top of page
執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

国交省調査「マンション修繕積立金」が10倍の事例も…!積立金・大幅節約奥の手「大規模修繕の修繕周期12→18年化」完全攻略法【マンション管理クライシス】



 2024年7月22日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。


近年、分譲マンションでは、物価高などを背景に、毎月の修繕積立金を大きく値上げするケースが増えてきている。所有者にとっては、維持費の上昇は痛手だが、修繕費用を節約する手段として注目されてきているのが、大規模修繕工事の修繕周期の延伸だ。(*記事内容は編集部が保証するものではありません。実際のマンションの状況に合わせて情報を参考にしてください)


住宅ジャーナリストがいう。

「国交省の調査によれば、分譲時からの最終的な増額幅は平均で約3.6倍。最大で10倍を超える例もあったようです。そのため積立金値上げの合意できず、積立金が足りなくなるケースも相次いでいるとのことです」


大規模修繕「12~15年の工事周期」は絶対ではない

 このような、修繕積立金の高額化の大きな要因の一つに、短いスパンで計画されている大規模修繕の工事周期の問題がある。

「現状の『大規模修繕は12~15年周期で実施を』という考え方自体、建築物の経年劣化への対処という点で合理性に欠ける」

 こう指摘するのは、一級建築士でマンションコンサルタントの須藤桂一氏だ。

「そもそも『大規模修繕』とは、外壁修繕や屋上防水、各住戸のバルコニーの防水やシートの張替えなど、仮設足場を使う工事について、高額な足場工事代を考慮して、周期を決めて1度にやっておきましょう、というものです。また、マンションはワンオーナーのビルと違い、意見集約の手間などもあり、1回の計画で済ませるというのは理解できます。業界から推奨される12~15年周期の根拠は、国交省が、長期修繕計画(長計)策定のガイドラインで『修繕周期は12~15年』が計画の“記載例”として示されているだけで、この周期には法的な拘束力もありません。

 また10年ごとに外壁タイルの全面打診検査が義務付けられ、10年超の3年以内に工事の予定がある場合は、調査が不要という法令があることから逆算しての数字でもあります。

 要は、国の都合で、実際の経年劣化の進行度合いに関係なく、自動的に外壁修繕の周期が決まり、そのついでに、他の修繕項目や設備更新の周期も決まってしまうのです。結果的に多くの修繕項目において本来の寿命を余して修繕してしまうので、非常に不経済で無駄な工事が増える要因にもなっているのです」

 ちなみに、現在の国交省ガイドラインの「12~15年周期」の記載例は2021年に改訂されたもので、それまでは「12年周期」だった。しかし、いまだに、修繕事業者の売上に有利な、12年という短い周期での工事を推奨されることも少なくない。また、長計の見直しの際にも、管理組合があらためて注文を付けないと管理会社や設計コンサルタント会社は、お伺いなしに「12年周期」で作成してしまうことも多い。

 このような短いスパンでの大規模修繕は、巨額な工事費をまねき、修繕積立金の値上げや、工事中の住民負担や理事会業務の負担の増大に繋がるため、注意が必要だ。


商業ビルやホテル、公共施設は「大規模修繕」自体やらない場合も...

前出の須藤氏が続ける。

「大規模修繕の周期が12年というのはやはり短すぎるし、中には10年でやるところもあり、明らかに修繕事業者の営利色が強い。自分の所有物としての生活空間であるからしっかり保全したいという感情は理解できますが、実際には、修繕周期を延ばしても、日々の生活でその差は実感できず、現実的な問題もほぼ起きていません。これは修繕の軽視ではなく事実なのです。

 そもそも、商業ビルや学校、病院、役所、公共交通施設やホテルなどの施設において、マンションのように周期を決めて、大規模修繕を実施する施設自体、ほぼありません。仮に12年周期でタイル外壁の修繕をしていたら、街中の至る所で足場を建ててビルが囲われているはずですが、実際にはそうした光景の多くがビルではなくマンション偏っているのです」人の通行量を考えれば、マンションより格段に商店街のビルの方がタイル剥落による事故のリスクは高いはず。それなのにプロが管理する建築物は、周期的な大規模修繕工事を実施しない方が多数派なのだという。実際のリスクは一般人が考えるよりはるかに少ないと言えそうだ。


実はコスパの悪いマンションの「予防保全」

「もちろん、ビルや公共施設など、マンション以外の建物も、修繕工事を周期的にはしていないだけで、必要に応じた修繕は必ずしています。というのも、計画的な修繕をするマンションは、問題が起きる前に対処しておこうという『予防保全』という考え方ですが、一方で、マンション以外のビルや公共施設は『事後保全』という考え方です。こちらは建物にダメージが起きた時、もしくは起きそうな予兆が出たタイミングで修繕をするというものです」(須藤氏)

 予防保全の考え方は、自動車や飛行機といった「動くもの」に適しており、万一の事故が、人命や大きな2次被害に繋がる場合だ。構造物でも例えば、橋梁の支柱が崩壊した場合など、二次被害が広がりやすい公共インフラでは有効とされ、一見、実直で真面目に思えるが、マンションにその考え方は当てはまらないと須藤氏はいう。

