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人口減少社会の日本で、不動産価格が上がり続けるのはなぜか 

執筆者の写真: 快適マンションパートナーズ 石田快適マンションパートナーズ 石田

更新日:2023年9月21日



 2023年2月17日のJB PRESSの表題の記事を紹介します。


「日本は10年以上前から人口減少が始まり、空き家問題が取りざたされるようになった。しかし、新規住宅着工戸数は10年以上80万~100万戸の間でほぼ横ばいで減る傾向を見せていない。

 その中にあって、都市部の家賃は上昇し、マンションや戸建ての分譲価格は高騰している。一般的に価格は需給バランスで決まると言われているが、現実には真逆のことが起きている。

 なぜ全国の不動産価格は高騰しているのか。また、当面の間、不動産価格が上がると予測されるのはなぜなのだろうか。そのあたりについて聞かれることは少なくないが、そのメカニズムは意外に簡単に説明することができる。

 確かに、日本の総人口は減少している。少子高齢化に突入しており、出生人口は死亡人口より少ない。その中で、働き手となる生産年齢人口(15-64歳)は2015~20年の5年間で227万人、年平均45万人減少している。定年を迎える人口よりも、働き始める20歳前後の人口の方が常に少ない状態だ。

 ただ、それが分かり切っていることだからこそ、日本は外国人労働力を流入させてきた。現に、在留資格を持つ外国人は急増しており、コロナ前は16万~19万人の流入超過である。

 この他にも、安倍政権以降、女性と高齢者の社会進出が進み、就業者は増えた。それもあり、近年では就業者の減少は年間20万人程度で収まっている。

 GDP(国内総生産)は働いている「人数×労働生産性」で説明がつく。このように、あの手この手で働き手を増やして経済活動を下支えしているのだ。

 以上のことから分かること、それは日本では慢性的な人手不足にあるということだ。


人口が減る一方で増え続ける世帯数

 新卒の求人倍率を見ても、リーマンショックの後は1.23まで下げたのに対して、コロナ禍でも1.5を割ることはなかった。求人倍率の1.5とは1人に対して1.5社が採用意思を持つ状態である。

 こうなると、新卒社員の初任給は上がりやすく、給与が上がらないとしても、住宅手当などの福利厚生が手厚くなる傾向にある。都市圏で働くためには一定の収入と住む家が必要だが、それが提供されるだけの条件が揃っているということだ。

 この傾向が続くことは、生産年齢人口の減少から決まっている。

 また、人は同じ場所に住み続けるわけではない。地方から都市圏への移動は多く、その流入人口は有効求人倍率でほぼ決まる。その場所に仕事が多くあれば、移住が可能になるからだ。

 直近の大学進学率が56.6%と高いため、流入する人口が最も多くなる年代は23歳だが、先ほどの新卒の求人倍率と連動してこの世代の流入が決まる。

 そのため、地方よりも求人が多い都市圏では若者の吸引力が強い。働き口があれば実家を出たい若者のニーズと、若い人を採用したい企業のニーズがマッチするのが都市圏である。

 この都市部への移動が意味しているのは、日本の総人口が減っても、1世帯当たり人員が減ることで世帯数は増えるということだ。2015~20年の間で、全国で約237万世帯が増えている。

 この増加世帯数の分だけ住宅が必要になるので、年間で少なくとも47万戸は新規着工が必要になる。

 加えて、既存ストックの解体(滅失)が必ず起こる。


年間100万戸着工でも足りない住宅供給

 住宅の耐用年数は、最長のマンションでも47年。この数字を超えれば滅失すると仮定すれば、住宅に住む一般世帯数は5500万あるため、年間117万戸が滅失していく(5500万÷47年)。

 もちろん、これは多過ぎるとしても、ストックの1%が解体されれば56万戸が住めなくなっていく。先ほどの世帯数の増加(47万世帯)とストックの解体戸数(56万戸)を足せば、年間100万戸を超える。つまり、家は100万戸新規で着工しても足らないのだ。

 実際、住宅・土地統計調査によると、2013~18年の5年間で、都区部の空室は減っている。この間の着工戸数は56万戸、滅失戸数は29万戸で世帯数は28.4万増えている。すなわち、1.4万戸空室が減少しているのが実態である(56-29-28.4=▲1.4万戸)。

 それゆえに、大都市の賃貸住宅市場の稼働率は上昇を続け、賃料は上がったのだ。

 持ち家価格は家賃以上に高騰した。アベノミクスの金融緩和で不動産購入に低金利の資金が流れ、中古マンションの単価は7割ほど値上がりした。金利低下で購入者が買える余力が増えた上に、不動産事業者に多額の融資が行われたため、土地価格が高騰し、不動産価格は都市部を中心に上昇した。

 日銀総裁が代わっても金融緩和が続くのであれば、今後も値上がる公算が高い。

 加えて、コロナ禍でステイホームを余儀なくされ、レジャーを失った家計は持ち家取得に動いた。これを私は「コロナ特需」と呼んでいるが、需要の急増は在庫減を招き、在庫減でマンション価格はさらに急騰し、それまで横ばいだった戸建て価格まで値上がりに転じた。


住宅市場の真の問題

 価格の高騰は持ち家率の低下を招いている。買い手は増えたものの、価格高騰で買える人が減少した結果、夫婦のみ、もしくはファミリー世帯は賃貸層が増えている。

 単身向けの賃貸住宅を供給する事業者は多いが、それ以外は極端に少ない。以前は、UR(都市再生機構、旧公団)が開発していたが、民業圧迫という批判を受け、今は供給していない。

 ファミリー向けストックが少ない中、新規需要が増えると稼働率が高くなりやすく、ファミリー向け家賃は最も値上がりしている。

 少子化と持ち家率の低下で持ち家取得者は今後、減少する方向にあるが、新規需要が減少する中で、価格は下がる方向には動きにくい。マンション市場では供給戸数と価格は反比例の関係にあり、その掛け算である年間販売額は、首都圏では2兆円前後でほぼ一定で推移しているからだ

 買い手が少ない中、供給が増える可能性は低い。そうなると、価格が下がる理由はなくなる。「価格が暴落した際に買いましょう」とアドバイスする向きもあるが、そのようなシナリオはあり得ず、一生やって来ない可能性さえある。


 要点をまとめておこう。人口は減少しても世帯数は増えている。住宅着工はこの世帯数の増加と急増している築古ストックの解体と同じだけ必要になる。このため、空き家問題は相続した実家が物置になる程度しか発生しない。

 住宅市場に関しては、現代のニーズに即して快適に住める家が不足していることの方が問題だと私は考えている。」


 この記事の内容は、ある意味的(マト)を得ていると思います。都市部に人口が集中する中、大都市圏では家賃や家の価格が上がり、地方では空き家の増加が問題となっています。東京一極集中を改めることが、今後の日本の施策としても重要なのではないでしょうか?

 
 
 

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