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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

修繕積立金が足りない場合の対処方法

更新日:2022年3月14日



 工事費の高騰から、最近の大規模修繕工事では戸あたり120万円程度の費用が必要です。先日聞いた知り合いのマンションではコンサルタントから設計価格で戸あたり200万円と金額提示されたという話も聞きました。

 工事費の高騰により、長期修繕計画で予定していた工事費では足りない。途中で修繕積立金の値上げが行われず計画通りの修繕積立金が溜まっていない。長期修繕計画で予定していた工事以外の工事が発生し、修繕積立金が足りない等の管理組合もあります。

 それでは、修繕積立金が不足した場合に、皆さんはどのようにしているのでしょうか?修繕積立金が不足した場合の処置は以下の方法が考えらえます。①修繕積立金の増額②管理組合として金融機関からの借入③修繕積立一時金として、各住戸から徴収④修繕範囲の縮小⑤修繕工事の延期⑥施工業者の選定範囲拡大。以上6つの方法について、それぞれメリット・デメリットを以下に記載します。


① 修繕積立金の増額

 修繕積立金の不足がわかるのは、一般的に工事適齢期の1~2年前です。その時期から修繕積立金をアップしても、金額は微々たる金額になります。(戸あたり月1万円の修繕積立金アップで1年間で12万円)ただ、大規模修繕工事実施後に修繕積立金の増額をされる管理組合が多く、組合員の理解が得られるのであれば、修繕積立金増額の前倒しをすることは有効な対策になります。


② 管理組合として金融機関からの借入

 都会では、修繕積立金不足の管理組合が良く取っている対策が、管理組合としての金融機関からの借入です。例えば住宅金融支援機構には「マンション共用部分リフォーム融資」があります。全期間固定金利で担保も不要であり、利用しやすい融資です。

 また修繕積立金を「マンションすまい・る債」を活用して積み立ている場合は、0.2%の借入金利引き下げもあります。修繕積立金不足が予想される管理組合は、修繕積立金を銀行に預けるのではなく、住宅金融支援機構に預けることも検討すれば良いでしょう。ただし借入金なので、修繕工事完了後、月々返済の必要があります。その分、大規模修繕工事後の修繕積立金のアップ額は大きくなります。


③ 修繕積立一時金の徴収

 借入も嫌ということであれば、各戸から不足分を一時金として徴収する方法もあります。高松でも築年数の古い大型マンションで実際に一時金を徴収して工事を実施したという話を聞いたこともあります。ただしマンションが高経年化してくると居住者も高齢化してきます。年金暮らしの高齢者から一時金を負担してもらうには、大変な努力が必要です。

 同じく住宅金融支援機構に「マンション共用部分リフォーム融資(区分所有者申込み/高齢者向け返済特例)」という商品があります。この商品は満60歳以上の方が申込できますが、なくなるまでは金利のみの支払いをおこない、亡くなった後に借入金を返済する制度です。このような制度の活用も促して、一時金の徴収を行うことが有効です。


修繕範囲の縮小

 修繕積立金のアップが対応不可な場合には、支出の削減を考える必要があります。大規模修繕工事では、足場をかけての工事であり、足場を掛けなくても工事が実施可能な項目については、大規模修繕工事とは別に行うことも可能です。ただまとめて工事したほうが金額も安くなるし、工事中の騒音等の影響も一度であり、入居者の負担が少なくなるために、一緒にしているケースが多いです。

 以下、私がいままで提案したことのある工事範囲減の提案内容です。

・屋上の防水工事を全面やり替えから、部分補修工事に変更(防水の10年保証は付かない)

・廊下・バルコニー床のシートを全面張替えから、洗浄工事のみに変更

・廊下・バルコニーのサッシ廻りのシーリング工事取りやめ。(上部に庇があるため漏水のおそれが少ない)

・廊下・バルコニー内壁のタイル補修取止め(タイルが落下してもケガをするおそれが少ない)

・アスファルト舗装・植栽等の外構廻り工事の取りやめ(足場がなくても工事可能)

・開放廊下照明器具交換取止め(足場がなくても工事可能)

 業者から提出された見積書を精査し、修繕積立金で実施できる範囲まで、工事内容を削減します。


⑤ 修繕工事の延期

 よく取られる対策が大規模修繕工事の延期です。修繕積立金が貯まるまで、1年から2年工事を延期するという対策です。マンションの規模にもよりますが、2年程度遅らせると50戸のマンションで修繕積立金が1千万円程度の増額となるケースも多くあります。ただ、昨今の工事費の高騰もあり、先送りするほど工事金額も高くなる傾向にあります。また、既にタイルの剥離が見られるケースや、屋上からの雨漏り等が発生している場合は、工事時期の延期はお勧めできません。


⑥ 施工業者の選定範囲拡大

 業者の選定基準を緩くし、信頼性は劣るが、ある程度小さな工事会社に発注すると、工事費は安くなります。大手のゼネコンに発注しても実際に施工するのは、下請け業者であり、ある程度の倒産の危険性も許容し、工事中の施工監理もしっかりできるのであれば、その下請け業者(一時業者)に直接発注するという方法です。実際に私がコンサルタントで業者選定をおこなったマンションでも、大手の下請け業者(一次業者)が提出してきた見積もり金額は大手企業の85%程度の金額でした。


 以上、マンションによって対応方法はまちまちですが、上記①~⑥のいずれか、若しくは複数の対策をとることで、修繕積立金不足の中でも、大規模修繕工事を実施している管理組合も多くあります。


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