「マンションでは、起きた後に取り返しがつかないアクシデントは、地震や火災くらいですが、耐震性や防火仕様は建築時の仕様に依存するため、一般的な修繕ではもとから改善できません。

 一方で、エレベーターなど電気設備系や、ポンプなどの水周りも法定点検や任意点検があり、基本的に前触れなしに突然、機能しなくなることはありません。雨漏りも原状回復に100万円を超えることはまずなく、台風など天災なら保険でカバーできる場合も多い。そもそも、マンション共用部の故障やトラブルというのは、原状回復までの少しの間だけ我慢すれば済むことがほとんどです。こうした一時的な不都合の発生自体を無くそうとすると、コストは格段に高くなってしまいます。

 むしろ、必要に応じてこまめに修繕する方が、劣化の進行速度も抑えられ、結果的に安くつく。こちらの考え方の方がはるかに経済合理性は高いので、プロが管理するビルや公共施設は『事後保全』の考え方をとっているのです」(同)


UR都市機構は「概ね18年以上」の周期をHP上で明記

 このようなスタンスで修繕周期を計画しているのが、UR都市機構のマンションだ。同機構では、計画的な修繕周期を『概ね18年以上』とHPに明記している。タワマンでも管理組合によっては分譲時に作成された長期修繕計画にとらわれず、実際の劣化具合に応じて1回目の大規模修繕を15〜18年超でやるところも多い。

「総戸数が多いだけに、組合員からさまざまな知見が集まりやすい」(マンションコンサルタント)という側面もあるようだ。ちなみに超高級マンションである、「六本木ヒルズレジデンス(03年築)」も、いわゆる大規模修繕が実施されたという報道はない。

 では、修繕周期は何年程度が望ましいのか。近年になってようやく、短すぎた修繕周期を見直す動きが出ており、15年や18年などに延ばす組合も増え始めている。


外壁工事の実施は義務ではない

 ここで、工事周期を延伸する場合、義務である10年毎の外壁の全面打診調査を受けての工事はどうなるのか、という疑問がわく。しかし、実は工事の実施自体は義務ではない。義務なのはあくまで調査の報告だけだ。

 全面打診調査を安価なドローン調査で済ませて危険個所だけ補修し、足場を組む大掛かりな修繕を18年目に行うという形式も、ジワリと増えてきているのだ。


須藤氏が続ける。

「私がコンサルしている多くの管理組合物件では、部材や設備も一般的なものですが、平均の修繕周期は18年です。これは、一律に私が18年周期で決めているわけではなく、マンションごとの状態を調査して適正な時期に大規模修繕を実施した結果、その周期の平均が18年になったというもので、中には15〜16年や20年目以降に行ったマンションもあります。もちろん建物の状況に合わせて行なっている結果なので、問題や不満は出ていません」


ドローン調査直後と14年目の中間修繕で「18年周期」に

 近年、高耐久部材を使うことで18年周期を公式に推奨するマンションも分譲されているが、実際には一般的な材料グレードでも、須藤氏が指摘するように修繕周期を18年に伸ばすことは十分可能だ。また、15年だと、ドローン検査の5年後の大規模修繕の際に、修繕箇所を確定するための打診調査をあらためて実施することになり、やや二度手間になる。


 大規模修繕工事専門の「富士防」の工事担当者もいう。

「建物形状等によっても異なりますが、正直な印象としては一般的なスペックであっても18年周期で問題ないケースがほとんどでしょう。ただ、その前提は、虫歯治療のように、こまめに傷んだ箇所を修繕することです。18年周期にするなら、10年目や14年目に中間時修繕をするのがお勧めです。そうすることで、経年劣化の進行を抑えつつ、修繕周期を伸ばすことが可能になります」

 それでは、大規模修繕工事を18年周期にした場合、毎月の修繕積立金はいくらが妥当なのか。

現在、大規模修繕の費用相場については、複数の業界関係者によると、一般的なファミリータイプのマンションでは戸あたり税込みで120万~130万円程度だという。これは、既報の通り、キックバックなど、不適切取引を排除した金額だ。

 修繕積立金は、大規模修繕以外にもエレベーターの更新工事やインタホンリニューアルなど、設備更新費やその他の小修繕工事にも使われる。編集部が取材を基にシミュレーションしたところ、一般的なマンションでは、次に掲げる表のように月1万円でも余剰が出ることがわかった。

 なお、さらにこれに駐車場収入が一部、ないしは全て入る。機械式駐車場の場合は維持費と更新費の合計で月1万2000円程度見ておいて、余剰が出れば管理組合の収入になる。

実際の将来的なコストは物価変動がどうなるかで決まる。


18年周期、「1万円」の“長期修繕計画”


