
2023年5月31日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。
「灰色の町工場や倉庫が多い大阪府東大阪市にこの春、カラフルな倉庫が完成しました。青色と黄色の外観、倉庫の中はピンクがアクセントになっています。工事を担当したのは三和建設(本社・大阪市淀川区)。創業70年あまりのゼネコンにとって、この建設には大きな意味がありました。
建設現場の総責任者である現場所長をつとめたのは中嶋佳子さん(46)。三和建設で初めて誕生した、女性所長だったのです。
中嶋さんの父は、不動産会社の社員だった。家に持ち帰った家の間取り図を見ながら、中嶋さんは、想像することが好きだった。
〈ここは私の部屋、ここはお父さんの部屋……〉
商業高校に進む。卒業後、ものづくりをしたくて建築資材の町工場に入るも、倒産してしまった。
大手建材会社に入って実務を重ね、「1級建築施工管理技士」をとった。建物の建設計画づくりや作業員の安全管理など、建設現場のすべてを仕切ることができる国家資格である。
そして2018年夏、中嶋さんは41歳で、三和建設に転職した。自分の手で建物をつくりたいと考えた。現場で技能を磨き、昨年、同社初の女性所長として、今回のカラフルな倉庫づくりを任された。
建設の現場はずっと「男の世界」
三和建設は1947年、木造建築の会社として誕生した。ゼネコン、つまり総合建設業として発展し、現在、年商100億円、社員160人になっている。
この10年ほど力を入れてきたのは、女性社員を増やし、活躍してもらうこと。建設の現場はずっと「男の世界」だったからだ。
作業所に女性用更衣室やトイレを設置し、本社敷地内に保育園をつくった。出産・子育ての支援金、子どものけがや病気の時に取れる看護休暇制度……。20を超える制度をつくった。
その結果、2023年1月時点の女性社員比率は30%に。10年で2倍になった。
だが、女性を増やすだけでは、男社会の建設現場を変えることは難しい。なぜなら建設の現場に、「女が仕切れるわけがない」という偏見があったからだ。
その偏見を破壊する方法が、女性所長の先例をつくる、いわゆるロールモデルをつくることだった。
どんなに残業があっても、率先して早く帰った
所長になった中嶋さんは見本を見せた。それは、どんなに残業があっても夜8時には終わらせること。もちろん工事の進み具合をしっかり管理したうえで、率先して、早く帰った。
「お疲れ、お先に」
現場は、午前0時すぎまでの残業は当たり前。仕事のきつさが「男社会」の偏見をつくった原因のひとつなのだ、と感じていた。
さらに、中嶋さんは、リモートでできると考えた仕事は、自宅でやった。現場でなくてもできる仕事を増やすことは、どんな環境の人の活躍にもつながる。
「建設現場で女性が活躍するのは難しい、と思い込むのは間違い。女性も必ず活躍できる。『お客様の夢をかなえるのに性別は関係ない』という気構えでやってきました」
中嶋さんの言葉は、建設業にたずさわる全ての女性へのエールでもある。
三和建設の広報担当者は期待を込めてこう話す。「中嶋が成し遂げてくれたことで、弊社で女性所長が増えていくはずです」
今回の倉庫は、衣食住の総合メーカーからの依頼だった。施工面積は825平方メートル。工事期間は8・5カ月。もとは田んぼだった土地なので、地盤を徹底的に強くした。カラフルさは、依頼主と中嶋さんが打ち合わせを重ね、倉庫らしくないものにした結果である。」
建設小町やドボジョという言葉があるように、建設業界でも女性の現場監督が増えてきました。会社員時代にも、社内に何人か女性の所長がいました。特に、大規模修繕工事のように、住民と触れ合うきっかけの多い工事には、男性の所長よりも女性の所長のほうが、入居者からの評判がいいようです。
工事中の注意看板にも、子供が好きなイラストを入れたり、入居者からのクレームに対しても、対応が柔らかだったり、特に大規模修繕工事の現場には、もっと女性が積極的に係っていくべきだと思います。
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