つ。22年12月に完成する予定の東京メトロ茅場町駅との接続通路からエスカレーターで地上に出ると目の前に見える位置だ。
「KITOKIは小ぶりな建物だが、街の第一印象をつくる重要な場所に立つ。そこで『地球環境に優しい、低炭素の街づくり』など、当社が掲げる街づくりへの思いを反映させた建物にしようと考えた」。平和不動産開発推進部の伊勢谷俊光課長は、木造ビルを計画した背景をこう話す。
木造建築を得意とするADXも高層木造建築を手掛けるのは今回が初めてだ。同社で代表取締役を務める安齋好太郎氏は、メガストラクチャーによるハイブリッド木造という構造形式にたどり着いた道筋を次のように説明する。
「建物が長期的に使われるためには、竣工した後に内部空間を時代に応じて変えられるかどうかが大事な要素になる。時間を経ても変化しない『強い骨格』と、木造ならではの変化できる『弱い構造』を組み合わせた建築がつくれないかと模索した。たどり着いた答えがメガストラクチャーだった」

木造の構造物は減築や増築ができるようになっている。ニーズに合わせて内部空間の構成を変えられる(資料:ADX)
建物をSRC造による「強い骨格」と木造による「弱い構造」に分けた背景には、低層木造建築の組み合わせで高層木造建築をつくるという考えもあった。そうすれば、低層木造建築のサプライチェーン(供給網)を構成する既存プレーヤーを、高層木造建築にも起用できる。これは高層木造建築をつくるうえで「強力な武器」になる。
データを見よう。国土交通省の建築着工統計調査によると、21年に着工した建物の総延べ面積は約1億m2強。階数別で着工面積に対する木造の割合を見ると、1~3階建ての低層建築は約7700万m2のうち65%以上が木造だ。一方で、4~15階建ての中高層建築は約2400万m2のうちわずか0.1%にも満たない。
木造建築のノウハウは、低層建築をベースに普及している。しかしこれまでの高層木造建築は、高層専用の新しい木造技術を開発して、適用するものが少なくなかった。
KITOKIが実践したメガストラクチャーによるハイブリッド木造は、構造上はどんなに階数を増やしても、材料の調達から設計、施工、将来的なメンテナンスまで、低層木造建築で普及している方法を活用できる。「既存のプレーヤーでつくれる方法を考えていかなければ、高層建築の木造化率は伸びない」(安齋氏)

KITOKIの南側低層部。秋田県産のクリの木を丸太のまま化粧梁として使用した。また1~3階のSRC型枠には屋久杉を数値制御(NC)加工機で加工した木型枠を使い、柱を凹凸のあるデザインにした
とはいえ、課題も垣間見える。木材関係者によると製材の歩留まりは丸太に対しておおよそ50%、高層木造建築でよく使われるCLT(直交集成板)は約35%だ。建物には木材使用量の2~3倍程度の原木が必要になる。一般的にコストが高くなる傾向にある高層木造建築に、柱と梁の断面寸法が大きいメガストラクチャーを採用すると、それだけコンクリートや鋼材の使用量も増し、必然的に総コストが上がる。
平和不動産の伊勢谷課長はこう話す。「KITOKIはまだ竣工して間もないので建物としての評価はこれからだ。借り手企業の引き合いの強さや入居するテナント企業の利用状況を踏まえ、次の展開を考えていく」
KITOKIが切り開いたメガストラクチャーのハイブリッド木造という構造形式は、今後発注者に選ばれていくのか。結果が見えてくるのはもう少し先だ。」
今回の木造ビルは、建物の構造自体はRC造とし、その中に2階建ての木造建築を造るハイブリット建築です。木造部分はビルの構造体ではないので、比較的自由に改造が出来ます。今後のリフォーム等も考えた場合には、良い工法のように思います。
最近は木造のビルも増えてきました。今後も注目していきたいと思います。
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