 上記のシミュレーションでも漠然とした不安を感じる人もいるだろう。「心配性な人はこう考えてみてはどうか」と提案するのは、住宅ジャーナリストだ。

「例えば戸あたり月1万円の修繕積立金を徴収している50戸のマンションが大規模修繕の周期を12年から18年周期に伸ばした場合、単純計算では3600万円の余剰が出る計算になります。仮に中間の9~10年目や必要になったタイミングで300万~600万円程度かけて傷みやリスクのある部分に塗装や補修工事を実施し、他の設備更新費などに使ったとしても、2000万円程度は余ると考えられます。

 これは、分かりやすく言うと、逆に『2000万円をかけて18年周期から12年周期にするだけの根拠や必要性があるのか』ということになります。この金額をかけて一体、何を防ぐというのか。修繕を6年、遅らせたことによって、原状回復費や2次被害額を入れて、2000万円以上の損害になるマンションのトラブルは考えにくい。仮に最上階で雨漏りしたとして、補修個所が分かれば数十万円。屋上防水をやり直したとしても50戸程度なら500万円程度で収まります」(住宅ジャーナリスト)

 仮にもし、お金が足りなかったとしても、1~2年延ばせば、相応に積立金は貯まる。しかし、積立金を引き上げてしまうと、毎月の負担+維持費増加によって全住民の資産性にも影響が出るダブルパンチになってしまう。

「『積立金を値上げしないと管理不全や廃墟になる!』などの情報を安易に信じてはいけません。そんなマンションは積立金を全く徴収していないなど、例外中の例外です。不安なら築50年超で積立金1万円のマンションが実際に廃墟になっているのかどうか確認すれば答えは分かるでしょう」(同)

無駄のない大規模修繕工事の実施と、修繕積立金は必要な額に留めておきたいものだ。


築60年超、銀座のビルは大規模修繕を「一度もせず」問題なく満室経営

 これまで本連載では、大規模修繕工事などで、修繕事業者による、中間マージンやキックバック目当ての不必要な工事の存在を問題視してきた。そもそも、大規模修繕工事は、本来、どこまで必要なのか。


一級建築士でマンションコンサルタントの須藤桂一氏が言う。

「弊社の事務所が入る銀座のビルは築60年超ですが、オーナー曰く“大規模修繕”を一度もしていないとのことです。それでも建物にはなんら問題なく、今も満室経営です。マンションでは10数年に1回が推奨される屋上防水の更新工事ですら、竣工以来していないそうですが、漏水したこともないそうです。もちろん一般的なアスファルト防水です」


大規模修繕は「18年周期」でも問題はない

須藤氏が続ける。

「というのも、本来、アスファルト防水は何層もシートがあって、紫外線や雨水により表面層が傷んでいても、防水性能にはほぼ影響しません。もっとも、ビルの屋上には貯水槽や空調設備などがもとから設置されるケースも多く、その場合は防水工事を完璧にやり直すことができません。

 そもそも不動産は、建物に何か問題が起きた時、もしくは予兆が出てからの修繕で、実際には何の問題も出ないことがほとんどです。建材や設備はマンション所有者が思っている以上に長持ちするものです。弊社の顧問先のマンションでも、大規模修繕は状態を見た結果、多くが18年程度の工事周期に収まることが多いのですが、それで問題は起きていません。

 しかし、修繕周期が長いと、管理会社や設計コンサルタント会社、施工会社は儲からないので、必要以上に不安を煽り立てる。ネットで検索しても早く修繕した方がいいという情報ばかりです。しかし、確たるデータに基づいた論拠はほぼ皆無で、そのほとんどは業者の営業用のHPです。マンションを賢く管理したいなら、そういった業界の闇の側面も知っておくべきです」


修繕事業者の「過剰提案」が分かる日本建築学会の論文データ

 このように、売上のため、時に過剰な修繕を顧客に勧める修繕事業者はいる。実はそんな彼らが絶対に知られたくない「不都合なデータ」がある。

 それが日本建築学会計画系論文集(第82巻741号2939―2948・2017年)だ。「長期間の工事履歴に基づく部位・設備ごとの信頼度の算定及びこれを活用した最適な更新周期の推計」では、中小規模のオフィスビル500棟以上を対象にした経年の故障率に関する実態調査が公開されている。

 例えば、設備の故障率の推計値は、電気設備や空調、屋上防水などは築30年目でも7〜12%としており、マンションで採用される一般的な修繕や更新計画より、実際の寿命は長いことを示唆する結果と言える。また、同論文では、不具合や故障が起きてからの修繕と、故障により引き起こされる2次被害を含めたコストが、「予防保全」的な計画修繕に比べて3倍かかったとしても、20年超が最適な修繕周期だと結論付けている。

