2022年5月9日の廣田信子さんの表題のブログを紹介します。
「今、大規模修繕工事を控えている管理組合はたいへんです。
東京オリンピックで工事を控えていたところからの一斉のオファーや、コロナ禍で人手の確保が難しい状況で、工事を実施できる施工会社を探すのも簡単ではありません。それから、工事費用も上がっています。ここ1年の建築資材の値上がりは2割以上とも言われ、工事費用も、前回実施時より2割、3割アップは当たり前という状況です。
そういう状況下で、大規模修繕工事や給排水管の一斉交換工事を実施するのは、簡単ではありません。修繕委員の方々には想定外のことですが、先延ばしにしていいことはありませんから、工事の実施のための合意形成をしなければなりません。
しかし、値上げが必要なのが修繕積立金だけではありません。ある大型マンションの方が、管理費会計が不足して、経費削減の努力をしたけど、もうどうしようもなくて、管理費の値上げがようやく可決されたところだといいます。
消費税、人件費の値上がり、電気代等の急速な値上がり等は、管理費会計を圧迫します。
これでもか、これでもか…経費削減の努力の跡をしめして、もうどうしようもないという状況が理解されて、ようやくほぼ反対なしで可決されたといいます。
しかし、ここで、修繕積立金のアップの話はたいへんだ…と。
第1回目の大規模修繕工事は、今考えると、管理会社を信用しての実施となり、高い工事費用だったのに、工事監理の甘さで問題が発生し、いろいろたいへんなことがあった。その時の反省も踏まえて、今度は、長期修繕計画もきちんとつくらなければならない。それでも、前回の記憶から、工事費のチェックには厳しい目を向ける人たちもいる。今回は、そんなに工事費用が下がらないことを納得してもらうのもたいへんだ。
しかも、長期修繕計画に使用する物価係数は、過去の実績から集計したもので、今の工事費用の高騰は反映していないし…。と言われます。
コロナ禍の影響と、ロシアのウクライナ侵攻の価格の上昇…という事態に、マンション管理の現場も大きな影響を受けます。
物価高で家計も厳しさを感じ始める中、管理費、修繕積立金の値上げの合意形成は、簡単ではありません。今後、住宅ローンの変動金利を採用している人には、その返済額の増加があるのでは…という不安も伴います。
それでも、今それを乗り越えなければならない…ということを、区分所有者に理解してももらうということが必要です。
今、社会の大きな変動期に、今の延長線上に30年後を考えるというのは、ちょっと難しいかもしれません。でも、できることなら、明るい未来を共有したいです。
大きな変動期に、できることは、今、自分たちの住まいの環境と、地域のつながり、地球環境を考え、できることをする…ということなのかもしれません。
「今」、「今」が大事で、「地域のつながり」、「地球環境」も考えるというところが唐突のようですが、今後はマンションにとっても大事なことになると思います。そうすることが、今日、自分が生きていることの意味で、それが、日々の生きている喜びにつながっているという高齢者の方と話する機会があり、感銘して、そう思いました。
私もそんな風に生きたいと思いました。なかなかできませんが…。高齢者がどういう心持ちで生きるかということが、マンションにとっても重要です。
いろいろ、心配事は浮かびますが、それを超えたところに意味がある…それを高齢者の方々が示せたら…そんな気がしました。未来を描きながら、「今」「今」を乗り越えること…それが大きな未来につながる。
そう思うことが、マンションの管理組合運営にもつながるのではないか…と思いました。」
最近の物価高は、大規模修繕工事費用や管理費アップにも影響しています。
私の住んでいるマンションの13年前の1回目の大規模修繕工事の費用は、戸当たり80万円でした。私が会社員をしていた2~3年前の大規模修繕工事の相場は戸当たり100万円が、現在では戸当たり120万円程度が普通となっています。新築工事に比べると工事費の高騰が顕著ではありませんが、原油価格の高騰から長尺塩ビシートは価格アップになっており、今後、シール材や塗料も価格アップが見込まれます。また、人件費の上昇から、もう一段階の工事費用のアップも見込まれます。
また、最低賃金のアップから管理員さんの人件費もアップし、管理会社が売上重視から利益率重視に転換したことから、管理費の値上げ交渉も増えてきています。昔のようにリプレースに積極的な管理会社も減ってきているのが現状です。
マンションの高齢化に伴い、入居者も多くが年金暮らしとなり、修繕積立金や管理費の増額は、生活に直結する大きな問題にもなります。食料品を含め多くの物が高騰する中で、マンションの組合運営も難しい局面に立っています。
Comments