2024年6月30日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。
「住民の高齢化と、建物の老朽化という「二つの老い」が進むマンション。記者サロン「高齢化するマンション 管理組合の悩み」(7月31日まで配信中)では、二つの老いを背景に注目されている「外部管理者方式」について、メリット・デメリットや注意点などを、弁護士の吉田修平さんに聞きました。(山田史比古、石川春菜)
■「専門家」「管理業者」利点比べて選ぶ 取引は、内容開示と総会決議を条件に
吉田さんは、日本相続学会副会長で、国土交通省のマンション管理の検討会でも委員をつとめたことがある。
外部管理者方式(第三者管理方式)は、そのマンションの区分所有者ではなく、外部の専門家や管理業者が、マンションの「管理者」などとなる仕組み。マンション管理の高度化や、住民の高齢化に伴う理事のなり手不足などに対応するため、2016年に導入された。
吉田さんは、「株式会社でいうと、外部の人が、株式会社の社外取締役のように、マンションを構成する『機関』である理事会の理事となる。または、代表取締役のように、理事会の理事長、イコール管理者となって管理していくという方法です。掃除や修繕などの業務を管理業者に委託する『外部委託』とは違います」と解説した。
導入時は、弁護士やマンション管理士など、専門家が管理者となることが想定されていた。ただ、18年の国交省の調査では、区分所有者以外の第三者が管理者になっている管理組合は6・4%。6・0%は管理業者で、専門家は0・4%だった。
吉田さんは、特に専門家が管理者になる事例が広がらない背景を、「新しい仕組みができたことを知らない方も多いでしょう。あるいは、移行の手続きがわからない。候補者の探し方がわからない。こうした要素で、なかなか踏み出せないのが現状ではないでしょうか」と指摘した。
外部管理者方式では、管理組合と、外部の管理者との利害が対立する「利益相反」の懸念がつきまとう。管理者が、関連する会社に修繕工事や清掃などの管理の業務を相場よりも高い値段で発注するなどが代表的だ。
吉田さんは、そうしたことが起きないよう、マンションの管理規約で、取引の相手や内容、料金などを開示して総会で決議を得ることを条件とするなど、区分所有者側がすべきことを説明。「任せっきりではいけません。区分所有者が、外部の人を監視していく必要があります」と訴えた。
外部管理者方式とする場合、専門家か管理業者か、どちらがいいのか。吉田さんは「一長一短ある」。一般的には、専門家は専門的な知識や高い知見があり、管理業者は掃除や修繕など実務の対応が慣れていてはやい一方で、利益相反の懸念もある、などと説明した。
「各マンションの特性にあわせて、候補者の方の人柄も見ながら、決めていくことになります」。誰に頼むのかについて、公益財団法人「マンション管理センター」など第三者的な団体に相談する、公募して面接した上で決めるなど、慎重な検討をすすめていた。
■組合口座の印鑑は別に・任期1年程度 国が指針改定
管理業者が管理者となる既存マンションや、管理業者が管理者となることを前提に分譲される新築マンションが出てきたことを受け、国土交通省は6月7日、外部管理者方式に関する新たなガイドラインを公表した。専門家を想定して策定されていたガイドライン(17年)を改定した。
ガイドラインでは、外部管理者方式でも、「管理の主体は区分所有者から構成される管理組合である」とし、外部管理者の業務執行に対して、区分所有者による「適切な監督」が必要だと強調している。
特に、管理業者が管理者となる場合、その業務を監査するため、「監事」は少なくとも1人は外部の専門家から、加えて区分所有者からも選任することが「望ましい」とした。
管理組合の財産と管理業者の財産は、分けて管理する必要がある。このため、管理組合の財産を管理する預金口座は、一見して管理組合の財産だと明らかな名義とすべきだと指摘。通帳と印鑑をともに管理業者が保管するのではなく、印鑑は監事が保管するように求めている。
大規模修繕は特に多額の費用がかかることから、工事の検討に管理者は関与せず、区分所有者や監事で構成する修繕委員会を設けて検討することを推奨している。
このほか、適性を定期的に審査する観点から管理者の任期は原則1年程度とすること、解任が困難になるのを防ぐために管理規約に管理者として固有名詞を記載しないことなども指摘している。」
管理会社によっても、外部管理者方式の採用に熱心な会社と、利益相反の関係から外部管理者方式は極力採用しない会社に分かれています。管理会社による外部管理者方式を採用するのであれば、公平な第三者としてマンション管理士を併せて顧問等に採用して欲しいと思います。
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