2021年5月18日のマンションコミュニティ研究会 廣田信子さんの表題のブログを紹介します。
「規模が小さく、高齢化、賃貸化等で理事のなり手がいないマンションでの管理者管理について考えてみたいと思います。
標準管理規約の別添1「外部専門家の活用パターン」の中にある
③外部管理者総会監督型がそれに当たります。
その「考え方」は、
・外部専門家を区分所有法上の管理者として選任し、理事会は設けないパターン。
・区分所有者からは監事を選任して監督するとともに、各区分所有者で構成する総会が監視するものであり、総会の役割は重要。
・さらに、監査法人等の外部監査を義務付ける。
とあります。
そして、「想定されるケース(マンションの特性)」には、
・高い専門性と透明性、区分所有者の利益の保護や最大化の二―ズが高いが、規模が小さいマンション。
・理事長のなり手がいない例外的なケース。 とあります。
こういったマンションでの「管理者管理」のニーズは高いのですが、ここで示されたような形での「管理者管理」は、なかなか進みません。
進まない理由の第一はお金の問題です。ここでは、管理者が事業者(管理会社等)に仕事を発注するという仕組み上、「管理者」は、管理会社でも、組会員でもない第三者の外部専門家を想定しています。
そして、監査法人等の外部監査を入れることを義務としています。 ということは、「管理者たる外部専門家」「外部の監査法人」に対して、その対価を支払うことを前提としているのです。
その役割の重要性からして、その対価は決して安いはずはありません。 小規模なマンションで、そのような費用を捻出することは実質上不可能に近いのです。
二つ目の理由は、管理者になる専門家が、なかなかいないということです。 一番に思い浮かぶ専門家は「マンション管理士」だと思います。しかし、「マンション管理士」が管理者になる場合は、日管連が、その力量やお金の取り扱いや万が一の補償に関して、高いハードルをつくっていることもあって、積極的に管理者管理を受ける(受けられる)方は決して多くはないのです。
もちろん、ニーズが高いマンションに、それだけの資金力がないということも大きいと思いますが…。
管理者になっているマンション管理士の方は、たいてい、長くその管理組合の顧問をしていて、安定した管理組合運営ができていて信頼関係が築けている。 そこで、高齢化によって理事会運営が難しくなったのをきっかけに、管理者就任を依頼され、長年の関係から、引き受けざるを得ないと覚悟を決めた…というようなケースの話をよく聞きます。費用も、顧問のときと大きく変わらない金額で、引き受けているようです。
そこに監査法人等の外部監査を入れているというケースは、耳にしたことはありません。
根本にあるのは、管理組合との信頼関係です。 だとしたら、長年、信頼関係を築けてきた管理会社に、管理者を委任するということも、ありだと思うのです。
管理会社にとって、理事会運営のサポートは、かなり時間をとる仕事です。 それがなくなることによるコストダウンで、管理者になっても、これまでの委託費と大きく違わない費用で受けることが可能だと聞きました。
それじゃあ、利益相反じゃないか、管理会社にいいようにやられてしまう…という心配に対しては、
理事会方式で、自分たちで運営している形をとっていても、実質的には、理事会は管理会社のいいなり、管理会社の都合がいいように議案が作られた… という話が後を絶たない現状を思うと、
自分たちで運営していく力がない管理組合で、形だけの理事会方式を続けるぐらいなら、ちゃんと管理者として管理会社に責任を持ってもらう方がいいのでは、とも思うのです。
その場合は、監事の役割が大きくなります。区分所有者の中に、その役割を担える人がいるかどうかは大きいと思います。
で、私は、監事のひとりをマンション管理士に依頼する、という形が、一番現実的なのではないかと思うのです。 マンションが適切に管理されているかを見るには、会計の知識だけでなくマンション管理のソフト、ハード両面の知識と経験が必要です。 区分所有者の監事だけでは心細いと思いますから、マンション管理士の方に期待できる分野だと思います。
最初は管理会社との信頼関係で運営できていても、人の入れ替わりと共に、緊張感が緩んでいくことは絶対にあります。外部の専門家に監事を委任することは、それを抑止する効果もありますし、あまりひどい状況があったら、組合員にそれを報告し、管理者を交代する…ということも可能になりますから。
ただ、話を聞いていると、マンション管理士にしても、管理会社にしても、管理者を引き受けるマンションには、一定の傾向があると思います。
・賃貸化が進んでいて居住する組合員は少数だが、 不動産物件としての価値の維持に組合員の関心がある
・一定の維持管理がされてきていて、管理不全になっていない
・比較的立地がよく、市場価値が維持されている
総会も理事会も開かれず、組合員の関心もなく、適切に修繕されていない、お金もない…といったすでに管理不全状態であるマンションの管理者を引き受ける外部専門家はいないと思った方がいいでしょう。
もし、いたとしたら…それは何か他に目的があるのではと疑った方がいいと思います。」
今回の廣田さんの提案は、実際に管理者管理を行うとすれば、一番現実的な対応方法だと思います。マンション管理会社の中には、新たなビジネスとして管理者管理を今後積極的にやっていこうと思っているところもあります。さらに、第三者としてマンション管理士を顧問として活用することで、質の高いマンション管理が行えると思います。
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