今回のお話は、大規模修繕工事に先立って行われる建物診断についてです。建物診断は必ず実施しなければならない業務ではありませんが、大規模修繕の時期を決定するための組合員説得材料として、簡易診断でも良いので、実施することをお勧めします。
多くの組合員の中には多額の費用がかかる大規模修繕工事を今、実施する必要があるのか?疑問を持っている方もいらっしゃいます。建物診断を実施し、診断報告書を作成して、劣化状況のわかる写真を添付することで、大規模修繕工事の必要性が理解されます。
現地診断報告会の実施
特にお勧めしたいのは、実際に建物を見ながら開催する、診断報告会の実施です。建物の劣化状況を、実際の建物を見ながら確認し、このまま放っておけばどうなるのかを、専門家から説明してもらうことで、より理解が深まり、大規模修繕工事実施の必要性が理解されます。
次に、建物診断の調査方法について説明します。一口に建物診断と言っても、調査方法・内容よっていくつかのグレードがあります。
簡易診断
一番簡易なのが、診断機械を用いない目視を主とした簡易診断です。目で見てわかる、コンクリートのひび割れや、塗装の浮き、サビ汁、防水層の剥がれ等をデジカメで撮影し報告書を作成します。可能であれば、各階住戸数の一割から二割程度の入居者のバルコニーに立ち入り、バルコニー内部の劣化状況とタイルの浮き確認の打診検査を行います。
全面打診検査
もう少し詳しく調べたい場合は、チェアゴンドラによる打診検査を実施します。チェアゴンドラは窓ふきの清掃で使うような屋上から人がロープで降りながら、壁面の浮き調査を行う方法です。大規模修繕工事を実施する場合、見積もり時には、タイルの補修数量がわかっておらず、普通は全体の5パーセント程度の浮きが発生していると想定して施工会社に発注します。その後工事が始まり、足場が完成してから、外壁のタイル面を全面打診調査し、数量が想定よりも多い場合には、追加金額が必要になります。(逆に補修数量が少ない場合には減額工事になります。)追加工事費が予備費の範囲で収まればいいのですが、収まらない場合は、再度臨時総会を開き、決議する必要があります。そのような事態を避けたい場合には、事前にタイル浮き数量を確定するためにチェアゴンドラによる調査を実施します。
打診検査の代わりに赤外線によるタイル浮き調査を実施する管理組合もありますが、赤外線による調査はタイル打診調査よりも信頼性が低く、お勧めしません。
その他検査
その他、健全部タイルの引っ張り試験や、塗装の引っ張り試験、コア抜きによるコンクリート中性化試験やコンクリート圧縮強度試験等を実施するケースもありますが、これらの試験で不合格になることは、ほとんどなく、築年数の浅い物件では実施するだけお金の無駄だと個人的には思います。
快適マンションパートナーズでは、大規模修繕コンサル物件において、上記の簡易診断を標準メニューとして実施します。
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