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大林組の11階建て「純木造ビル」建設現場、ポイントはユニット化と雨対策

更新日:6 日前



 2022年6月21日の日経クロステックの表題の記事を紹介します。


「地上部の全構造部材に木材を採用し、11階建て高層ビルを建設している大林組。柱と梁(はり)のユニット化や念入りな雨対策を施すことで、順調に工事を進めている。今後の展開も見据え、様々な地域から木材を調達した。

 横浜市内のJR関内駅に程近い繁華街の一角にある建設現場。仮設の養生ネットの奥に、木の構造躯体(くたい)がうっすらと透けて見える。大林組が設計・施工を手掛ける地下1階・地上11階建ての木造高層ビルだ。同社は、建て方の期間中の2021年5月21日、報道陣に現場の内部を公開した。



大林組が建設する木造高層ビルの建設現場。国土交通省の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」の補助金3億円などを利用している。事業費は非公開。2021年5月21日撮影(写真:日経アーキテクチュア)




大林組が建設している木造高層ビルの完成イメージ(資料:大林組)




木造高層ビルの建設現場の1~2階。2021年4月2日撮影(写真:大林組)




木造高層ビルの建設現場の1~2階。2021年5月21日撮影。木造躯体の耐火被覆が進んでいた(写真:日経アーキテクチュア)


 20年3月に着工し、22年3月の竣工を予定するこのビルは、大林組の自社研修施設。道路に面した建物の南側に研修スペース、北側には宿泊室を備える。延べ面積は約3600m2で、最高高さは約44m。地下1階は鉄筋コンクリート(RC)造だが、地上部分は「純木造」だ。

 木材の総使用量は1945m3。そのうち構造体として1675m3、内装材として270m3を使用する。



6階研修スペースの内観イメージ(資料:大林組)




宿泊室の内観イメージ(資料:大林組)


 このビルは、防火地域に立つ耐火建築物だ。大林組が開発した耐火木造部材「オメガウッド(耐火)」を柱と梁に採用した。LVL(単板積層材)の荷重支持部材を石こうボードで被覆し、燃えしろ層を木材で仕上げる。1~7階は2時間耐火、8階以上は1時間耐火として設計した。立地を考慮し、1階にはシェルター(山形市)からの技術供与によって開発した3時間耐火仕様の柱を特別に採用した。

 床や屋根、建物の東西面に設ける耐力壁には、CLT(直交集成板)を採用している。床は、重量を抑えつつ遮音等級Lr-55を実現した。CLTの上に設ける根太床の合板が板バネとして作用することで振動を低減する。



大林組が開発したCLT床の構成(資料:大林組)


職人確保のブレークスルーに

 剛性や施工性を左右する接合部にも工夫を凝らした。具体的には、同社が開発した「剛接合仕口ユニット」と呼ぶ技術を柱梁接合部に適用し、高い剛性を確保している。

 鋼製接合ロッドを柱の仕口に差し込み、接着剤を併用して梁を固定する「GIR(グルードインロッド)工法」と、垂直部材に水平部材を貫通させる貫構造を組み合わせた。GIR工法のユニット2枚で貫構造の超厚物合板を挟み込む。接合部に外部からの力が加わった場合、この3層を貫通するドリフトピンが応力を伝達する。



大林組が開発した「剛接合仕口ユニット」の構成。柱と梁にはLVLを用いる。上下の柱同士をつなぐ際は、内部に通した鉄筋などによって接合する。接合部にエポキシ系の接着剤を注入した後、無収縮モルタルを充填する(資料:大林組の資料に日経アーキテクチュアが一部加筆)


 仕口ユニットは工場で製作して現場で組み立てるため、作業者の技量による施工品質の差が小さい。ユニットの梁同士をつなぐ際は、隣り合う両ユニットの超厚物合板の間にLVLの添板を差し込んで、ドリフトピンを打ち込むだけだ。



剛接合仕口ユニットを建設現場で施工している様子(写真:大林組)




剛接合仕口ユニットなどで構成する木造躯体(写真:日経アーキテクチュア)




柱同士の接合部(写真:日経アーキテクチュア)


 大林組は建て方を21年2月に開始し、6月中に完了する予定だ。当初は余裕をみて1フロア当たり10日間のペースで施工していたが、途中からは7日間のペースに速めている。

 大林組木造・木質化建築プロジェクトチームの伊藤翔担当課長は、「鉄骨を溶接したり、コンクリートを打設したりする必要がなく、高い専門性が要らない。人手不足が課題となるなか、職人の確保に向けてブレークスルーになる」と期待を込める。

 現場を率いる同社の青山嘉宏所長は、「雨対策に気を配っている」と話す。部材が水を吸うと変形するからだ。実際、試験施工で雨にさらされたモックアップを解体後に改めて組み直そうとしたところ、柱が変形して鉄筋を差し込めなくなってしまった。

 木材が湿気を含んだまま石こうボードで被覆してしまえば、内部で腐朽菌が繁殖する恐れもある。

 そこで、はっ水性の高いシリコーン製のシーリング材を柱や梁に塗ったり、仮設の庇(ひさし)を建物の外周部に設けたりするなどの対策を講じている。


あえて海外からも木材を調達

 大林組は、国内外の様々な地域から木材を調達している。LVLには山梨県や長野県で採れたカラマツなどを、CLTには四国地方のスギなどを用いる。伊藤担当課長は、「構造体に使う木材は、加工工場ごとに特性が異なるため、調達先を分けた。内装材の調達先については、鳥取県日南町や岡山県西粟倉村といった地域との関係構築も考えた」と話す。

 構造体を国産材だけで賄うことも可能だったが、ロシアからも調達している。今後のプロジェクトでも海外からの調達を見据えているからだ。



木材の調達先一覧。鳥取県や岡山県、岐阜県東白川村から調達した内装材はFSC認証を取得している。ロシア産のLVLは国内で加工する(資料:大林組の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)


 大林組によると、このビルでは木材の利用によって、温暖化ガス排出量を鉄骨造で計画した場合と比べて約半分に、RC造の場合と比べて約4分の1に抑えられる見込みだ。

 木材が利用者の健康にもたらす効果にも期待している。内装を木質化した研修スペースに、サーカディアンリズム(概日リズム、体内時計)に合わせて調光・調色する照明などを導入し、集中力向上や緊張緩和を図る。完成後は、生体データを基に効果を実証する。健康に関する米国発の認証制度「WELL Building Standard(ウェル ビルディング スタンダード)」(WELL認証)の最上位ランク「プラチナ」の取得も目指す。」


今回の大林組の木造ビルは柱梁等の構造体も木造で作っている本格的な木造ビルディングです。耐火建築であることや、床の遮音等級でL-55を確保するなど、マンションとしても活用可能な性能を持っています。CO2の排出量がRC造に比べて4分の1に抑えられるなど環境にも配慮した構造になっています。あとは耐久性がどれだけあるかでしょうか?雨が多く、湿気の高い日本で、どれだけの耐久性が確保されるのか?今後の研究に期待しています。


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