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人口減でも「マンション家賃10%上昇」のなぜ 首都圏だけでなく大阪市、福岡市などで家賃高騰

執筆者の写真: 快適マンションパートナーズ 石田快適マンションパートナーズ 石田

更新日:3月12日



 2024年11月7日の東洋経済オンラインの表題の記事を紹介します。


「家賃が高騰している。これは東京や首都圏だけの話ではなく、大阪市、福岡市など全国的に集客力のある都市はほぼ同じ傾向にある。

 J-REIT(日本版不動産投資信託)の投資家向け資料には、その実数が出ている。入居者が変わって、同じ部屋の前回賃料と今回賃料を比較したものを「賃料変動率」と言う。住宅系大手のアドバンス・レジデンス投資法人(以降、アドバンス)は2024年7月期の決算資料で、賃料変動率は9.8%と発表した。

 これは同じ部屋なので、平均入居期間4年とすると、築年が4年古くなっているのに、約10%値上がりしたことを意味する。この中にはリノベーションされたものもあるが、それは一部で、これを除いても9.6%になる。


東京23区は12.4%、全国的に値上がり傾向

 アドバンスの賃料変動率をエリア別に見ると、東京23区では12.4%と最も高いが、首都圏でも8.9%、九州(多くは福岡県)で7.8%、関西で4.5%となっており、名古屋市の-3.0%以外すべてプラスで、全国的に値上がり傾向である。

 同じ住宅系大手のコンフォリア・レジデンシャル投資法人(以降、コンフォリア)も過去最高の賃料変動率の9.9%になったと発表している。エリア別には、東京23区では10.3%と高いが、首都圏でも15.7%、関西で2.7%となっている。

 この賃料変動率は賃貸住宅の稼働率を反映して決まる。稼働率は需給バランスの結果である。J-REITの物件の品質と運用能力は市場全体よりも優れているので、稼働率はアドバンスで96.5%、コンフォリアで96.8%となっている。

 賃貸市場全般では、日本賃貸住宅管理協会によると、2012年度の首都圏の稼働率は90.3%、関西圏が92.8%だったが、2022年度の稼働率は首都圏が95.8%、関西圏が94.9%となっており、コロナ後の市場回復を考慮すると今年度は2022年度以上となっていることは間違いない。

 この稼働率水準では家賃は上がるが、稼働率が90%程度では賃料変動率はマイナスであった。賃料上昇と下落の分岐点は稼働率で93%付近である。


人口減少しても日本中で世帯数は増える

「人口減少していて、空き家が多い国で新築の住宅着工が多すぎる」という論調はよく聞くが、素人考えで、私はまったく逆だと分析している。まず、人口が減少しようが、家族形態の変化や単身者の増加により、日本中で世帯数は増えているし、当面の間増え続ける可能性は高い。住宅ストック数が供給ならば、需要は人口ではなく、世帯数なのである。

 特に都市部の世帯数の伸びは大きく、国立社会保障・人口問題研究所(以降、社人研)の2015~2020年の世帯数増加率予測の伸び率は全国で1.45%予測に対して、実績は4.45%で306%(約3倍)違うし、東京都も同様に3.46%予測に対して、実績は7.86%で227%(約2.3倍)も違っている。

これを実績ベースで検証してみよう。都区部における2013~2018年の間の需給バランスは、新規供給は年2.1%あり、滅失(ストックを建て壊すもの)が年1.1%ある。滅失とは木造や鉄骨造であればおよそ30年で、鉄筋コンクリート造では50年で市場性を失い、解体することを指す。相続した築40年の実家を人に貸すことができるかと言ったら、難しいほうが多いだろう。そうしたことだ。

 新規供給は年2.1%から滅失年1.1%を引いた1.0%を世帯数が上回れば需要過多、下回れば供給過多になる。この間の実績は1.1%だったので稼働率が上がった。2015~2020年の国勢調査期間での世帯数の増加は1.6%まで上がっているので、明らかな需要過多となり、稼働率がさらに上がっている。コロナ禍に需要が減退したものの、コロナ後の世帯数の伸びは年率1.9%となった現在、さらに賃料が上がっているのだ。


世帯数予測を当てるには

 先ほどの社人研の世帯数増加率予測は年率0.7%で、実績は1.6%だった。予測の0.7%は需給が一致する1.0%より小さいので、この予測を信じれば需給は緩み、家賃は下がるはずだった。

 これに対して、実績の1.6%の場合、家賃は上昇することになる。たかだか5年先のことなので、世帯数予測はほぼ当てなければならない。私は仕事で人口予測をするが、誤差を少なく当てることができる。なぜなら、5年に1回のデータしかない国勢調査に頼らず、毎年・毎月発表される住民基本台帳人口を用いて予測しているからだ。

 2015年の国勢調査でも発表されるのは2017年頃になる。この2年経過した状況を住民基本台帳で把握すれば、予測期間は3年に縮まる。また、5年に1回のデータと毎年のデータでは5倍精度を上げることができる。予測は「当たれば官軍、外せば賊軍」なので、どんな手を使っても当てなければデータ提供先に迷惑がかかる。

 稼働率が上昇している中で、新築の住宅着工は増やさないと、私たちは解体直前だった数十年の汚れと以前住んでいた人の独特の臭いがしみついた古い家に住むか、今よりも高い家賃の家に住むはめになる。私は今のニーズに合った新築をたくさん建てたほうがいいと考え、デベロッパーやハウスメーカーに供給過剰を心配するくらいたくさん建てることを推奨している。


家賃の高騰は今後も続くか

 2013年に始まった異次元な金融緩和は不動産や株などの資産はインフレさせたが、目標だった消費者物価指数の2%上昇は起きなかった。賃金上昇もない中、実質賃金は緩やかに下がり続けた。そんな中で、マンション価格はほぼ2倍になり、家賃まで大幅上昇を始めている。

 今起こっている家賃の高騰は需給が緩まない限り、収まることはない。供給過剰になるには建築費の高騰が逆風となってかなり難しい。需要の減少は若者の実家離れと外国人の流入がこれまで以上にある状況では望み薄である。

 こんな状況において、賃貸はコストが増えているだけでキャッシュフローは悪化でしかない。一方、持ち家を購入すれば家賃並みの支払いが増額する心配もなく、資産をインフレさせることができる。現状の価格水準は高いが、今後も資産インフレが見込める状況では下がり始めるタイミングで売ることも視野に入れておけば、家賃以上の出費になることは避けられる。」


 首都圏の新築マンションの平均値が1億円超となり、また新築物件も減る中で、持ち家を持てなくなった層が賃貸マンション等に入居し、結果賃貸物件の家賃も値上がりしている状況です。都会に住む住民にとっては、ますます住宅難民化している状況であり、国は何らかの対策を打つ必要があると思います。


 
 
 

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