今回は、修繕積立金のお話です。
修繕積立金が不足しているために、大規模修繕工事が実施できないマンションや、借入をして大規模修繕工事を行っているマンションもあります。人手不足による建築費の高騰や、消費税のアップ等で、工事費も高騰しており、修繕積立金の不足はマンションにとって重要な問題です。
適切な修繕積立金額とは
国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、階数15階未満の修繕積立金の目安は以下の通りとされています。
・延床面積5,000㎡未満(55戸程度未満)平均修繕積立金218円/㎡・月(165円~250円/㎡・月)
・延床面積5,000~10,000㎡未満(55戸~110戸程度)平均修繕積立金202円/㎡・月(140円~265円/㎡・月)
・延床面積10,000㎡以上(110戸程度以上)平均修繕積立金178円/㎡・月(135円~220円/㎡・月)
これは、新築から30年間に必要な推定修繕工事費の総額を、毎月均等に積み立てる方式(均等積立方式)にした場合に必要な専有面積1㎡あたりの金額です。機械式駐車場は考慮されていませんので、機械式駐車場がある場合は、もっと増額が必要です。
皆さんのマンションの修繕積立金は足りていますか?月々の修繕積立金を専有面積で割ってみてください。
修繕積立金不足の要因
修繕積立金不足の主要因は、販売当初の修繕積立金が売りやすさを優先するあまり低額に設定されていることにあります。私が勤めていた時の会社の基準は80円/㎡・月からスタートし、5年毎に見直して(値上げ)160円/㎡・月を目指すというものでした。(段階増額積立方式)
最近販売されているマンションでは50円/㎡・月の物件もあります。販売時に修繕積立基金として戸当たり30万円程度を徴収していますが、この金額のままでは1回目の大規模修繕工事が終われば資金ショートが発生し、大幅な値上げをしなければ2回目以降の大規模修繕工事が実施できません。
また販売時の長期修繕計画が建築時から30年間しか見ていないことも修繕積立金不足の原因です。新築時から30年間は大規模修繕工事のみですが、マンションが古くなってくると給排水管の更新工事や、エレベーターの交換工事、サッシや玄関ドア・バルコニー手摺の交換工事と、当初計画では見込んでいなかった工事が発生してきます。長期修繕計画を定期的に見直して、修繕積立金額が妥当であるか検討する必要があります。
修繕積立金見直しのポイント
上記で説明した国交省の目安と比較して、著しく修繕積立金が不足している場合は早急な対策が必要になります。
まずはマンション管理士等の専門家に依頼して、長期修繕計画の妥当性のチェックを受けます。見直しが行われていない場合は、新たに長期修繕計画を作成することも必要です。通常は12年程度で行われる大規模修繕工事も、可能な限り15年~18年程度に延ばして、修繕積立金が溜まるように設定するのも一方法です。
次に検討するのが、修繕積立金の増額です。一気に増額すると入居者の反発も考えらえるため数年かけて徐々に増額するように検討するのも一案です。また、大規模修繕工事実施後は入居者の理解も得やすいため、大規模修繕工事完了時に併せて、修繕積立金の見直しを提案するのもお勧めです。
管理費会計を見直して、管理費が減額できないか検討をおこない、その分を修繕積立金に廻すという方法もあります。過剰な仕様や必要度の低いサービスなどで余計な費用がかかっていないか検討します。保険を見直すことで、減額ができるケースもあるかもしれません。これらの方法は入居者の支払い総額は変わらないため、比較的理解の得やすい方法です。
街中のマンションでは、駐車場の外部貸や集会室の外部利用で収益事業を行い、修繕積立金に組み込むことも考えられます。
管理費と違い修繕積立金は、管理組合皆さんの資産です。マンションの資産価値向上にも役立つ資金ですので、皆さんで力をあわせて不足がないように対策を考えましょう。
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