 収益性を重視する中小オフィスビルに比べ、マンションの方が耐用性の高い建材を使っていると考えられることから、少なくともマンションがこの水準を下回るとは考えにくい。

 マンションで一般的に採用される、建物の修繕や設備の更新スパンは、やはり短すぎ、無駄が多いと言えるのだ。


屋上防水、築25年経過の「故障率」はたったの4%

 論文をさらに詳しく紐解くと、一例として、10数年周期の更新が推奨される「屋上防水」の故障率は築25年を経過した時点で4%程度と指摘している。


前出の須藤氏が言う。

「このデータでは、例えば25棟の賃貸マンションを所有している人が、25年を経過するまでに発生した漏水被害がたった1棟だけ、という計算になります。その被害は、最上階の1〜2戸のうちの数部屋といったところでしょう。その1棟の漏水被害を起こさないために、25棟で10数年おきに2回ずつ屋上防水を施行するのは、あまりにも経済合理性に欠ける。だから、プロが管理するオフィスでは、マンションのような過度に手厚い大規模修繕は一般的に行われないのです。万一、被害にあった場合は、その住戸に原状回復費と手厚い見舞金を出す方がはるかに合理的です」


「2~3%のリスク軽減」のための費用は2倍に!

 一般的にゼロリスクを追求した場合、一定以上の段階から減らせるリスクに対しての費用対効果は急激に低下する。これは例外的に早い故障に全体の修繕周期を合わせることになってしまうためだ。

 上記の屋上防水の例でも、4%まで減らせるコストとゼロ%近くまで減らせるコストは、数%の違いに対して約2倍の費用をかける計算になる。漏水の原状回復は、原因箇所の補修と、住戸の壁紙の貼り替えなど、原状回復には50万円もかからないという。

 一般的な50世帯のマンションでは屋上防水の費用は500万円程度だが、25年で4%の確率で発生する50万円の被害の確率を1%程度に抑えるために500万円かける工事が、マンションでは常識的に実施されてしまっているのだ。

 早め早めの修繕計画は修繕事業者は売上が見込める反面、このように、管理組合にとっては、標準的な製品寿命を使い切らず、無駄で高額な工事の出費が発生しているのだ。


保証期間や耐用年数と現実の製品寿命は違う

須藤氏が言う。

「そもそも屋上防水は、保証期間が終わると漏水が始まるわけではありません。保証期間が10年ということは、期待耐用年数がもっと持つから施工会社がこの期間を保証できるのですし、本来は施工不良の対応が目的です。しかも、せっかく問題がなかった防水でも、わざわざ工事を重ねることで、運悪く施工不良にあたってしまう可能性も高まってしまいます」

 屋上防水については、リスクである雨漏りにしても、発生すると心理的なショックは小さくないが、原状回復のしやすさや被害額を考えると、実はそこまで心配すべき問題ではないかもしれない。

「屋上防水からの漏水は確率自体が低く、防水と外壁の境目や窓回りなどからの漏水が現実的なところです。上階の給湯管などからの漏水は被害が甚大になる可能性が大きいですが、雨水による漏水の場合は、量が多く入り込めないため、仮に起きたとしても金銭的損失が巨額にはなることは稀です」(須藤氏)


トラブルが起きた場合でも原状回復費は限定的

須藤氏が続ける。

「しかも、雨漏りの直接的な原因が台風や天災だと判明すれば、マンション総合保険の施設賠償責任補償特約が適応されます。売却時も、雨漏りの修繕を終えていて問題がなければ、告知義務がないことが裁判例で確認されています。

 また、屋上から雨漏りが起きる原因のほとんどは、屋上外周と防水面の境界を接着するシーリング部分の劣化などにより、雨水が侵入することで引き起こされます。心配ならその部分だけきっちり修繕すれば、費用を抑えつつ、漏水の根本原因を大きく低減できるのです。しかし、それだと修繕事業者の売上が上がらないので、12~15年に1度、全面で修繕することが常識であるというのです」


コンクリートが「爆裂する」と煽って営業をする業者に注意

 設備系のデータがメインの同論文の参照は以上だが、マンションにおいて過剰な修繕がされがちな代表例が、外壁だ。

「外壁タイルの修繕では、タイル境界部を埋める『シーリング』を打ち替えないと、劣化部分からコンクリート内部に雨水が侵入し、漏水や“爆裂”などの『恐れがある』と、修繕事業者は言います。

しかし、それが何年後にどれほどの住戸に何%の確率で起きるかを、誰も説明できません。確かに可能性はゼロではないですが、そもそも劣化したシーリングから雨水が染みてもコンクリートに亀裂(クラック)がないと内部の鉄筋までは到達せず、爆裂は起きません」(須藤氏)

 そもそもコンクリートの亀裂は地震や施工、熱収縮など材料的な特質を要因として発生するため、表面を塗装し直したりシーリングを打ち直すなどしても、発生自体を防ぐことはできない。数年おきなどに発生した亀裂箇所を補修するなど、こまめなメンテを心がければ、亀裂の拡大を抑えられる。


外壁タイルの「浮き=剥落」ではない

 また、タイルの剥落を防ぐ意味でも、経年劣化で接着面が“浮いたタイル”を補修する必要があると説明される。しかし、タイルが浮くことと、剥落することはイコールではない。


