• 快適マンションパートナーズ 石田

大迷惑…! マンションの管理費を絶対に支払わない「ヤバい住人」の実態


 2022年7月9日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。



分譲マンションの悩みの種

 分譲マンションに住むうえで、絶対に避けては通れない「管理組合」の問題。なぜならすべての分譲マンションには管理組合があるからです(逆に、賃貸マンションに管理組合はありません)。誰もが「キレイで住みやすいマンションで暮らしたい」と考えているはずですが、そう上手くはいきません。

「たしかにうちの設備はキレイだけれど、管理組合のルールがすごく厳しい」 「管理組合の役員になってしまうと、自分の仕事に加えてこの先数年は余計な労力が増えて大変だ」 「良いマンションだと思うけど、理事会や管理組合の手間がなぁ…」

など筆者が過去に耳にした限りでも、管理組合に関するネガティブな意見は多くあります。それゆえマンションを購入する際にも、管理組合は検討すべきポイントの一つとしてよく挙げられます。

 しかしだからといって、「面倒だから、私一人だけ管理組合に参加しない」というわけにはいきません。マンションの管理は「区分所有者全員で行う」とキッチリ決められているからです。

 今回は、そんな「管理組合には所属しない!」というトリッキーな住人に遭遇してしまった管理組合の理事長のエピソードを紹介しつつ、管理組合というものについて考えていきます。


「管理組合に所属しない」と言い張る住人

「管理組合だとか、理事会だとか、私はそんな面倒なことにはこの先も絶対に関わりません!」

といきなり高らかに宣言されて、坂本健介理事長(67歳・男性、仮名)は面食らってしまいました。

そんな宣言をしたのは、池上澄子さん(52歳・女性、仮名)。もう4年以上も管理費・修繕積立金を滞納していて、マンション内でも個性的なことで有名な人でした。たまたまエントランスですれ違った坂本さんが管理費のことについて口にすると、これ幸いとばかりに所信表明してきたというわけです。

「私は、たまたまこのマンションで部屋を購入しただけです。その部屋に住むことができればそれで十分。誰かに何かをしてもらいたい気持ちはありませんから、私には管理組合なんて必要ないですし、ましてやほかの人のために働くつもりはありません」

と、意気揚々と自分の主張を披露する池上さん。しかし無償で理事長を務めている坂本さんは、この発言に強烈な違和感を覚えました。

「池上さん、いま『管理組合は必要ない』とおっしゃいましたが、あなたのお部屋以外の共用部の設備は組合が管理を担っています。このマンションで暮らしながら、一切共用部を使用しないのは難しいのではないですか?」

坂本さんは、さらに彼女に向かって畳みかけました。

「あなたが毎日お使いになっている水や電気は、共用の設備によって各部屋に届いているものです。こういった共用部の維持管理費用は、管理組合の管理費から捻出されているからこそ、住人の皆さんに支払いをお願いしているんです」

 あくまでも理性的に、マンション管理の実態を話す坂本さん。それに対して、池上さんは予想外の反応を見せました。

「電気や水を使わずに生活するなんて不可能なんだから、そんなのは当然の権利じゃないですか! 管理費や修繕積立金なんて、税金と同じで何に使われているのかもよくわからない。私のメリットにならない無関係なお金は支払うつもりないですから!」

と池上さんは頑固な態度を崩しません。


 しかし坂本さんは、これまでも管理組合に積極的に参加してきたベテランです。理事長になってからも、マンション管理士と相談を重ねながら管理会社への管理委託費の見直しを求めるなど、管理費や修繕積立金の使い道については熟知していました。

「そうおっしゃいますが池上さん、たとえばあなたのお部屋へと続く廊下は、管理費で人を雇って清掃しています。それに一昨年の大規模修繕では、あなたがお使いのベランダのひび割れ補修工事も行いました。そうそう、私たちがいるこのエントランスも、日々の清掃費用はもちろん、修繕の費用も管理費から捻出しているんですよ。つまり水や電気に限らず、あなたも管理組合による管理の恩恵を受けていますし、管理費や修繕積立金を支払うべき管理組合の一員であることは間違いありません」

 しかし坂本さんがこれだけ丁寧に説明し説得を試みても、池上さんは聞く耳を持ちません。

「誰が何と言おうと、絶対に管理費は支払いませんから!」

と言い残して、足早に去ってしまいました。

 頑ななまでに管理組合に所属しようとせず、管理費や修繕積立金を滞納し続ける池上さんに対して、理事会はとうとう訴訟を起こすことになります。


法律によると…

 実際のところ、分譲マンションにおいて「管理組合に所属しない」という池上さんの主張を受け入れることは不可能です。なぜなら、分譲マンションの管理組合というものは、「区分所有法」という法律で定められているものであり、そこに「所属したい」「したくない」という当事者の意志は関係ないからです。


