今回は法律用語のお話です。皆さんは「利益相反」という言葉はご存じですか。「利益相反」とは、一方の利益となると同時に、他方にとっては不利益になる行為を示す言葉です。
標準管理規約の改正で、利益相反に関する項目が追加されました。
37条の2(利益相反取引の防止)として役員は、次に掲げる場合には、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一、役員が自己又は第三者のために管理組合と取引をしようとするとき。 二、管理組合が役員以外の者との間において、管理組合と当該役員との利益が相反する取引をしようとするとき
また、関連として、理事会の決議について利害関係を有する理事は、その議決に係わることができない(53条3項)ことや、管理組合と理事長が利益相反する事項については代表権が無くなり、監事または当該理事以外の理事が組合を代表する旨を規定しています(38条6項)。
建設会社に勤める入居者がマンションの大規模修繕工事等を自分の会社でおこなうために、理事長に立候補するケースもあります。そのようなケースを想定して、規定された項目が上記にあたります。
今回は、そんな利益相反についてのお話です。
利益相反が追加された経緯
解説では外部の専門家の役員就任を可能にしたことで、新たに設けられた規定であるとコメントされています
管理組合で想定される利益相反行為は、第三者管理のケースで役員となった管理会社と管理組合とが管理業務委託契約を締結することが考えられます。
また、理事長とか理事の中には自分が関わっている会社と管理組合が契約できるように画策する人がいます。金銭的なものが動くのか動かないのかはわかりませんが、好ましくないことは確かです。こうしたことを防止するために追加された規約です。
管理会社と管理組合は利益相反関係
管理会社は売上至上主義、利益を上げることを第一とする考え方、一方の管理組合は節約志向、最少費用で最大効果を望む考え方です。当然、お互いの考え方が違う以上、利益相反の関係にあります。明らかな違反ではありませんが、下記のようなケースも利益相反と言えるのではないでしょうか?
利益相反事例1:建物の瑕疵発生時の問題
マンションデべロッパーは、新築マンションの販売に先駆け、管理会社を指定します。その指定先の多くが関連子会社です。指定された管理会社にとってみれば、そのデべロッパーは大得意先となります。それ故にデべロッパーに対して頭が上がりません。
マンションに瑕疵や不具合が発生した場合、デべロッパーに対してものが言えない。管理組合よりもデべロッパーの方を優先する。瑕疵や不具合が発見されても、先にデべロッパーに報告がいく。管理組合に報告する前に、この瑕疵(不具合)の対応について、デべロッパー、施工会社、設計事務所、設備業者などの関係業者が集まり話し合いが持たれるのが一般的です。知らないのは管理組合だけです。このようなことが瑕疵や不具合の発見の度に起きています。
そして、一番お金の掛からない方法で手直しが行われます。最悪、真実が告げられないまま、封印されることもあります。
多くの管理会社がしがらみによってデべロッパーに意見が言えない。これは知っておくべきです。管理組合を支援する立場にありながら、事業主を優先した行動をとる行為、これそこが利益相反と言えます。
利益相反事例2:管理組合からの請負契約
管理組合から定期清掃、消防設備点検などの請負契約だけを受注しているのなら、ごく普通のビジネスであり、利益相反という訳ではありません。問題は、管理組合の代理という立場、総会、理事会の運営などをサポートする立場、これらの委任契約がありながら、同時に請負契約も行っていることです。しかも割高という更なる矛盾がそこにあったりもします。請負契約も適正価格であれば、それもありかも知れませんが、実際には割高でかつ中身が伴っていないケースも多々あります。この間も、知り合いのマンション管理士の方から、管理会社が施工会社から紹介料という名目で20%の費用を徴収していたという話を聞きました。
管理会社の利益になる一方で、管理組合にとって不利益になる行為は、大規模修繕工事を含めた請負契約などでも多く見受けられます。
まとめ
管理会社が営利企業である以上、管理組合と利益相反にあるのはある意味しょうがないと思います。問題は、管理費や修繕積立金という管理組合の大切なお金が、無駄に出費されても、気が付かないことです。管理組合は、マンション管理士等の専門家を活用することで、適正価格で、請負工事等が発注されるように、常に監視していく必要があります。
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