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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

人口減の地方でも「マンション好調」のカラクリ



 少し古いですが、2019年12月16日の東洋経済オンラインに表題の記事が載っていました。


10月13日、倉敷駅前のホテルの宴会場はいつになく賑々しかった。地元の新聞社やテレビ局はもとより、倉敷市長や地元議員、商工会議所会頭、果ては倉敷市のゆるキャラ「くらいふ」までが一堂に会した。式典終盤の鏡開きを終えると、割れんばかりの拍手が巻き起こった。

 会場となったホテルから道路を挟んだ向かい側では、大型マンションの建設が始まっている。式典は、この工事の着工を祝うために開かれた。


地方都市でタワマンが完売

 もともとは古い戸建てや商店、駐車場などが密集していた地域だ。「(商店が)一軒やめ、二軒やめ、どんどん寂れていった。何とかしないとという気持ちがあった」(市街地再開発準備組合で理事長を務めた小寺惠美子さん)。

 計画では177戸のマンションや152室を有するホテル、商業施設が誕生する。事業主である旭化成不動産レジデンス西日本営業部の齋藤淳氏は、「倉敷市では最大級だ」と意気込む。倉敷市にとっても、駅前活性化の起爆剤にしたい考えだ。

 地方での人口減少が叫ばれて久しいが、旭化成不動産レジデンスはこれまでも地方都市でのマンション開発を数多く手掛けてきた。滋賀・草津駅前の26階建てタワーマンションは竣工前に完売した。和歌山駅前のタワーマンションも好調だ。戸建て文化が根強かった地域でも、マンションが普及しつつある。

不動産経済研究所によれば、首都圏1都3県および近畿圏2府4県を除いた地域のマンション発売戸数は、2018年は2万2216戸だった。リーマンショック以前の毎年4~5万戸には及ばないが、ここ数年横ばいが続いている。デベロッパーは首都圏とは異なる方法で需要を捉え、マンション開発にいそしむ。

 マンション業界で大手の野村不動産は近年、地方都市でのマンション開発を加速させている。開発エリアの基準は新幹線停車駅があるほか、人口が20~30万人規模であることだ。

 マンションにも小売店と同じように「商圏」が存在する。筆頭はマンションが建つ市区町村を中心とする人口規模で、各社は20~50万人、少なくとも10万人を一つの基準に据えることが多い。

 宮城県塩釜市。中堅デベロッパーのフージャースホールディングスは4月より、この地で全63戸のマンションを販売している。廣岡哲也社長は「(塩釜市に)ほかのデベロッパーは手を出さなかった。われわれも社内で議論を重ねたが、財閥系のような大手にはできない役割があると思い挑戦した」と話す。塩釜市の人口は、11月時点で5.4万人を切った。それでも駅徒歩3分という立地や、市内は起伏が激しく戸建てが坂の上にあることから、平地に建つマンションの引き合いは強いという。


需要が「溜まる」

 同じく東北地方の秋田県横手市。中堅デベロッパーのタカラレーベンは10月に全54戸のマンションの販売を開始した。2020年6月に竣工した暁には、市内ではおよそ10年ぶりの新築となる。

 マンションを開発する際、商圏と同じくらい重視されるのが、その地域にマンションの需要が「溜まっているか」だ。横手市の人口も11月末時点で約8.9万人と、やや心もとない規模ではある。それでも、過去10年間新たにマンションが販売されていないことは、逆に言えば新築マンションを欲する声が高まっている可能性もある。

 事実、2011年に横手駅前に建設されたマンションは現在でも中古で取引されており、タカラレーベンはマンションに一定の需要があると踏んだ。加えて豪雪地帯である横手市は、「雪かきの苦労から解放されるために、戸建てからのマンションへの買い換え需要がある」(同社)。足元では資料請求やモデルルームへの来場といった反響も多いという。前述の塩釜のマンションも、「市内では11年ぶりの新築で、需要が溜まっていた」(フージャース)。