「建物の区分所有等に関する法律(通称:区分所有法)」第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。


 なお一文目の最後に「~を置くことができる」という記述があるために、「管理組合に加入するかどうかは任意である」と考える人もたまに見かけます。ですが法解釈としては、「~できる」はその前段の「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し」という部分にかかるとされています。そのため、管理組合への参加は法律で義務付けられています。しかし管理組合が必要なのは、単に「法律で定められているから」というだけではありません。当然ながら、そこには実質的な理由もあります。


分譲マンションの基本ルール

 坂本さんも指摘している通り、2人が話しているマンションのエントランスは、部屋ではありません。ほかにも廊下や階段などの共用部は、マンションに住む誰しもが利用できるものです。分譲マンションは、それぞれのオーナーが各居室を個別で所有(区分所有)することで成立しています。つまり、ひとつの建物の中に、部屋の数だけオーナーが存在する形です。

 しかし、実際の分譲マンションでは、建物の敷地や外壁、内部の構造部分、全員で使う共用の設備など、専有部以外の部分がたくさんあります。これは、マンション内の区分所有者が全員で共有して使用する部分であり、いわゆる「共用部」となります。なお賃貸マンションの場合、単独のオーナーが建物の全体を所有し、その部屋部分を賃貸に出している形になります。共用部の概念は分譲マンションと同じですが、そもそも共用部も含めてオーナーが単独で建物を所有している、管理組合は存在しません。だからこそ分譲マンションでは、複数の区分所有者による共有形態となる共用部について、「共有している全員でルールを作って、お金も出し合って維持・修繕していきましょう」という取り組みが必要になります。

 さもなければ、エレベーターが壊れたりエントランスのガラスが割れたり、何かトラブルが発生しても、そのままずっと放置されるというケースも十分に考えられます。賃貸マンションのように、「大家さんが直してくれる」なんてことはなく、壊れたまま放っておくと、各人が所有する部屋の価値自体も損ねかねません。

 実際に、自分の所有する部屋を売りに出した時、共用部の管理が至らないことで査定額が下がったり、せっかく内覧に来た購入希望者にがっかりされたり、というケースもよく見かけます。


実はとても合理的な管理組合

 しかしその一方で、「管理組合なんて面倒なことに参加せず、一人でひっそり暮らしていきたい」という佐藤さんの気持ちも、人情としてわからないではありません。

 とはいえ、分譲マンションの区分所有者が管理組合に加入しないという選択肢が存在しないことは、先ほど説明した通りです。そもそも加入どころか、管理組合を組織しないという選択肢すらも存在せず、当然のものとして管理組合が成立します。また共用部の清掃や維持管理をはじめ、必要な物品の購入、建物や設備に不具合が生じたときの工事の発注など、管理組合が実際に行う管理業務には、当然費用が発生します。費用が発生するならば、誰かが負担しなければなりません。そのために、「共有している部分なのだから、区分所有者全員で平等に管理費を負担しよう」という考えの下、管理費を支払っているわけです。

 さらにマンションでは十数年に一度、経年劣化した建物や施設を修繕する「大規模修繕」が行われます。その際に外壁や屋上などの共用部を大規模修繕する費用が必要になるため、普段から修繕積立金も別個の会計として毎月各区分所有者から徴収されます。ここでもし、「管理組合に参加するかどうかは、各区分所有者の判断にお任せしますよ」というルールになっていたとしたらどうなるか、考えてみましょう。おそらく、わざわざ金銭と労力がかかる管理組合への加入を自分の意志で選択する区分所有者は、ほとんどいないのではないでしょうか。そうなると、自分では手間もお金も負担せずに恩恵だけを受ける、いわゆる「フリーライダー」の区分所有者が発生してしまいます。管理組合に加入した一部の住人が費用を払って清掃されたキレイな廊下を、まったくコストを負担せずに利用できるわけです。

 かといって、「106号室と203号室の人は組合のメンバーじゃないから、その部屋の前の廊下だけは清掃しなくても良い」とか、「エントランスからうちの部屋まで清掃してもらって、他の人にはそこを通らせない」といった話も現実的ではありません。

 そんな不平等やおかしな事態が起こらないように、区分所有する全員で管理組合を組織する必要があると法律でも決められているのです。そして、区分所有者全員で協議して、管理のルールとして管理規約や使用細則を定め、公平性に重きを置いた管理が求められます。

