2023年5月28日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。
「後ろめたい気持ちが、少し和らいだ。「不要品持ち込みスポット」に1月末、実家にあった金属製ラックを車で運んだときのこと。男性スタッフから「これは便利に使えそうですね」と声をかけられた。財布やメモ帳などの小物の仕分けにと、亡き父が長く愛用していた。まだ十分にきれいでも私には使い勝手がいま一つで、もらってくれそうな知人は思いつかない。捨てるにはもったいないし、そのまま置いておくのも場所をとる。ネットで調べ、東京都世田谷区が地域情報サイトのジモティーに運営を委託する、このスポットにたどりついた。持ち込みは区民限定の予約制で、次の人が「気持ちよく使えるもの」かどうかが基準になる。この日は、果実酒などを漬け込むほぼ新品の瓶二つや、子どもだった自分が何十年も前に使った白い棚をきれいに拭いて、持ち込んだ。木製で重めの引きだしがスムーズに出し入れできるかどうか、スタッフが確認してくれた。スポットの一角が、いわば「店」になっている。ベビーカー、椅子、衣装ケース、ゴルフのクラブや電子ピアノなど、家にあるような品々がまさによりどりみどり。どれにも値札がついている。区民がここに持ち込んだ「不要品」と、区が収集した粗大ごみの中から「気持ちよく使えるもの」が商品となる。500円、3千円、6千円など金額はさまざまで、0円で譲られるものも少なくない。必要としてくれる持ち主に出会ってくれたらと願って、思い出のあるラックと棚を見納めにした。 目立つ「使えるごみ」 世田谷区のスポットは粗大ごみを減らすことを目的に、まずは実験として2021年秋に始まった。コロナ禍に多くの人が家の片付けを進めたこともあり、この年、区の粗大ごみ収集量は年9千トンを超えた。10年間で2割以上も多くなっている。粗大ごみの中には、壊れて役立たないものだけでなく、使えるものが目立っていた。ごみが増え続けると、税金でまかなう処理費用はかさんでいくばかり。捨てるより、だれかに再び利用してもらうリユースの選択肢こそ、ごみ減量への早道と考えた。 実験期間とした今年3月までの1年半に、およそ4万5千点が持ち込まれ、97%は次の持ち主に渡ったという。区は委託費をジモティーに支払うが、「商品」の売り上げが伸びれば区の収入も増える。 5月の平日の午後、区内の別の場所に引っ越したばかりのスポットに足を運んだ。ギターの弦をはじいたりキャリーバッグを開け閉めしたりして、使い心地を確かめる人が次々に来る。私は、1月に持ち込んだラックや棚が「店」で売れ残っていないかと見渡した。「この場所になければ、どなたかの手に渡ったということですよ」。女性スタッフが教えてくれて、ほっとする。 スポットを利用した人に感想を尋ねたアンケート(複数回答)でも、回答した170人のうち130人が「捨てるのはもったいないと思っていた気持ちが解消された」を選んだ。 なかなか遠い「自分ごと」 家にいながらネットでものを買える時代、粗大ごみの減量には、多くの自治体が頭を悩ませているのだろう。世田谷区のような施設の運営までいかなくても、ジモティーと啓発などの協定を結ぶ自治体は、さいたま市、愛知県豊田市、京都市、高松市、北九州市など全国で100に広がる。 人口のおよそ6人に1人、月間利用者が2千万人のフリーマーケットアプリ大手のメルカリには、岩手県山田町や兵庫県西宮市、徳島市など13自治体が出店している。 人口7万8千人の愛知県蒲郡市は、1年前の「ごみゼロの日」の5月30日から月1回、「まだ使える粗大ごみ」を売っている。高止まりする粗大ごみの量を減らそうとする姿は、世田谷区と重なる。 私がいま暮らす名古屋市から東へ電車を乗り継いで1時間あまり、遠くに海をのぞめる市のクリーンセンターを訪ねた。粗大ごみ集積場の上の階にある面積100平方メートルの部屋が、メルカリ向けの出品を待つ保管庫になっている。ここにも机や車いす、ベビーカー、健康器具、コーヒーメーカーやランドセルなどが、いっぱいに置かれていた。 今年3月までの10カ月で49品、9万2800円分が売れた。5月に出品したレトロ感漂う和風の9段引きだし(1900円)や文机(1700円)は、3日目に買い手がついた。 旗振り役の鈴木寿明市長は「メルカリの知名度は大きい。販売実績の多い少ないではなく、市民が『自分ごと』としてごみを減らそうという行動へ、変えていくことにつなげたい」と力を込める。 ただ残念ながら、中学生から80代までの市民20人あまりと話すと、「メルカリへの出店」の認知度は高いとは言えなかった。「市の広報紙で読んだ」という3人は「目的なんて、よくわからない」との答え。30代と40代の母親2人は「みんながよく行く公園でリアルのフリーマーケットを毎月開いたほうが、アプリをいちいち見るより関心を持つのに」とうなずきあい、大半の人は「聞いたことない」との反応だった。 運び出しのお困りごとにも だれかに使ってもらいたいと思っても、大きく重い家具や家電を玄関先まで動かすのはけっこう大変で、一人暮らしや高齢者には壁が高い。複数の買い取り業者が一括査定し、不要品の売却ができるネットサービス「おいくら」に寄せられる自治体の悩みの一つに、「粗大ごみを運び出してほしい」という住民の声に応え切れていないことがある。 運営するマーケットエンタープライズによると、予算をほぼかけないでできることにも関心は高く、自治体との協定は今春以降にぐんと増えて、横浜市や大阪府東大阪市など40近くになった。 運び出しニーズに悩んでいた愛知県一宮市では4月、協定を結んでからの20日間で、市のホームページを経由しての査定依頼は19件、家具や家電など48点あったという。粗大ごみとして捨てる前に「おいくら」を通せば、価格が見合った店に売ることができ、行政では手が届かない自宅内からの引き取りも出張買い取りで解決してくれる。 手放す人は後ろめたさを引きずらず、買い手は物価高の中でも「必要品」がそこそこの価格で手に入る。蒲郡市のメルカリの店への書き込みに多く並ぶのは、「良い物を残して下さりありがとうございます」といった、粗大ごみへの感謝の言葉だ。 知らないままやり過ごそうとしても、捨てたほうが手っ取り早いと流されそうになっても、いま一歩立ち止まり、「粗大ごみ」を「ありがとう」と感じられる存在へ、互いに気持ちよく変えていけるのなら。少しずつでもごみが減り、もっと上手に税金を使う道にもつながっていくように思う。」 先日見たテレビ番組で、断捨離で家の中を片付けるのを、捨てるのが勿体ないと拒んでいた人が、誰かがもらってくれて、喜ぶ姿を見て、断捨離を進んで行うようになったという内容の番組がありました。子供服を知り合いにあげたところ、喜んでくれたので、積極的に着れなくなった子供服を、他人にあげるために処分したというような内容でした。
リサイクルは環境にも良いことであり、尚且つ、あげた人からも喜ばれるのであれば、積極的に活動する人も増えると思います。
マンション内の活動でも、不用品を持ち寄って必要な人が利用できるような、同じような取り組みが出来ないかと思います。
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