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大規模修繕工事を実施しないリスク

執筆者の写真: 快適マンションパートナーズ 石田快適マンションパートナーズ 石田


 大規模修繕工事のコンサルタントを行っている管理組合の住人から、大規模修繕を延期したいとの要望がありました。延期の理由は「隣のマンションはうちより1年早いのに大規模修繕工事の検討すらしていない」・「隣の別のマンションは築20年目で大規模修繕工事を実施した」という内容です。

 今コンサルタントをしている物件は築14年目で管理会社主導方式で大規模修繕工事を実施しようとしたものの、オリンピックの関係で建築費が高騰したために、一度延期になり、管理会社主導方式から設計監理方式に切り替えて築17年目で大規模修繕工事を実施しようとしています。

 延期を希望している人達は、再度管理会社主導方式に変更して、築20年を目途に大規模修繕工事を実施すればいいと考えているようです。


 以前のブログで記載しましたが、大規模修繕の実施時期は、一般的には12年~15年程度です。平成29年に国土交通省が調査した「マンションの大規模修繕工事の実態調査」でも、1回目の大規模修繕工事を築15年目まで実施したマンションは全体の約65%になっています。

 大規模修繕工事の実施時期については、まずはマンション購入時に配布された、長期修繕計画に記載された年数に従うべきだと思います。最近のマンションの長期修繕計画では築12年目に大規模修繕工事を設定しているケースがほとんどです。築12年目に大規模修繕工事を実施する理由は、建築基準法12条の「定期報告制度」にて、「マンション等の特殊建築物は竣工、外壁改修等から10年を経てからの最初の調査の際(3年間の猶予措置あり)にタイル面の全面打診調査を行うこと」が義務付けられたことから、どうせ調査で全面足場を組むのであれば、同時に大規模修繕工事を実施しようという趣旨です。


実は多いタイル落下事故

 10年目の外壁全面打診調査が定められた背景としては、多発する建物外壁からのタイル落下事故を防止する目的で定められたものです。ネットで調べてみても


・1989年11月21日:福岡県北九州市では、高層マンションの最上階から落下した外壁タイルが3人を直撃。2人が死亡、1人が重傷(国土交通省)


・2003年3月19日:新潟でマンション5階付近から約60センチ四方のタイルが落下、歩道に落ちて割れていた。現場付近は人通りは多いがけが人はなかった。


・2005年6月14日:東京都中央区で平成17年、雑居ビルの外壁が崩れ落ち、通行人が負傷しました。外壁タイルの一部(重さ計約785キロ)が崩落し、路上にいた女性が重傷のほか、車に乗っていた男性会社員が軽傷を負った。


・2013年6月14日:新潟市内においてテナントビルの2階から外壁等の一部が剥がれ落ち、 約8m下の歩道に落下する事故が発生


・2015年5月28日:大阪市西成区でマンションの3~5階部分のコンクリート外壁数十平方メートルが崩れ、隣の2階建て民家の屋根に落下しました。民家の屋根瓦が割れて路上に落下しましたが、住民や通行人にけがはありませんでした。


・2016年7月7日:大阪府浪速区でタイル落下事故が起き、女性が後頭部を打って軽傷を負った(朝日新聞)


・2016年8月22日:東京都三鷹市の三鷹駅北口にあるビルの外壁からタイルが、台風の強風で剥がれ落ちました。落下から約4時間前にも、縦幅約2m・横幅3mの壁が剥がれ落ち、撤去作業が行われたばかりでした。壁が剥がれ落ちた際、ビル付近を歩いていた男性に破片が直撃してケガをしました。


・2019年5月22日:神奈川県横浜市にある市健康福祉総合センターの外壁タイル2枚がはがれ落ち、施設利用者の車の一部が破損(神奈川新聞)


・2019年9月30日:京都府の舞鶴市役所の外壁も落下(京都新聞)


・2020年7月6日:館林市役所庁舎3階の外壁タイルが落下(上毛新聞)


・2020年7月19日:群馬県前橋市のマンションの外壁が歩道に落下事故が発生。(上毛新聞)


 上記以外にも、事故には至らなかったものの、外壁タイルの落下事故は続発しています。


事故の責任は管理組合にある

 建築基準法では、建築物の所有者、管理者または占有者は、その建築物を常時適法な状態に維持しなければならないと定められています。上記のような事故が発生した場合の責任は、適切な時期に適切な修繕をしなかった管理組合(マンションの組合員全員)の責任になるということを、どうぞ忘れないでください。


 現在コンサルタントを行っているマンションは、今まで一度も外壁タイルの打診検査を行っていません。タイル張りのため、外壁はまだ綺麗だと、大規模修繕工事を延ばしたい気持ちはわかりますが、本当に延期するのであれば、まずは、マンションの全面打診検査の実施をお勧めします。

 ただし、その診断費用や、設計監理方式から、管理会社主導方式に変更すること等を考えれば、今延期するメリットは何一つないと思うのですが・・・

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