2024年6月10日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。
「「管理組合の役員にならなくてよいですよ」。そう言われると、ホッとする分譲マンションの住人は多いはずだ。共働きの人や高齢者は特に、毎月のように開かれる理事会への出席が重荷。役員のなり手不足が、深刻な課題になっている。
マンションを買った人は自動的に管理組合の一員となり、自分たちで建物を適切に保つ務めを負う。「自治」の活動のかなめが理事会。建物の維持修繕などを委託する管理会社とのやりとりを担う。それが大変なので、理事会をなくして理事長ら役員が担ってきた立場も住人以外にお任せする。外部管理者(第三者管理)方式と呼ばれる新たな流れが広がっており、管理会社が兼ねることが多い。
「負担は少なく、ココロはかるく」。三井不動産グループはこう掲げ、管理はプロに任せて休日を満喫できる、とうたう。首都圏の新築を中心に3月末時点で87物件で導入した。大和ハウスグループは、役員が不足しやすい小規模な既存物件中心。費用は50戸のマンションで月約5万円。管理を受託する組合の15%で需要があるとみる。今は約80物件で、2026年度には600へ増える見通しだ。
こうした動きに、最近のマンション管理を巡る悩みが表れている。高額な新築物件は、忙しい共働き家庭、賃貸にまわす投資家、外国人など購入者が多様で、組合の運営が難しい。タワーマンションなど大型物件だと、組合の扱うお金は億円単位で、まるで中小企業の経営だ。
既存物件は古い建物ほど住人も高齢で、「二つの老い」に直面する。国土交通省によると、築40年以上の物件は現在約130万戸で、10年後には倍増する。組合と理事会がしっかり機能しないと、建物の劣化を防ぐ手立てをうてない。
新築も既存物件も悩みはそれぞれだが、外部管理者方式だと対応しやすい。そんな企業側の思いから、ルール未整備で実態が先行したのが現状だと思う。
問題点も多く、賛否は割れている。導入時の手順や注意事項の指針を国交省が今月まとめたが、原案のパブリックコメントには600件もの意見が寄せられた。
指針が整ったことで今後さらに広がりそうだ。管理組合が注意することは何か。
この方式だと、管理会社は建物の保全を委託される業者という今までの顔と、それを任せる住人代表という新たな顔と二つの立場を持つ。利益相反と呼ばれる問題が生じる。たとえば修繕工事の際、住人側は費用を抑えたく、業者側は収益を確保したい。規律をどう保つのか。
管理業界に詳しいコンサルタント会社「シーアイピー」の須藤桂一社長は「利益相反の構図は問題が起きやすく、この方式はトラブルの増加を招く」と話す。
導入する際は利点と欠点を組合内でよく話しあいたい。理事会をなくすと資産を自ら守る意識が薄れ、何事も管理会社任せにならないか。グループ企業への割高な工事発注などに気づきにくくなる。
会社側がどんなしくみで導入するかの検証も欠かせない。管理会社に対するチェック役「監事」の選び方、外部管理者から理事会の方式に戻るすべの確保など、具体的な点検事項が指針にある。
管理会社の実績や取り組みの情報開示も求めたい。組合側の比較検討の材料になる。規律の保ち方など好事例を共有すれば、業界の水準底上げになる。
国民の1割超がくらす場で、住人共有の資産といえるマンション。それを適切に保つしくみが不可欠だが、新たな外部管理者が、かえって住人の不満や災いのタネとなり、管理の質を落とさないか。管理会社の動きを注意深く見つめたい。」
単に管理が楽だから、役員にならなくてもいいからと、外部管理者方式を採用すると、この記事にあるように、管理会社の好きなように、管理費や修繕積立金が使われかねません。国交省のガイドラインにはマンション管理士等の専門家を顧問として、管理会社へのお目付け役とするように勧められています。外部管理方式を採用する場合は、マンション管理士の顧問就任も併せて検討することをお勧めします。
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