一般的には12~15年程度で実施されている大規模修繕工事ですが、ライフサイクルコスト(マンション一生涯の維持修繕費用)を削減する目的で、高耐久の材料を使用し、修繕周期を18年~20年程度に延ばすマンションも徐々ではありますが増えてきています。
マンションの寿命を60年だと仮定した場合。①12年周期だと5回、②15年周期だと4回、③20年周期だと3回の大規模修繕工事が必要になってきます。戸当たりの修繕費用を標準仕様で100万円、中期仕様で125万円、長期仕様で150万円だと仮定すると、50戸のマンションのライフサイクルコストはそれぞれ①12年周期の場合で2億5000万、②15年周期の場合で2億5000万、③20年周期で2億2500万円となります。高耐久の材料を使って1.5倍の費用をかけてでも、修繕回数を減らした方が、入居者の修繕積立金の総額は低くなることが解ります。
私の知識と経験から現在考えられる高耐久素材は以下の3つです。
① 外壁塗料の高耐久化
超高層マンション等では既に標準化していますが、外壁の塗料を現在一般的なシリコン系塗料からフッ素系塗料に変更することで、外壁塗料の高耐久化がはかれます。シリコン系塗料の耐用年数が10年~12年なのに対して、フッソ系塗料の耐用年数は15年~18年あります。スカイツリーの外装塗料もフッ素系塗料が使われています。
フッ素系塗料は親水性が高く汚れにも強く、また紫外線劣化にも強いと言われていますが、汚れに強い一面、新たに塗り替える塗料が、フッソ塗料の上には塗り重ねしにくいという一面もあります。採用の際には、次回修繕時の塗り替え方法についても確認しておく必要があります。また最近はシリコンとフッソの中間の耐久性を持ったラジカル系塗料というものも発売されています。
② 屋上防水の高耐久化
10年保証が一般的な屋上防水ですが、シート防水の中には20年保証の商品も出てきています。またアスファルト防水は漏水保障は10年ですが、他の防水材料に比べて高耐久であり一般的には15~20年の耐久性があると言われています。
③ シーリング材の高耐久化
一般的には5~7年程度で劣化が始まり、シーリング材のひび割れや硬化が原因で、雨漏りが発生するおそれの高いシーリング材ですが、最近は高耐久のシーリング材も発売されています。耐用年数が30年という商品もあり、この商品を採用すれば、大規模修繕工事時のシールの打替え回数を減らすことも可能です。
上記の商品以外でも高耐久化商材は増えてきていると思います。修繕工事費の削減ばかりを考えるのではなく、ライフサイクルコストの視点に立って、少々高くても耐久性の高い材料を使う管理組合も増えてくれれば良いなと思います。
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