須藤氏が続ける。

「外壁タイルは12年前後で、およそ3~5%前後が浮くと言われていますが、そのまま放置するとやがて剥落するかと言えばそんなことはなく、ずっと浮いたまま周囲の接点に支えられながら保っているケースがほとんどです。つまり、スクリーニング的に浮いたタイルをあぶり出してまで補修する必要性は、本来ありません。明らかに歪んでいて落ちそうなタイルを、ゴンドラや20万円程度の『ロープアクセス工法』でピンポイントに修繕すればいいのです。大掛かりな外壁修繕をせず、問題箇所を修繕する商業ビルなどの対応で特段、問題が出ていないことを考えると、それで十分なのです」

 国交省の資料などによると、そもそもタイルの剥落は築10年以内にある程度の範囲で起こるケースが多い。これらは経年劣化が原因ではなく、建築時の下地処理が甘かった場合など、施工不良のケースがほとんどだという。


タイル剥落の「事故の事例」は全国的に極めて稀

 過度な外壁修繕はそれ以外の問題もはらむ。マンション問題に詳しいスタイルアクト代表の沖有人氏が言う。

「外壁修繕は人身事故に繋がるタイル剥落を防ぐのも理由の一つとされています。しかし、タイル剥落による死者は、日本中でこれまで1989年に北九州で2人亡くなった1例のみです。国交省の資料によれば、負傷者も毎年、何名かいますが、それでも全国で10人を超えることはありません。

 しかも、事故の多くは通行人の多い街中の商業施設などに偏っていることが分かっており、住宅街にあるマンションなら積極的に高頻度で外壁修繕工事をやる必要はありません。

 その一方で、建設現場における、職人の死亡事故の調査(厚労省)によると、資材が落下するなど「飛来・落下」で毎年、10〜20人、「墜落・転落」で同100人前後の職人さんが高所での危険な作業で亡くなっていることが判明しています。

 実際の被害の頻度が著しく低いマンションの外壁タイルの剥落事故を防ぐための工事をやるより、それによって職人さんの貴重な命を危機に晒す方が、社会的ロスは断然に大きいと言って間違いありません」

 外壁修繕の工事中の事故を巡っては、2016年に東京・六本木のマンション修繕工事中に鉄パイプが落下する事故が起き、通行人が亡くなっている。工事作業員の直近の事故では、今年6月に愛知県半田市で、外壁修繕工事中に足場から転落して亡くなっている。工事で防げる事故より、工事による事故の方が格段に多いのが実情だ。

 時期が来たから、安易に工事をするのではなく、よくよく必要性を考えて実施すべきだろう。


 関東に築30年の50戸のマンションを所有する男性が言う。

「久々にマンション管理会社から送られてくる理事会議事録に目を通したら、驚きました。まだ全然問題なさそうなのに、わずかな範囲しかない鉄部の塗装に200万円近くかけていたり、LED照明3ヵ所の交換に17万円と、エアコンの交換より高いのはさすがにおかしいと思いました。

 特に首を傾げたのは、共用部の排水管の交換です。時期に来たので交換を検討するというもので、2000万円かかるそうです。しかし、排水が詰まったり、漏水したという話は聞かないし、本当に今、交換が必要なのか、という思いです」


配管の漏水事故…90%は「専有部の給湯管」に起因

一級建築士でマンションコンサルタントの須藤桂一氏が指摘する。

「そもそも配管類での漏水事故は、その90%が古い銅管でできた給湯管によるものが多いのです。セントラル方式以外で給湯管は専有部にしかなく、これは各住戸が対処すべき箇所で、一般的に管理組合として対応すべき事項ではありません。しかも、共用部の給排水管のほとんどはパイプスペース内にある『縦管』で、漏水は専有部から来る排水管と接合する『継手』部分が多く、仮にそこで漏水しても、1階や地階に滴り落ちるので、構造上、住戸への漏水は考えにくい。縦管は漏水の頻度が増えてから更新を考えても遅くはありません。

 なお、排水管は最終的に公共の下水管に繋がっており、管の内側には圧力がかからず、劣化したところで、一般人が考えがちな『管が破裂して汚水が噴き出す』といったトラブルは物理的に考えられません。

 また、管の材質に関しては、90年代から採用が広がった『架橋ポリエチレン管』や『ポリブデン管』など樹脂系の配管や、『ステンレス鋼管』による配管において、共用部扱いの縦管では、漏水の発生頻度自体が低い。給排水管については、少なくとも設備のグレードで更新の周期を考えるべきです」


「昭和時代の鋼管」ですら今でも使えている

 なお、国交省の「平成30年度マンション総合調査」によれば、1969年築以前(調査時の築49年より古い建物)の共用部の給水管、排水管の工事実施率はともに26.7%にとどまっていた。古い時代の配管はコンクリートに埋設している場合が多く、工事自体が困難だが、それでも既存配管を活かす「更生工事」は可能だ。


