一般の方には、あまり馴染みがありませんが、大気汚染防止法および労働安全衛生法に、吹付塗料で施工された建物を解体・改修する際のアスベスト対策が定められています。
大規模修繕工事においても、吹付塗材にアスベストが含有されている場合には、法律に定められた対策が必要です。今回は、大規模修繕工事時に気を付ける必要のあるアスベスト対策についてのお話です。
アスベストとは微細な繊維状の鉱物で、長期間の暴露で、肺に入ると肺がんのリスクが約5倍に高まると言われています。石綿とかセキメンと呼ばれることもあります。
アスベスト調査の必要性
2006年9月以前に建設されたマンションでは、吹付塗料の中にアスベストが含まれているかどうかの調査が必要です。大気汚染防止法では調査は建築主の義務になっています。アスベストが含有されていた場合、工事中の環境測定等が別途発生し、工事費が高額になるおそれがあります。大規模修繕工事発注前に必ず調査を実施しましょう。
2006年9月よりも前に建てられたマンションの管理組合は、アスベスト含有調査を実施し、記録を残し、売買仲介業者等に通知する必要があります。また、調査結果は、大規模修繕工事中は、外部の人が見える場所に掲示する必要があります。
アスベストの種類
アスベストは、健康への影響度等も考慮し、レベル1~レベル3の3種類が分けられ、それぞれの対策が定められています。もっとも危険度が高いのはレベル1であり、鉄骨の耐火被覆等に使用されている吹付アスベスト等が該当します。現行の法律では吹付塗料は、このレベル1に分類されており、厳しい対策が求められています。
アスベストが含有されていた場合の対応
吹付塗材にアスベストが含有されていた場合には、塗料の除去や穴あけで、粉塵が飛ばないような対策が必要です。また、発生したゴミはアスベストが含まれているため、法律に基づいた廃棄が必要です。工事に先立ち、役所への届け出・近隣への説明が必要なケースもあります。
具体的な施工方法
足場の壁つなぎ等でドリルで穴を開ける際には、ヘパフィルター付きの集塵ドリルを使用します。また塗材を剥離する際には、剥離剤を使用して剥離します。サンダー等を使った剥離は行ってはいけません。また、吹付塗材に含有されたアスベストはレベル1のアスベストに該当しており、ゴミ処理についても、普通の産業廃棄物ではなく、特別管理産業廃棄物として、厳重に保管し、処分する必要があります。役所によっては、施工前、施工中のアスベスト飛散状況の調査(環境測定)が必要な場合もあります。
令和3年4月に大気汚染防止法が改正
来年の4月以降の工事から、大気汚染防止法が改正され、吹付塗材含有のアスベストについてはレベル1からレベル3に変更になります。このため、特別管理産業廃棄物ではなくなり、一般産業廃棄物での処理が可能となり、また、工事中の環境測定や、近隣説明等は不要になります。ただし、レベル3扱いになっても、粉塵が出ないような施工は必要です。
まとめ
レベル3扱いのアスベスト含有建材は、吹付塗材以外にも、バルコニーの隔板や、床材Pタイル等があります。築年数の古い物件の修繕工事では、工事の前に図面等で調査し、アスベスト含有建材はアスベストが飛散しないように撤去する必要があります。
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