 マンションは自営業者や公務員、士業など地方都市に住む高所得層からの引き合いが強い。その地域で有力な企業を経営する「地元の名士」たちからは、中心部にそびえたつマンションを持つことは一種のステータスであり、最上階の1億円超えの部屋が真っ先に売れていくことも珍しくない。

 他方で、マンション業界を悩ませるのが、建築費をはじめとするマンションの原価上昇だ。首都圏を中心にマンションを供給する中堅マンションデベロッパーの社長は、「ファミリータイプなら建築費だけで2700~2800万円もかかる。この数年で500万円以上も上がってしまった」と頭を抱える。人手不足がより深刻な地方都市の場合は職人を遠方から呼び寄せるコストもかさむため、首都圏同様に建築費の高止まりが続く。

 それでも事業が成り立つのは、多くのマンションが「再開発」の手法を取っているからだ。大きな土地を購入してマンションを建設するのに対して、再開発は開発エリアの地権者をまとめ上げていく。建設したマンションにはもともと住んでいた地権者が入居し、残った部屋(保留床)をデベロッパーが買い取って分譲するのが一般的な流れだ。開発までには長い時間がかかるが、駅前など一等地にマンションを建てることが可能だ。


「補助金抜きには厳しい」

 それ以上に魅力的なのが、再開発に対して交付される「補助金」だ。2019年1月に岡山駅からほど近い場所に完成した21階建てのタワーマンションの場合、総事業費75億円に対して21億円の補助金が交付された。エリア周辺の道路を拡幅したり、市民が自由に利用できるスペースを整備したりするなど、街づくりに協力することへの対価という位置づけだ。

 冒頭の倉敷市での再開発においても、総事業費157億円のうち、71億円が国や市からの補助金だ。本来マンションは高さを積むほど事業性が高まるが、美観地区を抱える倉敷市は景観保護の観点から建物の高さ制限を設けており、マンションは10階建てが精一杯だった。再開発コンサルティングの担当者は、「再開発に対する補助金は総事業費の3割程度が一般的だが、景観条例によって事業性が限られることを考慮し、今回は4割以上交付された」と話す。

 首都圏でマンションを多く分譲する大手デベロッパーのマンション事業担当者は、「地方都市では補助金抜きにはマンションを建てられない」と打ち明ける。また、通常は土地を購入してからマンションを販売するまでに2~3年はかかるのに対し、再開発では増えた分の部屋を買ってからすぐに販売に移れるため、資金回収のタイミングが早いことも見逃せない。

 とはいえ、地方都市でのマンション事業は「自然災害への強さや交通アクセスを始めとする利便性が評価されている一方、需要に限界があるエリアも多く、厳格な精査が必要」(中堅デベロッパーのマリモ)。前述のタカラレーベンやフージャースも、不動産投資や公共施設の運営受託など事業の幅を広げており、売上高に占めるマンション事業の割合はかつてより小さくなっている。

 地方都市でのマンション分譲で多数の実績を残してきた大京の小島一雄社長は、「マンションだけでは今後心もとない。新たなビジネスを考えていかないといけない」と危機感を募らせる。足元の堅調ぶりは、次の一手を編み出すための猶予期間でもある。


 地方都市にも確かに一定のマンションニーズはあります。戸建てと違い庭の草抜きや、維持管理のための手間が不要ということで、一戸建てではなくマンションを住宅として購入する方も多くいます。また上階は眺望も良く、転売もしやすいため、お金持ちが資産やステータスとして購入される方も多い傾向です。

 地方行政も、最近はコンパクトシティの推進も含めて、事業者に補助金も出し、市街地再開発の一環として、店舗・ホテル等と一体化して、分譲マンションが建設されるケースも増えてきています。四国でのマンション化率は香川県で6%、他の3県は3%代であり、地方都市の街中には、マンションはまだまだ建設される余地が高いと思います。

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