須藤氏が言う。

「昭和の古い時代の腐食しやすい配管ですら、漏水があったとしても、その応急処置だけで現在まで日常使用ができていることを考えると、少なくとも腐食に強い樹脂系が主流になった平成築以降の共用部の配管類なら、メーカー推奨の耐用年数よりはるかに持つ可能性が高い」

 ちなみにUR都市機構はHP上で、「(共用給水管について)屋内管は、概ね25年以上経過した端防食継手のない水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管等で、赤水等の著しい管を棟単位で取替」と記載しており、交換条件はなかなかシビアで、排水管の交換については、そもそも想定していない。


須藤氏が続ける。

「そもそも推奨の耐用年数以上に使い続けて、補修ができず、使用不能に陥った事例自体、私自身、聞いたことがないし、おそらくあったとしても稀でしょう。仮に高額な給排水管の更新工事が1回分、省略できれば、大規模修繕工事1回分の7割程度の費用が節約できる計算になります」


営業目的の“調査診断”の提案には要注意

 この共用部の配管工事で注意したいのは、業者からの配管内調査の提案だ。業者にとって、莫大な売上を見込める配管工事はなんとしても受注したいところ。内視鏡などでの調査を勧めてその結果を“営業”に繋げようとする場合があるので要注意だ。

 耐用性には全く問題なくても、30年も経つと、ほとんどの配管内部は傷みがあったり、酷い汚れが付着しているもの。しかし、それを画像で視覚情報として見せられると、汚れの印象で住民は不安に陥り、工事の必要性が低くても、実施を決めてしまうこともある。そもそも、配管内の画像を見ただけで、あと何年で使えなくなるなど専門業者でも判断できないはずだ。

 そして、調査診断する業者は工事会社や管理会社の関連会社である場合もあり、忖度の力学が働く可能性は否めない。工事が決まれば高額な出費になるだけに、慎重な判断が求められる。


住宅ジャーナリストがいう。

「もちろん、配管がメンテナンスフリーというわけではありません。現状、問題が出ていなければ過度な心配はいりませんが、漏水の頻度が増えれば、調査や交換が必要になる場合はあるでしょう。

ただ、今は、高額な取替工事をしなくても、既存の配管を活かす『更生工事』など、費用を抑えるための選択肢があります。給水管であれば、『活水器』の導入で管内の錆が改善したとの声もある。また、もし給排水管の交換が必要になれば、工事費は高額になります。その場合は、中間マージンを避けるため、管理組合が独自で業者を探し、見積もりを取った方が安くつくはずです(以前の連載で詳述)」


「雑排水管清掃」は本当に必要なのか?リスクも...

 また、修繕ではないが、毎年1〜2回、各住戸でやる雑排水管清掃も必要ないという意見もある。排水管の目的は排水機能を果たせるかどうかで、排水管の中が綺麗である必要は全くない。臭いも排水管の『トラップ(曲がり)』に水が溜まるので室内には届かない仕組みだ。


前出の須藤氏がいう。

「そもそも、日常の排水の水流より、汚れの蓄積が上回っていれば、1週間も持たず詰まるはずです。そうならないのは、排水管に汚れが付着しても汚水で流されるだけで、流れた後の汚れが管に残留したり、付着したりということを繰り返すだけと考えるのが合理的です。

 つまり、清掃しているのは単純に数日前までの汚れを綺麗にしているだけかもしれません。 汚れの蓄積で詰まって、いずれ排水しにくくなる、というのは、物理的にあり得ない。詰まるのは、固形物や油などを誤って流したなど、別の原因によるもののはずです。

 雑排水洗浄は、戸建てでは定期的にやる家はほとんどなく、全くやっていない賃貸マンションもあります。街中の飲食ビルもやらないところが多数です。街中で雑排水管洗浄の専用車を見たり、発電機の轟音を聞いたりしたことはほとんどないでしょう。洗浄業者は詰まった時に呼ぶもので、年に1〜2回、洗浄してその瞬間だけ配管の中を綺麗にする作業は、リスク回避という観点からは必要性も感じますが、費用対効果がどこまであるのか、甚だ疑問です」

 しかも、洗浄器具は金属製のため、使う回数が多くなると、樹脂製の配管を痛めてしまう場合があり、逆に漏水のリスクを高めてしまうと指摘する業界関係者もいる。


無駄な塗装工事も

 塗装なども無駄が多い工事だという。須藤氏が続ける。

「塗装の目的は対象を錆や雨水から保護し、コンクリートを“お化粧”することです。チョーキングが出ているから、塗り替え時だとよくセールスされますが、チョーキングが出ているだけではまだ問題ありません。現状で見栄えに問題を感じなければ、塗装に亀裂が入ったり、一部が剥がれ始めてから実施しても遅くはありません。特に、直射日光が当たらず、屋根がある部分は同じ塗料でも劣化の進行が倍近く違います」

 同様に、共用の外廊下に面した外壁タイルも雨水がかからないなら、雨漏りの心配やタイルの剥落があっても、事故には繋がらない。修繕の必要性は下がり、修繕周期を大きく伸長しても問題はないだろう。


