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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

大成建設、前代未聞「ビル工事やり直し」の内幕 高層ビルの工事で虚偽報告と精度不良が発覚

更新日:2023年11月15日



 2023年4月5日の東洋経済オンラインの表題の記事を紹介します。


「「嘘やろう」。ゼネコン関係者が一様に、耳を疑う事件が起きた。



札幌市で建築中の高層ビルで精度不良などが発覚した。組み上がった鉄骨を解体して建て直す異例の事態に(写真:共同)© 東洋経済オンライン


 スーパーゼネコンの大成建設は3月16日、北海道札幌市で建築中の高層複合ビルにおいて、鉄骨の精度不良と発注者への虚偽申告があったことを公表した。発注者であるデベロッパーのNTT都市開発が今年1月に現場を視察した際に、不審な点に気づいた。これを発端に、施工不良と数値の改ざんが発覚。建物の鉄骨部分でおよそ80カ所、コンクリートの床スラブで245カ所の精度不良があった。

 地上26階(高さ約116メートル)、地下2階のこの高層ビルには、ホテルやオフィス、商業施設が入居予定。だが、発注者が定めた品質基準を満たしていないため、今回、地上部分の鉄骨を解体して建て直す。高層ビルは2024年2月に竣工予定だったが、2026年6月末に延期される。事件の責任をとって、取締役・建築総本部長の寺本剛啓氏と常務執行役員・札幌支店長の平島信一氏が3月末に辞任する。

 現場ではおよそ15階まで鉄骨が組まれており、工事全体の22.8%まで進んでいた。「15階まで組み上がっていた鉄骨をぶっ壊して、いちから建て直すなんて、前代未聞だ」と、準大手ゼネコンの幹部は驚きを隠さない。

 大成建設のベテラン社員からも「事件の傷は深い。当社の品質に対する評判も悪くなるだろうし、NTT関連の仕事は当面、ほとんど入ってこなくなるだろう」と嘆きの声が漏れ伝わってくる。

 今回の事件発覚を受けて、大成建設の株価は大幅に下落。17日の終値は4070円と、前日比8.2%減となった。株価チャート上で「窓」を開ける(前日のローソク足と当時のローソク足との間に隙間が生じること)ほどの落ち込みとなった。


2007年「橋崩落」以来の大事件

 「またやらかしたか」。今回の事件について、ある業界関係者はそう漏らす。大成建設は2007年に、ベトナムで建設工事中の橋(カントー橋)が崩落する事件を起こした過去がある(カントー橋は鹿島などとの共同施工)。今回は大成建設にとって、この惨事以来の大事件と言える。

 ゼネコン関係者があきれるほどの異例の事態となった今回の建て直しは、虚偽報告と精度不良という2つの問題について、複数の事情がからんで発生した。経緯を詳しく見ていこう。

 発端は1月5日。NTT都市開発の担当者が現場を確認した際に、「このボルト、おかしくないか」と、計画とは違う仕様の施工箇所(仮設ボルトの穴にずれ)があることを見つけた。

 この指摘を受けて、大成建設は1月10日あたりに、鉄骨の実測値などを書いた報告書を工事監理会社とNTT都市開発に提出した。

 その後、大成建設が鉄骨の全数調査をしたところ、実数値と資料の計測値の食い違い、つまり報告書の虚偽が明らかになった。これは1月19日のことだ。梁の水平度合いの計測値を改ざんするなど、実際とは異なる数値を記載していた。

 大成建設の広報担当者は、「工事課長代理が『数㎜程度のずれならば品質上問題ないだろう』と判断して、鉛筆をなめた数字を出した(虚偽の報告をした)」とする。納期が厳しいので、現場としてはそのまま進めてしまったのだろう。

 実際には、鉄骨については、地上部では722カ所のうち70カ所、地下部では32カ所のうち7カ所が精度不良だった。契約で定めた柱の傾きの限界許容値を平均4㎜、最大で21㎜超過していた。コンクリートの床スラブも570カ所のうち245カ所で、平均で6㎜、最大で14㎜の違いがあった。

 そもそも、大成建設は1月にNTT都市開発の指摘を受けた時点で、この高層ビル工事の自主検査書類を作成していなかった。大成建設では通常、各事業所で決定した品質管理計画書を基に作成した施工計画にのっとり、自主検査を行っている。その自主検査書類を工事監理会社に提出し、監理者が現地の目視をして次の工程に進むという品質プロセスを踏む。