 以上のような理屈を考えると、管理組合の存在や参加が区分所有者の意志と無関係なのは、やはり合理的だと言えます。


ついに、訴訟に発展…

 坂本さんら理事会のメンバーは、以上のような内容を何度も何度も懇切丁寧に池上さんに説明し、滞納している管理費と修繕積立金の支払いを求めました。しかし彼女は

「何度も言わせないでください。私は管理組合には関わりませんし、管理費も支払いません!」

と返すばかりで、頑なな態度を貫き通します。とうとう滞納が継続して5年に達したころ、ついに池上さんは管理組合から訴訟を提起されてしまいました。裁判となるとかなり重い仕打ちのようにも見えますが、管理組合の不利益になる行為については、訴訟などの対応を行えることが区分所有法で明確に定められています。管理費の滞納も「不利益になる行為」の一つです。

 理事長の坂本さんとしては、個人的には「訴訟のような大事にまではしたくない」という気持ちだったのですが、管理組合全体のことを思うと一人だけ管理費を支払わない池上さんをこのままにはしておけず、また組合内部から彼女に対する反発も強まっていたため、ついに訴訟へと踏み切りました。池上さんの区分所有権を強制的に競売にかけてマンションの部屋を売却し、その売上金から滞納されていた管理費などを回収するための訴えです。

 法廷でも同様の主張を繰り返した池上さんは、あえなく敗訴してしまいます。その結果、せっかく購入した部屋を強制的に競売にかけられてしまい、マンションから出ていかざるを得なくなってしまいました。


態度が硬化してしまった原因

 聞くところによると、池上さんは一昔前まで目立った滞納もなく、総会にも出席するなど、管理組合についてもある程度理解があったようです。しかし、数年前に、部屋の玄関ドアを塗り替えようとして事件が起こったのがきっかけで、態度が頑なになってしまったといいます。

「自分の家なんだから、ドアくらい好きな色にしたっていいじゃない」と、池上さんが茶色いドアを両面ともピンクに塗装して、大問題になった事件があったそうです。

 残念ながら、玄関ドアは共用部であると管理規約に定められています。ややこしいことに、ドアの内側は専有部なので、好きな色に塗り替えることができるのですが、廊下と接している外側は共用部です。共用部は区分所有者全員で共有しているものであるため、1人の好みで勝手に色を変更してしまうのは、規約違反になります。

 管理組合と池上さんの問答の末、彼女がしぶしぶ個人で実費を負担して茶色に塗り直して現状復帰し、この塗装トラブルは解決されました。しかしこの一件から、池上さんは管理組合への反感を抱き始めて、やがて管理費の滞納へとつながってしまったのかもしれません。


「自分一人で考えなくても良い」

 以上のような事例を紹介すると、管理組合の負担の大きさに気落ちされるかもしれません。特に賃貸物件から出て、初めて分譲マンションを買う人、つまりこれまで管理組合になじみがない人にとっては、理事会や総会なども含めてとても難しいものに感じられるでしょう。

 そのうえ、「マンションを購入したら、意思に関係なく所属するしかない」と聞けばなおさらです。

しかし、考えようによっては、大きなメリットもあります。戸建てを購入した場合、家の管理は自分だけで差配しなくてはいけません。その点において、管理組合は「自分一人でマンションの維持・管理について考えなくても良い」という利点があるとも言えるでしょう。ただし、あくまでも「自分一人で考えなくても良い」だけであって、「自分は考えなくて良い」わけではありません。管理組合の一員として、しっかりと維持・管理に携わるべきでしょう。そのために、毎年の総会にはしっかり参加し、時には理事になって理事会にコミットし、管理組合の業務を執行するということも必要になるわけです。

逆に、「難しいことを考えず、生活空間に満足できればそれで良い」「部屋を所有せずに、気に入らなくなったらすぐ出ていける方が良い」と考えるならば、賃貸マンションに住むこともひとつの正解です。

 また、今回紹介した池上さんのケースは、かなり振り切った事例です。管理規約や使用細則をよく把握し、管理組合の一員として、共同生活のルールに即した暮らしを送るならば、彼女のように不本意な形でマンションを去る事態はほぼないであろうことを最後に補足しておきます。」


 ここまで極端な入居者は聞いたことがありませんが、入居者の中には、賃貸マンションに住んでいるのと何ら変らない意識を持った方は多くいます。管理会社を大家さんと勘違いして、何かあれば管理会社に言えば、すべて解決してくれると思っている人達です。管理会社には決定権はなく、理事会や総会で決定されたことを忠実に実行するだけです。自分達の生活は自分達で責任を持って管理運営していく。まずは、そのあたりから意識改革し、勉強していく必要があると思います。

閲覧数:9回0件のコメント