アバウトな根拠で食い潰される修繕積立金

 大規模修繕は巨額な費用負担が発生する工事にも関わらず、工事を提案する修繕事業者の説明は根拠が薄く、非常にアバウトな場合が多い。


前出の須藤氏が言う。

「例えば、薬なら、その病気に対して、必ず医学的に有効だと立証されていないと発売できませんし、必要な人でないと処方されません。薬は人体に使うから、という問題ではなく、あらゆる工事においても、住民に金銭的、また生活の上で負担をかける以上、費用対効果の下で判断されるべきです。

 大規模修繕の場合は、そのリスクやトラブルの発生頻度に対し、工事をした方がしなかった場合と比べて、統計的、コスト的に優位だという具体的な根拠が修繕事業者から示されることは、ほぼありません。確かに工事をやれば美観上は綺麗になりますが、機能的には『やった方がいい』程度の曖昧なことしか言えません。しかし売上に繋がる事業者は専門家という有意な立場で推奨するので、管理組合は不要な工事までやってしまい、貴重な積立金を無駄遣いしてしまいます。消費者保護の観点からも大きな問題ではないでしょうか」

 例えば工事費を節約できる18年超の長い修繕周期や「事後保全型」の修繕は危険で廃墟化リスクがある──。こういった説明をされることは多いが、もし実際にそうした実態があるなら、トラブルの発生頻度と2次被害額などの論拠が、過去60年の豊富なマンションストックのデータで説明できるはずだ。しかし、工事の売り手側は、『万が一』などとタラレバで不安を煽るだけで、そうした現実のデータや実態には触れない。なぜならそんな事例自体、例外的なケースを除いてほぼ存在しないからだ(既報)。リスクに関する可能性の“有無”と、経年劣化に至る理屈だけの、横着な提案がまかり通っており、金銭的負担の大きい「予防保全型」を勧めてくるのが現実なのだ。


「劣化予防」になると費用は際限なく高額化

 そもそも、建築部材が「劣化すること」と、「目的が果たせなくなること」は意味がまるで違う。

「予防保全」であっても、本来は故障率で判断されるべき工事の是非を、故障が起きるか起きないかの二元論で高額な工事を勧められる現状は問題だろう。

 効果不明な工事に高額なカネを支払うくらいなら、エントランスのリフォームや最新設備の導入、共用サービスの充実化など、目に見えるところの改善に投資した方が良いのは既報の通りだ。もしくは、清掃の頻度を増やしても、まだ実感できる満足感は高い。

「例えば、家庭用の数万円程度の高圧洗浄機を導入し、管理人さんにエントランスなど、目立つ頑固な汚れを清掃してもらえば見栄えはだいぶ良くなります。タイルやコンクリートの気になる『白華現象』も酸性洗剤を使ってブラシで擦るとだいぶ落ちます。

 ただ、残念ながらこういうお金がかからない提案は管理会社はしてくれません。『何かあったら』と理由をつけて、清掃業者に依頼してもらった方が中間マージンが期待できますからね」(住宅ジャーナリスト)


管理会社の「利益相反的」な提案に要注意

 以上に見てきたように、マンションには無駄な工事や契約が多い。

住宅ジャーナリストがいう。

「これらの無駄の根源は何といっても管理会社との利益相反関係です。管理会社にとっとては、毎年の契約更新がほぼ約束されているため顧客本位になる必要がなく、業者選定とその費用においては競争原理が働きません。それどころか談合によって、どれも高額な“作られた相見積り”と、業界相場の差額がそっくり管理会社が得る中間マージン(キックバック)となるため、必然的に割高になる。さらにマージン欲しさの無駄な工事も必然的に増えてしまう。

 これらは、管理組合に対する背任行為と言えますが談合の証拠など残らず、キックバックも『紹介料』として合法的に会計処理されます。また、解約されない程度に、理由をつけてサービスはどんどん“間引き”され、『ステルス値上げ』も横行します。

 管理会社が本来、工事や各種契約を仲介する本当の目的は、理事会の面倒を省いてあげる為ではなく、自らが儲ける為です。お金を産まない他の住民対応業務と比べた時の仕事の熱量に、差を感じないでしょうか。工事などの費用が決まる過程を、営利企業に任せてしまえば裏で業者間で談合され、利権化してしまうのは当然なのです。自民党が『国民の為、経済の為』といって必要性の薄い事業を強引に進め、そこに携わる特定企業からパーティー券を買ってもらう構図と似ています。

だから、高額な工事をたくさん勧められるし、大規模修繕では、なぜか積立金残高スレスレの見積が上がってくる。『ここまでに抑えました』などと言ってね。

 管理組合が独自に安い見積を持ってきても、『実績がなくて心配』などといって暗に貶し、管理会社を信頼している理事はその意見が正しいと思い込んでしまう。競争原理を理由を付けて排除し、その差額を中間マージンとして総取りしようとするのです。数字を出せる担当者には成功報酬や出世が見込めるから、彼らも必死なのです」


