今回は外壁タイルの補修方法のお話です。タイルの補修方法についても、主な工法として、タイル張替え工法・エポキシ樹脂注入工法・ピンネット工法・カバー工法の4種類があります。以下、それぞれの特徴を記載します。
タイル張替え工法
タイルの浮き面積が大きい場合や、タイルがひび割れている場合に採用される工法が張替え工法です。タイルをはがして、下地からやり直し、新たにタイルを張り替える方法ですが、コストもかかり、また張り替えたタイルが元のタイルと合っていないと、完成した後、外壁がまだら模様になり、美観も悪くなります。施工方法も、従来の貼り付けモルタル張りから、最近は弾性接着剤張り工法も増えてきています。
エポキシ樹脂注入工法
タイルの目地部分に穴を開け、タイル裏面に接着剤を注入することで、タイルの剥落を防ぐ工法です。張替え工法よりは安価であり、浮き面積が少ない場合に採用される工法です。ただ、この工法はタイル下地にモルタル面がある場合を想定された工法であり、本来はコンクリートとモルタル面の間に接着剤を注入する目的で開発された工法です。最近のマンションは、ほとんどがコンクリート面に直接タイルを張る直貼り工法で施工されており、施工には注意が必要です。
ピンネット工法
ピンネット工法は、タイル表面を新しく透明の樹脂膜で覆い、その樹脂膜をピンで抑えることで、タイルの剥落を防ぐ方法です。ただ、この樹脂膜が紫外線で劣化し変色したり、内部からの水分で、白く変色したりとの事故も多く発生しています。
カバー工法
ピンネット工法に似た工法ですが、透明の樹脂膜の代わりに化粧樹脂シートをタイル表面に全面施工する工法です。この化粧樹脂シートで外壁全面を覆い、タイルの剥落を防ぎます。コストは一番かかりますが、施工後は、石張り調のマンションになり、美観上の資産価値アップにつながります。
まとめ
では、大規模修繕工事時にどの工法をお勧めするか?まずは、出来る限りエポキシ樹脂注入工法をお勧めします。「建築改修工事監理指針」では、タイル浮き面積が0.25㎡以上の場合は、タイル張替えとなっていますが、タイル面が大きくはらんでいなければ、注入による補修も可能です。コニシ株式会社からは直貼りタイル工法専用の注入工法も開発され、販売されています。また、タイルがひび割れていても、すべて張替えの必要はありません。タイルがひび割れているということは、そのタイルがコンクリートと良くくっついているということです。剥落の怖れはありませんから、漏水等の怖れがないのであれば、そのままにしておいても問題ありません。不慣れなコンサルは「建築改修工事監理指針」通りの施工を強要しますが、高いお金をかけて、タイルを張り替えて、マンションの美観を悪くするのは、プロとして堪えられない思いです。
また、築年数の古いマンションや、タイルの浮き面積の多いマンションには、カバー工法をお勧めします。外壁が高級感漂う石張り調に一新され、資産価値の向上にもなります。
工事仕様の決定にあたって、管理組合のために、どれだけ多くの選択肢を与えられるか?それが大規模修繕コンサルタントの技量だと思います。
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