冬の朝の室温を調査したデータによると、最も暖かいのは北海道の16.3℃、最も寒いのは長野県の8.8℃になっています。四国では愛媛県が12℃~16℃の範囲ですが、他の香川・徳島・高知県は10℃~12℃のエリアです。私が住んでいるマンションでは、冬の朝一の気温は大体16℃で、今日は寒いなと思った朝は14℃程度です。戸建て住宅はマンションより寒い傾向にあり、特に古い木造戸建ては断熱材がない無断熱の家も多く、またスキマ風も多いことから、寒くなっているのだと思います。
WHOの報告書でも、冬の寒さは健康に影響を及ぼすことが指摘されています。室温の推奨は21℃で、最低でも18℃以上とされています。16℃だと呼吸器疾患に影響があり、12℃で血圧上昇や心臓血管疾患リスク、5℃以下では低体温症を招くハイリスクだとされています。日本で一番暖かい札幌でも呼吸器疾患に影響がある室温であり、多くの日本の住宅は12℃~16℃の血圧上昇や心臓血管疾患リスクがある状況であることがわかります。
室温が約2℃違うだけで、10年後の発病リスクに大きな差が
高知県の梼原町では「住環境による発病リスク」の調査を、長く続けています。その結果、高血圧、脳卒中を発病した人たちが暮らしていた家は、そうでない人の家に比べて、就寝時間帯の平均室温が低いことがわかりました。その差は1~2℃ですが、このわずかな室温の差が、10年後の家族の健康を左右しているという結果になっています。また、深夜0時の寝室の室温が18℃を下回る住宅では、そうでない住宅に比べて、10年後に高血圧を発病するリスクが7倍近くまで高まることもわかっています。
断熱改修により、起床時の平均室温が8℃から20℃に上昇した住宅では、起床時の最高血圧が2週間で12mmHgも下がった事例もあります。
寒いとき、体は縮こまったり、こわばったりします。愛媛県新居浜市の調査では、1~2月の脱衣所の平均室温が1.7℃高くなると、住民の活動量には一日1400歩に相当する差が生じることがわかりました。もちろん暖かい家の方が、家の中を活発に動き回っています。一日の歩数としては8000歩が推奨されていますが、家の中が暖かいと、その2割近くが、部屋の中の移動で使われていることになります。
このたった2℃の差が、健康に大きな差を与えています。この調査対象となった住宅のうち、活発に動けていたグループは、動けていなかったグループに比べて、認知症や運動器症候群(ロコモ)の患者が1割程度少ないこともわかりました。
大阪市で寒い住宅(真冬の脱衣所の平均室温12.4℃)と暖かい住宅(真冬の脱衣所の平均室温14.6℃)に暮らす80人を調査したところ。半数が要介護状態となる年齢は、寒い住宅で76歳、暖かい住宅で80歳でした。たった2℃暖かい家に暮らすだけで、健康寿命が4年も延びました。
ヒートショックを防ぐ
暖かい所から寒い所へ行くと、血管が収縮し、血圧が上昇するヒートショックが発生します。最悪の場合には、脳出血や心筋梗塞を起こします。特に注意が必要なのが冬場の寒い脱衣所です。暖かいリビングから寒い脱衣所に移動し、裸になった時に、脳出血や心筋梗塞で亡くなる事例も多くあります。
ヒートショックは寒い地域で起きやすいと思われがちですが、心臓病・脳血管疾患・呼吸器疾患の三疾患死亡率と地域の関係をみて見ると、心疾患では1位四国・2位東海・3位中国。脳血管疾患1位中国・2位四国・3位東海。呼吸器疾患1位九州、沖縄・2位四国・3位東海と、暖かい地域の方が死亡率が高くなっています。ちなみに最下位の10位はすべて北海道でした。
家の断熱性を高めて、家じゅうすべてを暖かくすることは、健康にとって、とても大切なことが、この結果からもわかります。
一般的にマンションは、一戸建ての住宅に比べて、窓も少なく、また気密性も高いため、冬場は暖かい家になります。また、窓部分に内付け樹脂サッシ等を設置すれば、より暖かく暮らすことも可能です。健康寿命を延ばすためにも、高断熱リフォームを実施して、暖かい家に住むことをお勧めします。
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