築古で積立金が安価でも廃墟の実例は存在せず

 結果、営業的側面が強い“管理サービス”が蔓延るマンションでは、無駄な工事が必然的に増えてしまう構図がある。それは周期的な修繕をしない商業ビルや、築50年以上で月1万円程度の積立金しかとらないマンションでも、その範囲の工事だけで問題なく中古市場で流通していることからも明らかだ。

「管理不全のマンション自体、ごく例外的な事例を除き、築古マンションでもほぼ実在しません。こうした言説は、工事のプロモーションと言えなくもない。築20年のマンションに積立金を値上げしないと、『廃墟になる』と指摘するなど、全くのナンセンスです。むしろ、『お金がなく、工事ができない』と嘆いている管理組合は、いままで割高で不必要な工事に浪費しすぎていた、とする報道も多い。

 そもそも、マンションは定期修繕の間隔を空けたところで、原状回復できないトラブルの発生は考えらません。雨漏りは、発生頻度は低く、保険が利いたり~数十万円で一時の辛抱です。そのリスクを軽減するために、数百~数千万円を費やすことが果たして合理的なのか。

 本来は取るに足らない問題を、大事のように騒ぎ立て、不安を煽る。そして住民の知識や関心がないのをいいことに、必要性が低い高額な工事を、『物価高ですから』と説明して提案する。それが管理会社ビジネスの主要なスキーム(詳しくは既報)なのです。当たり前と言ってしまえばそれまでですが、管理組合の立場から見ると損であり、無駄が積もり積もって積立金の値上げに繋がってしまいます」(住宅ジャーナリスト)

 確かに、物価は上昇している。それでも、実は今までの一般的な長期修繕計画が過剰で、不要な中間マージンも乗りすぎていたのだ。これを適正化すれば、積立金の値上げは抑えられるはず。

例えば短すぎる大規模修繕の工事周期を18年程度に伸ばしたり、高額な配管の取り替え工事時期を延期する。そしてできるだけ、業者選定と発注手続きに修繕事業者を関与させないなど、“談合”による中間マージンが発生しにくい工事の発注を心がければ、修繕費用は大きく削減できるはずだ。


毎月のマンションの書類には目を通してみよう

住宅ジャーナリストが続ける。

「多額の工事をしてしまってお金が足りなくなり、積立金の値上げでランニングコストの上昇が大きくなると、中古市場で敬遠されてしまいます。場合によっては数百万、時に1000万円以上、資産価値に響くことがある。マンションは30年で半数以上の住戸が売りに出されると言われていて、実は他人事にしていい軽い問題ではないのです。

 また、役員の負担軽減のため、工事の手続きをしてくれる管理会社に少々費用がかるのは仕方ないと言いますが、中間マージンが見えないということは、“少々”では済まないということ。理事会が無警戒だと足元を見られ、より高額化してしまいます。また、役員が大変だというのも、管理会社の営業提案に付き合わされている部分もあるし、それが元で理事会の意見が割れ、住民同士の無用な対立を生んでしまう場合もある。

 まずは、毎月届くマンションの議事録を読んでみてください。工事提案ばかりで、素人目にも本当に必要な工事なのか、妥当な金額なのかという疑念が沸くケースは多いのではないか。例えば、マンションに関係する小規模な工事や設備更新であれば、1日作業で1人3万円前後の工賃+材料費ですが、正直、この2倍3倍はザラです。

 彼らは『善管注意義務を果たすため』などといって営業攻勢を正当化しますが、なぜか高額工事で積立金が食いつぶされることは、問題視しないご都合主義です。そして『万が一のことがないように』などと住民の不安感を人質のように工事提案して、自社の利益にしようとするのです」

 もちろん必要な工事はすべきだ。ただ問題は工事をすることではなく、管理会社や設計コンサルの中間マージン(キックバック)に、相当なカネを費やしてしまう事だ。業界に必ずしも詳しくない管理組合は、費やす金額の多寡で管理の水準を判定しがちだが、それは全くの誤解で、良い“鴨ネギ”になってしまう。

 修繕事業者があっ旋するマンションの工事は、スーパーで目当ての商品を、市場競争が反映された価格に納得して買うようにはいかない。管理組合が無警戒だと、必要性が不明で、相場も分からない、ほぼ言い値の工事を重ねてしまう事になる。これが、「修繕積立金が足りない」マンションの実像とも言えるし、この構図を放置したままで、積立金を値上げしたところで、底の空いたバケツで水を汲んでいるようなもの。マンション管理について、本当に注意すべきは、経年劣化ではなく、管理会社との利益相反関係と言っていいだろう。」


 このコラムは結構過激な内容の記事が配信されていますが、大規模修繕工事の実施時期を15年毎にすることと、毎回の屋上防水全面やり替えはやめることには賛成です。また給排水管の交換についても、漏水事故が多発しだしてからの対応で問題ないと思います。昨今の建設作業員の不足で、現実的に15年や18年に伸ばさないと、実際工事が実施できない状況が、もうすぐ来るようにも思います。

閲覧数:21回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page