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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

国内初の7階建て「純木造ビル」を徹底解剖、束ね柱で脱炭素の旗手に

更新日:2022年6月28日



 2021年3月24日の日経クロステックの表題の記事を紹介します。


「国内初の「7階建て純木造ビル」が仙台市で完成した。構造用集成材を使わず、製材を束ねて一体化した「束ね柱」を用いたのが最大の特徴だ。木材の「地産地消」を促進する新手法としても注目を集めている。



完成した純木造「高惣木工ビル」。JR仙台駅東口ロータリーの正面という好立地だ。2021年3月4日から実施した見学会には建築関係者、木材関係者などが詰めかけた。ブレースは金属製で、木材で覆っている(写真:池谷 和浩)


 JR仙台駅の東口ロータリー近くで、木造建築の新境地を開拓したビルが2021年2月に竣工した。シェルター(山形市)が設計・施工した純木造、7階建ての「高惣木工ビル」だ。同年3月末に発注者に引き渡し、4月1日に開業する。

 主要な構造が木造のみの建物はこれまで、国内では6階建てが最高で、7階建ては初めて。建物用途は店舗、事務所、住宅。発注者が7階に入居し、1階から6階を店舗・事務所として賃貸する。6階にはシェルター仙台支社が入居する予定だ。

 高惣木工ビルが注目を集める理由は、木造として国内最多層となったからだけではない。構造用集成材を用いなかった点も、脚光を浴びた理由の1つだ。柱や梁(はり)には全国どこでも調達可能な国産針葉樹の製材を利用した。大きな荷重を受け持つ柱については、1辺15cmの角材を最大で9本束ねた「束ね柱(複合圧縮材)」を採用した。



45cm角の束ね柱の概要。15cmの角材を束ね、ドリフトピンと貫通ボルトで一体化する。丸い皿のような部品が貫通ボルト付近の応力伝達効率を高めるスプリットリングだ(資料:シェルター)


 束ね柱とは、複数の角材を束ね、側面からドリフトピンやボルトを打ち込んで一体化した部材を指す。木材同士が接する面にスプリットリングを配して貫通ボルトで一体化することで、応力伝達効率を高めた。15cm角の製材9本を束ねた45cm角の柱や4本を束ねた30cm角の柱などを必要に応じて用いている。

 束ね柱は古くからある木造技術の1つだが、シェルターは今回、改めて部材の曲げ破壊試験を実施し、性能特性を確認した上で適用した。柱同士や柱と梁の接合部には同社が開発した金属製部材「KES金物」を採用。建物全体の耐震性は許容応力度等計算(ルート2)で確認した。

 建築確認を担当したのは宮城県建築住宅センター(仙台市)だ。シェルターは、構造計算適合性判定を省略できる「ルート2確認検査員」による審査を経て確認済み証を取得し、20年5月に工事に着手していた。


国産の製材品の活用を促して脱炭素に貢献

 このプロジェクトでは、束ね柱を荷重支持部とした耐火構造部材を新たに開発し、国土交通大臣認定を取得している。

 束ね柱を合板で覆い、その上から耐火被覆を施すことで、製材の寸法変化が被覆に与える影響を抑えた。この点が従来の木質耐火部材とは異なる点だ。建築基準法に基づき、1階から3階を2時間耐火、4階から7階を1時間耐火とした。45cm角の束ね柱は耐火被覆によって1 辺61.6cmの太さになるため、どっしりとした存在感がある。



据え付け前の束ね柱の断面。2時間耐火仕様で製造された45cm角の柱だ。燃えしろ層となる表面材、石こうボード、合板に覆われた芯持ちの柱9本が並んでいる。端部のスリットに接合部材を取り付ける(写真:シェルター)


 シェルターが様々な技術を駆使して国産製材品の活用に取り組んだ背景には、木材流通が抱える課題を解決したいという思いがある。日本は広大な森林を有するが、原木を構造用集成材に加工できるJAS(日本農林規格)認証工場が限られているため、部材生産時の輸送距離が長くなる傾向にある。同社は今回、東北を中心に製材を調達することにより、一層の環境負荷低減を狙った。

 シェルターの安達広幸常務は「製材品でビルを建設する技術が確立すれば、地域産材の用途拡大につながり、CO2排出量も減らせる」と語る。

 高惣木工ビルの木材調達先は岩手、宮城、福島、青森、栃木の5県。全てJAS規格のスギまたはヒノキで、材積は計約450m3だ。同社は、これらによるCO2の固定効果は計約270tに上ると試算している。

 さらに、伐採と植林のサイクルが持続可能な森林の木材を用いたことを示す「SGEC/PEFCプロジェクトCoC認証」も竣工とともに取得した。



建て方の様子。ムクの束ね柱と接合金物が確認できる。床や壁も含め、多くの耐火被覆を現場施工とした(写真:シェルター)


 建設費は非公開だが、同社は「一般的な空室率を想定しても、賃貸物件として十分採算が取れる」(安達常務)と試算している。補助金申請は予定していない。束ね柱とその耐火被覆技術などは日本木造耐火建築協会(会長:木村一義・シェルター会長)を通じてオープン化する方針だ。

 安達常務は「階高やスパンを抑えられる中小規模のビルなら、木造にも十分な競争力があることを示せた」と普及に期待を寄せる。



建物中央の柱通りを内部から見る。天井は事務所や店舗では一般的な軽量鉄骨下地だ。束ね柱の部分は間接照明で空間を演出した(写真:池谷 和浩)」


 束ね柱や、鉄骨のブレス等、一般のビル建築を経験しているものからすると、従来の鉄骨造に近く、扱いやすい素材だと思います。構造がシンプルなだけに、価格も安くなりそうです。開発販売している「日本木造耐火建築協会」のホームページを見ると、四国内にも会員企業がいるので、中低層の事務所ビル等での普及が進むのかもしれません。更なる大スパン化が実現すれば、倉庫や店舗等、もっと普及がはかれると思います。

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