 しかし、現場ではこのプロセスを踏襲していなかった。昨年9月に高層ビルの工事に着工後、「同9月末、そして11月に品質パトロール(社内の定期的なチェック体制)をした際に、この現場では自主検査書類の整備や工事監理会社への報告をしていないことがわかった」(大成建設の広報担当者)。

 現場に注意し、今年2月には再びパトロールを予定していたので、さすがに自主検査書類ができあがる可能性は高かったが、遅きに失した。建築基準法は進行中の工事に適用されるものではないものの、全般を通して工程を急ぐあまりの、ずさんな品質管理だったと言わざるをえない。


なぜ鉄骨の「穴のずれ」に気づいたのか

 気になるのは、NTT都市開発の担当者がどのようにして鉄骨の穴のずれに気づいたのかだ。この担当者は、人間の背よりも高い位置にあるボルトのサイズの違いを見つけた。前出の準大手ゼネコンの幹部は、「わずかな穴のずれなんて、とても気づきにくいものだ。デベロッパーの担当者ならば、普通は気づかない」と話す。

 複数のゼネコン業界の関係者は、「不正を見つけたNTT開発の社員は、ゼネコン出身者ではないか」と見ている。「最近はゼネコンからデベロッパーに転職する人員が多く、デベロッパーの担当者の中にも、われわれと同じぐらいの間違いを見つける力を持っている人もいる」(マリコン大手の幹部)。

 この点について、NTT都市開発の広報担当者は「(不正を見つけた)担当者の詳細について正式なコメントはできない」としながらも、「着工当時からプロジェクトを担当しており、定期的に現場を見ているため、ボルトが他の階と比べて細くなっている違和感に気づけたのだろう」(同)とする。

 今回の事件の背景には、ゼネコンに横たわる構造問題がある。準大手ゼネコンの幹部は次のように語る。「大成建設に限らず、ゼネコンは現場のチェック体制があまくなっている。クオリティーが落ちている」。

 ゼネコンはこれまで、品質をチェックするために少しずつ、少しずつ、時間をかけて慎重に工事を進めていた。いまは労働環境の改善を目的に工事現場でも週休2日制を求められ、しかも民間が発注する建築工事の納期はかなり厳しい。全般に余裕がなく、品質管理の部分がどうしても、かつてに比べておろそかになっているという。


大成の「風通しの悪さ」を指摘する声も

 大成建設の社内における、「風通しの悪さ」を指摘する向きもある。

 今回は、まず工事監理会社への自主検査書類の提出が遅れていた。工事課長代理が慌てて作成した報告書を課長に渡した。その課長が内容を十分に確認せずに、工事監理会社やNTT都市開発に提出してしまった。

 こうした一連の動きの責任をとって役員2人が辞任するが、「(虚偽報告や精度不良について)支社長や建築本部長にとどめ、経営トップにあげていなかったということだろう。大成建設の内部では、個人の意見が言いにくい雰囲気があるのかもしれない」と、前出とは別の業界関係者は指摘する。



建築畑の経験が長い大成建設の相川善郎社長。今回の不正施工を重く受け止めているという。写真は2022年8月取材時のもの(撮影:梅谷秀司)© 東洋経済オンライン


 今回の不正施工について、経営トップも重く受け止めているようだ。エンゲージメント(約束や契約)を大事にする大成建設の相川善郎社長は、支店長などの経営幹部に対して、品質管理プロセスの徹底を強く指示したという。

 大成建設の広報担当者は「この問題が全国に広がることはない。本社・支店の品質管理検査やパトロールを(ほかの現場では)実行している」と話す。同社は今後の対策として、有識者を交えて再発防止策をとりまとめる方針だ。

 今回の建て直しを受けて、工事損失は数百億円にのぼる可能性もある。大成建設は今2023年3月の通期純利益計画を670億円(前期比6.2%減)としているが、大幅減額となることは避けられないだろう。業績への影響だけでなく、顧客からの品質への信頼が損なわれることで、今後の受注に響いてくることも十分に考えられる。

 社会のインフラ構築を担うゼネコンにとって、品質管理のプロセスは経営の根幹に関わるものだ。同じような事件が再発することはあってはならない。大成建設の経営姿勢が問われる。」


 施工管理の未熟さもありますが、虚偽報告はあってはならないことです。特に新築工事の場合は、コンクリートが打設されると、内部の鉄骨や鉄筋が見えなくなるために、不具合があっても解らなくなります。

 大成建設は国立競技場を施工するなど、技術力に優れたゼネコンというイメージだったのですが、やはり工事担当者によって、品質管理にバラつきがあるのでしょうか?品質管理はゼネコンの最も重要視する項目です。今一度基本に立ち返ってもらいたいと思います。


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